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番外編など
子供たちの好むもの。使命感とわがままと。 <料理長視点>
しおりを挟むツヤを増したリンゴが生る木の前で感謝の祈りを捧げます。
いつしか生まれた習慣はすっかり自身に定着しました。
リオン様とルイス様が生まれたときに実らせたリンゴの木は『祝福のリンゴ』と呼ばれている。
初めて実をつけたときには屋敷中が奇跡だと大騒ぎでした。
最初は奇跡のリンゴと呼ばれていましたが、リオン様とルイス様が『精霊のいとし子』だとわかり、精霊からお二人への祝福だろうと『祝福のリンゴ』と呼ばれるようになりました。
今日は何を作ろうかと思案しているとドラゴンを肩に乗せたライナス様がこちらへ向かっているのが見えます。
「料理長、おはよう!」
「おはようございます、ライナス様」
朝のお勉強が終わられて昼食までの自由時間をドラゴンと散歩なのでしょう。ライナス様は私の腕に掛けたカゴの中身へ視線を向けています。
「今日は何を作るの?」
試作を重ねていたデザートが完成したのでそちらを作ろうかと思っていましたが、ライナス様が食べたい物があればそちらに変えようかと思い尋ねてみます。
「新作をお出ししようかと考えていましたが、ライナス様は何かお食べになりたい物がありましたか?」
「ううん、そういうわけじゃないよ」
料理長が作るのはなんでもおいしいから好きと言ってくださるライナス様に料理人冥利に尽きると口を緩ませる。
では予定通り新作のデザートをお出ししましょう。
自信作がどんな反応をもらうか、腕が鳴ると気合を入れました。
この木は通年リンゴが生っているため、リンゴを使った料理や菓子を度々作りますがどれも好評をいただいています。
ライナス様はなんでも喜んでくださいますが、しいて言うならば焼き菓子の方が好みのようですね。
リンゴを練りこんだケーキやリンゴジャムを使ったクッキーなどは特に喜んでいただけます。
レイン様はリンゴを使ったパイやタルトがお好きですね。
子供の頃からリンゴのパイはおかわりを願うほどで、今もパイを一番喜んでくださるのはレイン様です。
リオン様は食べたことのない物への興味が強く、いつも新作を出すと目をキラキラさせていました。
新しい物を考えるのは難しくもあり、楽しくもあります。
リオン様のおかげでどんどんレシピが増えていくので、それを生かして領地を発展させるお手伝いもさせていただいている。
この土地に生まれた者として発展に寄与できるのは誇らしくうれしい。
ルイス様はリンゴのジュースや果汁を使った果実水がお好きなようです。イクス様もリンゴそのままの方がお好きなようなのでお二人は好みが似ておいでですね。
旦那様はさほど甘い物を好みませんがリンゴで作ったお酒は気に入っているようです。
意外と強いお酒なのでレイン様に飲み過ぎ注意ですよと言われてしまうこともありますが。
ライナス様の肩に乗ったドラゴンが首を伸ばしてリンゴの匂いを嗅いでいます。
彼はリンゴの氷菓が好きなようです。シャーベットを作ったときは頭を突っ込んで食べていました。
他の物はほとんど食べないのに不思議です。
リンゴひとつぶんの大きさしかないとはいえドラゴンなので最初は皆恐る恐る接していましたが、今では危ないことはないと周知されました。
かく言う私も夏場には食材を冷やすために氷を作ってもらっています。
嫌がる顔一つせずタライいっぱいの氷を作ってくれる彼にはとても助けられているので、お礼のシャーベットは欠かしません。
ああ、今年の夏はリンゴの果肉をクラッシュしてシャーベットに添えてみましょうか。
新しいアイディアが湧いてきてメモとペンを取り出し書き込みます。
こうして喜んでくれる対象がたくさんいることが新しい料理を生み出す原動力になっているのだと実感しますね。
私の手元を覗き込んだドラゴンが目を輝かせた、ような気がします。
早くレシピを詰めて提供できるようにしたいですね。
ポケットにメモを戻してライナス様に向き直ります。
「そういえば、今日はとてもリンゴがつやつやしているので、そろそろお二人が帰ってくるかもしれませんよ?」
経験則でしかないがリオン様とルイス様がいらっしゃるときはリンゴのツヤが増しているように感じられる。
庭師もお二人が戻ってくると葉っぱが生き生きしていると言っていたし、精霊の祝福というのはすごいものだと思います。
本当!と言って門の方へ走っていったライナス様を見送って調理場へ戻ります。
お二人が戻ってこられたら何を作りましょうか。
不在の間に増えたレシピとお二人が好む料理を頭の中に思い浮かべながら、まだまだ隠居はできないなと思います。
後進を育てながらも皆様に一番に腕を振るうのはまだまだ私でありたいと願うのでした。
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