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第三章 際限なき悪意

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『カードデバイス型パワードスーツ《黒椿》起動。

 全システム、オールグリーン。

 全兵装のセーフティーを解除にします』


 起動した直後、バイザーに機体の情報が表示される。

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カードデバイス型パワードスーツ。

タイプ : 雛型

《黒椿》


 頭部…………超高性能解析バイザー

 右腕…………魔力ビーム式アームバルカン

 左腕…………魔力供給式実体型ブレードシールド

 背部…………魔力式強化飛行ユニット(オーバーブースター装備)

 胸部…………魔力集束砲(アブソーバーシステム搭載)

 両肩…………魔力式大型バリアユニット(三連式ビーム砲装備)

 両脚…………魔力式オーバーブースター

 装甲…………アダマンタイト製強化装甲(常時防護バリアフィールドシステム内蔵型)

 魔力源…………神聖式魔力増幅駆動エンジン

 主武装…………無効化システム搭載型刀剣武装《雷電》(アブソーバーシステム内蔵)


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「ぐっ…………」

 神聖式システムを使っても、やっぱり、魔力をドカ食いしやがる。

 早く方をつけないと、身体が持ちそうにない。


「う、うわあああっ!!!」

「オーバーブーストぉ~!!」

 俺はオーバーブーストで超加速して、足を躓かせた人を襲っていた魔物をバルカン砲で蜂の巣にして、その人の横を通り抜ける。

 そして、瞬く間に人々に追い縋る魔物共を《雷電》で斬り伏せ、立ち塞がる。

「ここからは通行止めだよぉ~!」

 熱源、魔力反応ともに同じ…………。

 残りの数は…………中型が計六体だな…………。

 もう少し、持ってくれよ…………!

「オーバーブーストぉ~!!」

 光の如く突き抜け、刀を振り払う。

 魔物達は左右に身体がずれて、散りとなって消滅する。

「オフモード」

 パワードスーツを解除し、カードデバイスに戻して振り返る。

「大丈夫でしたかぁ~?」

 そして、にこやかに、後ろにいる人達に声を掛けた。

 まあ、神聖の代償の所為で、まだ女のままだし、怖がられる事はないだろう。

 何せ、ナイスバディの美少女だ。

 運が良ければ、この国の情報も手に入るしね。

 そう思っていたが…………。

「ば、化け物!?」

「……………………はいぃ~……?」

 何か、最初に助けた中年の男が私の方を指差していた。

 後ろを振り返ってみるが、何もいない。

 もしかして、俺の事を言っているのか……?

 そう思って、視線を戻したら--------

「…………やあっ…………!」

 呑気に手を挙げて、至近距離から俺を見つめる男の顔がある。

 その顔を見て、思わず、固まる俺。

 何故なら、その男は------------

「アレクセイ・ニコラビッチ!?」

 俺は亜空間収納から、銃器を取り出そうとして、腕を掴まれる。

「まあ、待ちなよ。

 せっかくだから、ゆっくりと話をしようじゃないか……?

 そうだね…………。

 もし君が、私と話をしてくれたなら、ここにいる人達には、一切手を出さない。

 もちろん、私自身と私の配下も含めてね。

 どうだろうか……?」


「…………!?」


 この人の心を見透かしたような言い方。

 それに、この魔力の感じは…………。

 まさか、本当にアレクセイなのか……?

 いや、それにしては、何か違和感がある。

 この感じは…………何処かで…………。


「それで、返答は……?」

 俺に催促するアレクセイ…………。

 もし、俺が考えている通りの男なら、答えは…………。

「断っておくわぁ~。

 何故、そうするかというとねぇ~。

 こういう時、あなたのような人って、大抵守る気のない事を平然と言うからよぉ~。

 その証拠に、森の中に色々と仕込んでいるみたいだしねぇ~」

 俺がそう諭すと、アレクセイは興味ありげに見つめ返して来た。


「なら、とりあえず、君をお持ち帰りする方向で行ってみよう!」

 アレクセイが指を鳴らすと、森の中から更に数十体程の魔物が姿を現し、アレクセイごと俺を取り囲む。

「悪いけど、一緒に来て貰うよ」

 ちょっと、これはまずいかな……?
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