いらっしゃいませお客様。何をお探しですか?

霧谷水穂

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キラキラした世界をお求めですか?お客様。

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 私は占い師。

 板の上に敷いた紙の表に出現させた物体から読み取る占いで、使うのは私の感応力と紙の下の土で作られた板。
 その日は弟子二人ととにかく鮮明な物質作りにいそしんでいた。
 出来た物が正しい形でなければ、正確な答えは得られないからだ。

 隣の部屋の花瓶の形や外のケーキ屋のウィンドウ内のケーキを作ったり、簡単な喜怒哀楽や身体的状況も形に出来る。
 ちなみに隣の息子の状況を作れば、熟れた果実が落ちて半分潰れたような形の物が出来た。
 どうやら眠いようだ。

 そんな私の元へ舞い込んだ依頼は人探しだった。
 場所の特定なら、その地点にちなんだ物体が現れる。
 分かりやすく複数出る時もある。
 そこに私の感情が混ざる事はない。

 そんな私を困惑させたのだ。
 現れて当然の物体が形作れない。
 依頼主に許可をもらって私の左右で同じ占いをしていた弟子を見ると、二人に変化が現れた。
 左側の娘の頭がガクリと落ちて、何も乗っていなかったはずの頭に半透明な紫色のベールが被さった。
 顔が上がると左右に垂れていた髪が白いストライプのリボンでまとめられていた。

「呼ばれたので行って参ります」

「ああ、気をつけて」

 私があっさり退出を許したので依頼主が困惑していたが、こちらも依頼を完遂する為の行動なのだから目を潰れと言っておいた。
 右側の息子が次第にうつむくと泣きながら謝り始める。

 やはりこれは隠れている人物が探して欲しくないようだ。
 人の感情は時に空気さえ歪め、離れた場所から見ようとする私などにはやりづらい状況になってしまう。
 探し人はスポーツ選手で少し前まではかなり世を賑わせた女性であるだけに、依頼主はかなり真剣だ。
 警察や興信所の方が適切だと私は思うのだが、それでもここに来たと言う事は、かなり切羽詰まっているのだろう。
 その真剣な気持ちを無下には出来ない。
 そう言う人々の拠り所が占い師であるのだから。 

「と言う訳です」

 読み取りに時間がかかりそうだからこちらから追って知らせる事にして、街に繰り出したら此処を見つけた。
 家では落ち着かなかった息子が店に入ったら泣き止んで助かった。

「それは大変でしたね(息子さんが)」

 相槌を打ってくれたのは店の店員で名をフォリナと言うらしい。

「娘さんは呼び戻さなかったのですか?」

 この店員は私の依頼主より、我々家族の心配をしてくれているようだ。

「あの子は大丈夫。私の感応力で作った娘だからね」

「作った!」

 その声音には疑問ではなく驚きが乗っていた。

「私が占いしやすくなるように該当場所の空気の清浄化してくれているはずなのでね」

「それは頼もしいですね!助かりますね!」

 本当に真っ直ぐな感情を見せる子だな。

「では当店でお助け出来るのは息子さんの精神安定でしょうか?」

「薬でも売っているのかな?」

「いいえ。当店は雑貨屋に該当します。
 お茶くらいは出せますけど」

 彼女は私の前に置かれたお茶のカップを見ていた。
 もちろん息子の前にもある。

「安定効果のあるお茶では改善されてないみたいなので……」

 そうだったのか!?
 驚いている私達を置いて、彼女はカウンターの向こうに話しかけ始めた。

 そうして持って来てくれたのは金色の不思議な物だった。
 形は贅を尽くした女性のドレスのレースによるドレープのようで、他に例えるなら……カーネーションの花の作りに似ているな。
 でも、金色だ。

「これは輝き苔と言います」

 確かに輝いているな。

「用途は化粧品になります。
 すりおろして瞼《まぶた》の上に乗せます」

 このキラキラで息子に化粧をさせろと?
 私達が困惑しているのがわかったのか両手をパタパタ振って見せてくる。

「キンキラお化けにする必要はないです。
 睫毛まつげに沿って薄く乗せるだけで大丈夫です」

「それでも化粧だろう?」

「む、化粧を馬鹿にしては行けません!
 本来の化粧は自分の気持ちを隠す意味合いがあるんですから!」

「気持ちを隠す?」

「女性の間では、化粧とドレスは戦闘服だ。なんて言われたりします」

 戦闘服とは言い得て妙だな。

「つまり輝き苔には隠す効果を助ける何かがあるのか?」

「はい。
 目に写る物が全てキレイに見えます!」

「??」

「例えばですが、仕事で失敗をして罰として夕方まで草むしりを命じられた人がいたとします。
 本来は誰もが痛くて辛くて半泣き。に見えます。
 でも、これの粉を瞼に塗るとアラ不思議、半泣きではあるけれど目を輝かせ笑顔をたたえているように見えます!」

 何だそれは……。

「唾が飛ぶような口喧嘩を見ても、うるうると見つめ合っているように見えます!」

 キャッと頬を染める彼女に少し頭が痛くなってきた気がする。

「それは幻覚作用では?」

「そうとも言います。
 でも毒も薬になると言います。
 他からの激情に流されない程度の感情抑制は必要だと思いますよ」

 ん~用量に工夫が必要か。

「難なら私が怒ったお客様の受け流し用に作ったのを少しお持ちになりますか?」

「出来たのがあるのかな?」

「はい。そう言う実験は好きなので」

 薦められ、小さな紙に一包いただく事にして、お代には何故か私が仕事で使う手製の土板を求められたので渡した。

「ありがとうございました。ご健幸をお祈りしています」


 雑貨屋フォロスを訪ねてから後日、我が娘が戻り、内容の把握につとめる。

 どうやら探し人は拐われたらしいが、姿を隠す事で他者を妨害する状況が出来てしまい、その役目が済んで解放されたらしい。
 それは良いのだが、妨害させたのは自分の母で、母に仕事の管理を全て任せていた自分はこれからどうすれば良いのかわからなくなって心がパニックを起こしてどこかに隠れているようだ。

 何故か紙幣のイメージが湧いて来るのだが、最後の四枚には謝罪の心が添えられていて、我が息子はそれを強く感じすぎて謝り倒していたようだ。

 それを占いから読み取り伝えると、依頼主は溜め息を吐く。
 依頼主は探し人の幼なじみで所属先の上司。
 その親子依存には既に気づいていたそうだ。

 力になってやりたいから居場所を調べて欲しい。
 そう言われて占い師としても良かったと思える仕事が出来た。
 探し人が安らげると良いと思う。

――――――――――---‐基本夢ネタです。20181103
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