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第56話 妄想談義に花開く
しおりを挟む「あらあらあらっ! 大胆ですわっ!」
「まぁまぁまぁっ! お、大人……っ!」
「はわわわわわっ! じょ、女性からだなんて、凄いっ!」
そしてわたくしのキスを見た友人たちには刺激が強すぎたのか顔を真っ赤にしながら凝視している。
そう、これは婚約者から酷い形で婚約破棄をされ、みんなから忌み嫌われ悪い噂しか聞かないような殿方にわたくしの意志関係なく嫁がされた事を不憫に思った神様がくれた幸せなのだ。
だからこそわたくしはこれから先は誰にも邪魔されずに幸せになってもいいと思っているし、そのように過ごしていくつもりである。
だからこそ、いくらわたくしの友達とはいえソウイチロウ様を独り占めしたとしてもきっと罰は当たらないだろう。
しかしながら、こうして友達と一緒に日本の料理に舌鼓を打ったり、日本へ観光をしに行くのも楽しそうだと思ってしまい、少しだけソウイチロウ様を独り占めするという決心が揺らいでしまうのだが、それでもやっぱりわたくしはソウイチロウ様を独り占めしたい。
「……まったく、友達の前だからと言って背伸びしたいのは分かるがほどほどにしといたほうが後々黒歴史になったりするから抑えた方が自身の為だぞ?」
そしてわたくしから頬をキスしたソウイチロウ様は顔を赤らめたり慌てるような事も無く、むしろ子供の悪戯かのように軽くあしらわれては、今持てる精一杯の勇気でもってキスした意味がないどころかただ恥をかいただけではないか……。
そんな事を思い少しだけ気落ちし始めたその時、わたくしの身体は急に浮遊感に襲われ気が付いた時にはソウイチロウ様にお姫様抱っこをされているわけで。
「どうせ見せつけるのならば頬にキスではなく、もっと大胆な事をしないと」
そうソウイチロウ様は言うと、わたくしの唇へお姫様だっこした状態で軽いキスを一つしてくるではないか。
「「「きゃぁぁぁああああっ!!!!」」」
「はうはうはうっ!?」
その瞬間ダイニングは黄色い声とわたくしの声にならない声が響き渡る。
「とりあえず電話しときましょうか総一郎様?」
「一応どこへ電話するつもりか聞こうではないか? 杏奈」
「え? そんなの110番以外あるんですか?」
「よし、そのスマホから手を放そうか? これには一応俺にも言い訳があってだな」
「どんな言い訳を言った所で未成年にキスをしたことには変わらないですよね?」
「臨時ボーナス……五万」
「……もう一声」
未だわたくしをお姫様だっこしている状態でソウイチロウ様とアンナが何やら言い合っているようなのだが、その会話は最早わたくしの頭には入って来ない。
むしろ先ほどのキスの事が未だに脳内で処理できておらず思考回路はショート寸前である。
「あ、赤ちゃんができてしまいますわ……っ!」
「……え? 赤ちゃん…………?」
「まさか総一郎様……既に手を付けたんですか? ……うわぁ、引くわぁ……っ」
「手を付けてないからっ!! 誤解だっ!! って、なんで後ずさるんだよ杏奈っ!? シャーリーもなんでそんな事を急に口にしたんだっ!?」
「え? 好きな異性から口同士でキスをするような行為をすると赤ちゃんができるってお母様から教えられたのですけれども……? それにしても、男の子かしら……女の子でも大歓迎ですわっ! あぁ、今から楽しみですわねっ!!」
「え? なにそれ可愛いんですけど……って、何ホッとしているんですか総一郎様。 奥方様は妊娠していると勘違いしているようだから、今この誤解を解かないと大変な事になるわよ?」
「はっ!? な、なぁシャーリー……っ!? って、どこから説明したら良いんだよっ!? しかもなまじ間違いではないのがまた誤解を解き辛いじゃねぇかよっ!!」
「…………総一郎様、えっと、おめでとうございます? 今夜はお赤飯ですかね?」
「煽るんじゃねぇっ!!」
そしてまた総一郎様とアンナが何やら言い合いをし始めるのだが、今のわたくしは自分の子供と過ごす近い未来について妄想する事に忙しいため、やはり内容は頭に入って来ない。
その妄想する未来の自分は、最高に幸せそうで輝いており、間違いなくそんな幸せな家庭を築いている未来が訪れるという確信をしつつ、わたくしは未だにきゃいきゃいと黄色い声を上げている友達も加わって一緒にその幸せな未来について妄想談義に花開くのであった。
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ここまで読んでいただきありがとうございます('ω')ノここでこのお話は一旦完結でございます。
ここまであっという間で、私自身楽しく書ききることができました。
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