不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺

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子供を産みました。離婚を決意しました。

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生まれた子供は双子でした。
男の子と女の子の双子です。
娘はリオン、息子はルイスと名付けました。
どこからどう見ても夫の子です。
銀の髪と紫の瞳を持つのは夫の家の他、一家しかいないのですから。
そのもう一家は女性が当主でして、その特徴を持つ男性といえば前当主の方御年60歳と次期当主8歳しかおられません。
ちなみにその前当主の方とは私は面識はありません。
もう引退して領地で暮らしておいでですからね。
夫の両親も色が違います。お義父様は銀髪ですが瞳は緑色でお義母様は栗色の髪に紫の瞳をお持ちです。
お二人は従兄妹だそうですが、上手いこと色が引き継がれたものだと思います。
夫は希少性のあるその見た目をことのほか自慢していましたからね。
ちなみに夫に兄弟はいません。いればあんな法律知識があやふやな人は後継ぎから降ろされたと思います。
ちなみに私は淡い栗色の髪と薄い緑の瞳です。
子供たちに全く引き継がれませんでした。
顔立ちは私似ですけど。多分。

この見た目だけでも私が不貞をしていない証拠にはなるんですが……。
正直夫に告げるのをためらってしまいます。
あんな一方的に追い出した人間と、子供が生まれたからって上手く暮らしていけると思いますか?
ちょっと難しいと思います。
しかもあの野郎、失礼、夫は酔っぱらって名前を呼んでいた浮気相手をすでに家に連れ込んで妻のように扱っていると聞きました。
人に不貞とか言っといてその態度はなんなんでしょうか。まだ離婚は成立していないんですけど。
一人の大人としても貴族としても子供たちの見本になってほしい人間ではありません。
私があの家に戻ったとして愛人と争いを繰り広げることになるでしょう。
産後の疲れた体でそんなことに体力を使ったら倒れてしまうかもしれません。
それに、あの家の使用人を疑っているわけではありませんが、身の安全を第一に考えたらあの家に戻るのはリスクが高すぎます。
産後の肥立ちが悪くて――、なんてことにならないとはいえませんので。

そしてもう一つ、私が子供たちを夫に見せるのをためらっている理由が……。
兄に抱っこされ機嫌良さそうに眠っている子供、娘の方ですがその娘の周りにひらひらと蝶が飛んでいます。
自分の腕の中の息子を見ると窓辺に止まっている鳥たちの何重奏かわからない囀りを子守歌にすやすやと眠っています。
この子たちが生まれた日に、我が家に昔からあるリンゴの木が実を付けました。
一つや二つではなくそれはもうたわわに実っておりました。
時期じゃないよね!?と庭師は混乱し、厨房の皆はお祝いにリンゴでパイを作ろうと張り切っていました。
嬉しかったです、リンゴのパイ大好きですから。
それは置いておいて。
あのリンゴの木、私と兄が子供の頃にお願いして食べたリンゴの種を埋めてもらったものです。
芽は出て木に育ったものの実が付いたことは一度もありませんでした。
そんなリンゴの木が一斉に実をつけたのです。
いえ、その前日までなんの兆候もなかったリンゴの木にいきなり食べれる大きさの実がいくつもできたのです。
どう考えても普通ではありません。
まさか、と思って屋敷の者も兄も何も言いませんが、これはあれでしょうか。

「お兄様、この子たちが産まれてから思ってたんですが。
この子たち、精霊のいとし子ではないでしょうか」

とうとう言及してしまった私に兄が困ったような顔で頷きます。

「やっぱり、そうとしか思えないよな」

精霊のいとし子といえば『泣けば嵐を呼び、笑えば実りをもたらす』なんて言われる存在です。
彼らを精霊が見守っていて、その憂いを晴らすために事象を起こすと伝えられているのです。

それならやっぱり――……。

「お兄様、私、離婚された方がいいんじゃないかしら」

そう結論付けた私に、兄はなんとも言えない顔をしました。


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