上 下
1 / 16
プロローグ

【異界戦争】

しおりを挟む
 【異界戦争】


 剣や魔法などを用いて、人工的に作り出された異世界で、戦い合う。

 今、世界中が熱狂する異種格闘魔法対戦競技の総称だ。

 毎週毎週、数多くのプレイヤーが参加し、夜の町を賑わらせる。

 俺、某学園に通うカザミ・ランドールも、そのプレイヤーの一人だ。

 こう言っちゃ何だが…………。

 俺、そこそこ、良い成績を残す高ランカープレイヤーで、実力も相当ある方だ。

 ただ、ちょいと、スキルに問題があって-------------

 スキルを使ったら、最後-------------してしまうのだ。

 しかも、スキルを解除するには、現実世界に帰還する必要がある。

 つまり、一度、スキルを発動したら、俺は異世界で、女の姿のままで、過ごさないといけない。

「がああああああ!!!!」

 男としては、それ何て、拷問だよ?

 ---------と、突っ込みたくなる内容だ。

 けれど、それは仕方ない。

 一度、得てしまったスキルは消す事は出来ない。

 なら、それをどう使うか-------------それで、勝敗は決まる。
 
 今、斬ったこいつもそうだ。

 中々、腕が立ちそうだったから、挑んでみたものの…………。

 威勢ばかりで、ど素人同然だ。

 きっと、弱い者を痛ぶる-------------そんな事ばかりして、威張るタイプだ。

 張り合いがない。

「く…………く、そが…………」

 だから-------------

「とっとと、おっちね…………」

 俺の剣が、倒れていた男の脳髄を貫いた。

 普通なら、即死もんだが、この【異界戦争】が作り出した異世界では、プレイヤーが死ぬ事はない。

 あくまでも、競技的なゲームだからだ。

 さて、次の獲物でも探すとしますか-------------

「…………と言っても…………もういないかもしれないけれど…………」

 何気なく、そう呟いて、肩越しに屍の山と化した悲惨な光景を目の当たりにして、いつも思う。

 俺のスキルって、ほんと、おっかねぇよな~…………。

 
しおりを挟む

処理中です...