よわよわ魔王がレベチ勇者にロックオンされました~コマンド「にげる」はどこですか~

サノツキ

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#4:宿泊研修~準備編

#4-余談1①.計画通り

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「ユーリ、今年の宿泊研修は俺も参加する」

 ハロルド殿下、いつまでもそんなお前アホでいてくれ。
 思った通り上手く転がった状況に、俺はこっそりと一人ほくそ笑んだ。

 ◀ ◀ ◀ ◀

 ここは王宮の中にあるハロルド殿下の執務室。

 俺はアカデミーの授業を終えた後、ほぼ毎日ここに来て王子アホの手伝いをしている。
 おかげで、生徒会にもまったく顔を出せていない。

 最終学年ということもあって授業は詰まっていて空きがない上、勇者という立場上サボることも出来ない。
 卒業した暁には、成年貴族としての仕事も控えている。
 そもそも、幼い頃より嫡男として育てられ、周囲に勇者として期待され、無意識に被り続けて巨大化した猫は今更そう簡単に脱げるものでもない。

(はあ……もっと気楽に何の柵もなく過ごしたい……)

「ルディ、そこ間違ってる」
「ああ!もう!ユーリが代わりにやればいいのに!」
「お前は王子だろうが!俺が手伝ってやってるんだから、さっさと終わらせろ」
「うう……ユーリが怖い……仕事したくない……マリナに会いたい……」

 何言ってんだ、アホが。俺だって会ってないっての。
 ……いやいや待て待て、彼女は魔王だぞ。
 支配下に置き、逆らえなくして降伏させてこその魔王だろうが。

 しかし、いつになったらこの王子アホにかかった魅了チャームは解けるんだろうか。
 マリナ、マリナ、と鬱陶しいことこの上ない。
 やっぱり会わせるんじゃなかった。



「なあ、アイツらそろそろ宿泊研修だろう?なんで俺は卒業しちゃったんだろうな。せめて同じアカデミーにいたかったよ。お前はいいよなあ?」
「何言ってるんだ、俺だって学年違うし接点なんかない」

 本当に驚くほど接点がない。
 2学年離れただけでこんなにも会わないものだろうか。
 授業の合間の休憩時間も、移動教室の合間も、昼休みも見事に見かけない。
 もしかして、闇属性だからと隠秘魔法でも使ってるのか?
 教室で彼女の隣の席だというユーゴを、生まれて初めて羨ましく思った。

「ユーリ、生徒会長だろ?」
「その生徒会長サマが、生徒会に行く暇もなくここでお前の仕事手伝ってやってるんだろうが」

 ゆくゆくは側近として仕えることになるとは言え、ちょっとは遠慮しろよ。

「生徒会長してんだからさあ、なんかこう権力使ってゴリ押しとかねえの?」
「そんな事言える訳無いだろ、俺勇者だぞ」
「へえへえ、品行方正な勇者サマだもんな。面倒くせえよなあ、俺だって王子だよ」
「そんなに言うなら、王子のゴリ押しのほうが効くんじゃないか?」

 もう少し。気付け。

「ああ?」
「お前、アカデミーの理事になったんだろ?視察でとか何とか言えねえの?」
「お?おお、やっぱユーリ頭いいな」

 と、ここで冒頭の会話である。
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