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第39話 『ありがとう』と言ってやりますわ
しおりを挟むそんなわたくしを見たソウイチロウ様はパーティーへ出席したときのメリットを教えてくれる。
恐らくソウイチロウ様はわたくしが、元婚約者と、その元婚約者がわたくしに行った行為にトラウマを抱いていると思っているのであろう事が窺えてくる。
確かに、婚約破棄された当初であれば、トラウマまではいかないまでも会いたくない、顔も見たくないと思っていた事だろう。
しかしながらわたくしはあのころとは違うのである。
今のわたくしはソウイチロウ様の妻であり、それはシノミヤ家当主の妻でもあるのだ。
であるのならば、わたくしの『苦手な人がいるから行きたくない』という子供のようなわがままでパーティーを欠席するというのはあり得ない。
それが、苦手な人が開くパーティーであればそういう理由で欠席するのもありだとは思うのだが、国王陛下自らが開くパーティーであるのであれば猶更そういう理由での欠席はあり得ないだろう。
おそらく今回のパーティーは国王陛下が開くという事からも息子であり王位継承権を持つシュバルツ殿下の新しい婚約者のお披露目である可能性が高いとは思うのだけれども、それがなんだと言うのだ。
むしろわたくしの夫であるソウイチロウ様を見せつけるくらいの気概で行くべきであろう。
それに、その他貴族にもこの着物の美しさを見せつけてやりたいという気持ちもある。
そしていかに今のわたくしが恵まれている環境であるかを見せつけて、ソウイチロウ様の元に嫁いだ事が罰にすらなってなく、むしろそのお陰でわたくしは幸せになっているのだと知った時のあの人たちの表情を見てみたとも思ってしまう。
「大丈夫ですわ。 わたくしはそのような理由で国王陛下が催すパーティーに行きたくない等という女性にはなりたくありませんわ。それにわたくしは見せつけてやりたいという気持ちも少なからずございます。今わたくしはあなた方のお陰でソウイチロウ様という最高の旦那様の元に嫁ぐ事ができたんだぞっ!! と。ソウイチロウ様の元に嫁がなければ体験できなかった様々な出来事や、出会う事が無かった様々な食事、そ、そ、そして、その、も、ものすごく美しくてカッコいいソウイチロウ様の妻になれたんですもの。確かにあの時わたくしにした行為自体は腹は立つものの、あの日一方的に婚約破棄をされなければわたくしはソウイチロウ様の妻になるどころか出会う事も無かったでしょうし、これでも感謝はしておりますわ。なので、あの者たちと出会ったその時は『婚約破棄していただきありがとう』と言ってやりますわっ!」
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