よわよわ魔王がレベチ勇者にロックオンされました~コマンド「にげる」はどこですか~

サノツキ

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#4:宿泊研修~準備編

#4-1①.友達(?)と待ち合わせ

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「さて、皆さん御存知の通り、明後日から宿泊研修です。明日は準備のため授業は有りません。各自、配布済みの冊子を読み必要なものを用意するよう。では、宜しくお願いします」

 去年卒業したばかりなのにアカデミーに戻ってきたゲネルは、いつの間にかちゃっかりこのクラスの副担任になっていた。
 日課となる朝の点呼と、連絡事項のある時はこうやって帰りのホームルームにも顔を出す。

 明日が準備で休みとなっているが、実質今日も昼からの授業はなく、今日明日で準備せよとのことだろう。
 去り際に目が合ったゲネルは、「自分でできることは自分で」と言う視線を寄越して教室を後にした。

(わかってるわよ……)

 クラスメイトは「どこそこに買い物に行く」とか「持っていくおやつはどこそこのが美味しい」なんて話を楽しそうにしている。主に女の子たちが。きゃっきゃうふふと楽しそうに。

 「女の子の友だちが欲しい」と言っていたにもかかわらず、今日に至るまで取り立てて友達らしい友達は出来ず、楽しそうに繰り広げられる買い物トークに参加もできず、軽くため息を零しながら教室を出ようとしたとき。

「ねえ、マリナちゃんはもう買い物終わった?」

 前の席のヒイロが不意に振り返ってそう聞いてきた。

「いいえ、まだだけど」
「ホント?良かったぁ~。じゃあ一緒に買い物行かない?」

 嬉しそうに一つ手を叩き、ヒイロは笑顔を浮かべた。
 …………え?言われた意味がよくわからず思考が一瞬停止した。

 わたしと?
 一緒に?
 買い物???

 誰が?
 誰と?
 何を?

 これって……。

「友達っぽい……」

(まさに、思い描く「友達」とすることじゃない!なにそれ、なにそれ!楽しそう!!)

「え?やだなあ、マリナちゃんったら。私たち、友達じゃない」

(あれ?わたし、声に出してた!?)

 ヒイロがマリナの手を取りにっこりと微笑む。
 そっか、うん。友達か。
 ……マリナは待望の同性の友達に心が浮き立った。

「そうね、友達……」
「じゃあ門の所で待ち合わせね」

 ヒイロと友達であることの確認で呟いた肯定の言葉は、そのままお出掛けへの返事だと受け取られたらしく、ヒイロと一緒に買い物に行くことは決定してしまった。
 いや、元より断るつもりはなかったけど。

「わかりました」

 あとでね、とひらりと手を振ってヒイロが教室を出ていく。
 いつも通り、取り巻きの男の子たちを引き連れて。



(そう言えば、お昼……どうするんだろう)

 くうと小さく音を立てるお腹に手を当て、ランチの算段をする。
 今日は、カフェに寄ってテイクアウトのパニーニとマフィンを買って帰るつもりだった。
 時間を決めず待ち合わせと言うからには、荷物をおいたら直ぐに、という意味だろう。
 それならヒイロも同じく食べてないだろうし、どこかでランチを食べることになるかもしれない。

 休日なら規定はないが、放課後の外出は制服のままとの規則もあるので着替えの必要はないし。
 マリナは、出来るだけ時間ロスせずに用意できるよう、寄り道せずに早足で寮へと戻っていった。
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