すべてはスライムで出来ている。

霧谷水穂

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解体

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 食べるという事は、丸かじり?
「……や」
 木の実を丸かじりしているセキ達の姿を思い浮かべ、同じように蛇の腹にかぶりつくカークを想像する。
 何故かかじられた蛇が暴れ出し、カークの顔面が尻尾で強打される様子が浮かんだ。

「ここで、さばく」
 ……カークは剣を取り出すと蛇の首を石の上でちょん切った。
 体が細長いからかな、血はあんまり出なかった。

「ガヤ、トト、マーラ」
 呼ばれてやっと三匹が姿を見せる。
「青の、スライム、捕ってきて」
 ……ビシッと三匹が手を上げ、草地に飛び込んで行く。
 その間に首の切り目に剣を刺し入れて広げると、皮をめくるように剥がしていく。
 それと一緒に腹の内臓も包む膜を壊さないように剥くと血が広がらないようだ。
「「「キュッ」」」
 ……三匹が、尻尾で青いスライムを転がしながら戻ってきた。
「じょう、でき」

 カークは青いスライムに手を伸ばすと、片手でむしり取った!
 そんな無造作に!
 スライムもそれでいいのか?
 ……反応はない。

 スライム片を持った手で剥き終わった肉をつかんで揉むように尻尾の先まで滑らせていく。
 するとあら不思議!残った血糊もぬめりもキレイに取れた!ちゃんと取らないと生臭さが残るぞ!

 汚れたスライム片に内臓を包んで石の上の血も拭き取る。
 そのスライム片を体積の減った青いスライムの上に乗せてやると、当たり前にように取り込み始めた。

 スライムを横目に蛇を剣の長さの半分くらいにブツ切り。
 石の上に肋骨を開いておいたら、背中から割いて背骨の左右に切り込みを入れる。
 剣を寝かせて肋骨の上を滑らせるように通す。
「うん、うまく、できた」
 左右行うと肉二枚、骨一枚の三枚おろしになる。
 カークの手先は器用だな。

 出た骨は青いスライムに乗せてやっていた。
 せっせと取り込んで中でゆっくり吸収するようだ。

 蛇肉はその辺から取ってきたつるんとした葉っぱで一枚ずつサンドしてから蔓で束ねた。
 何の葉っぱかはわからない。

 でも青いスライムはゴミを食べるのか?
「生き物、しがい、たかる」
 なるほど、森の掃除屋ってことだな。
「はい……殻は残す、イヤント、えさ」
 イヤント?それは?
「イヤント、黒い、はねない虫、ぞろぞろ」
 そんな硬い物を食べる虫がいるのか。
 ぞろぞろ出てきたら怖いな。
「こわい、気持ち悪い」

 そんな事を話しながらカークの手はまたもスライム片を握っていて、蛇の皮を磨いていた。
 その方法が、筒状になっている皮の中にスライム片を入れて表面から揉みこむ。
「あぶら、のこり肉、とれる」
 スライム片を取り出した後に石で潰しておいた葉っぱを丸ごと放り込む。
「お茶に、なる、はっぱ」
 この葉っぱは持ち物の中の食料のうちの一つ。
 そして再び揉みこんで空いている口をひもで結んで閉じた。
 平たくとぐろ状に巻いて、そのままカバンの底にしまう。
「10日、まつ」
 そうなのか。もっと色々やるのかと思った。

 青いスライムは勝手に生活圏に帰るらしいので放置。
 では移動を再開しますか。
「はい」
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