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第三章 際限なき悪意

やっぱり、こうなったか…………

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「はぁ~…………」


 俺は大きなため息を吐いた。


 理由は至極単純。


 剣聖と大賢者に専用のパワードスーツを渡した後の事。


 俺が話を終えて早々、二人に両脇を掴まれ、引きずられていった俺は予想通りというか…………。


 二人の模擬戦に付き合わされた。


 付き合わされたと言っても、別に戦った訳ではない。


 どちらかと言うと、二人の模擬戦の審判役だ。


 二人の戦いはもう滅茶苦茶だった。


 あまりにも、激しい戦闘音に王宮では、一時期大騒ぎになり、今も若干、混乱している。

 
 それは当然、この国のトップ。

 国王陛下の耳にも入る事になり…………。


 俺は今、その国王と対峙していた。


 それは、二人の模擬戦が終わった直後だった。


 国王の使者と名乗る者が、俺に言伝を言いに来た。


『是非、君と話をしてみたい』


 大方、その理由には見当が付くが…………。

 せっかくだから、お話をしましょうか。


 そう思って、指定された王宮のテラスに到着して…………。


「動くな…………」


 騎士らしき、男に剣を突きつけられた。


「一体、何の真似だ…………?」

 
 俺はそれを指示したであろう。

 テーブルで優雅に紅茶を飲む青年に語り掛けた。


「何……?

 ちょっとした交渉だよ」


 白々しい事、この上ない。


 アホらしい…………。

「貴様…………!!」

「リリース」

 俺に剣を向けた男の獲物を指先で弾くと、何か叫んで来たので、カードデバイスを展開して、排除。


 続けて、何やら、他の騎士共が俺を取り囲んで来た。


「ほんとにめんどくさいなぁ~…………」


 俺に飛び掛かって来た騎士達を前に、俺は心底呆れたように、大きなため息を吐いた。


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 数十分後----------------


「「「「……………………」」」」


 国王陛下らしき人物の前に転がる騎士達。


 俺は何事もなかったかのように、そいつの前へと座る。

「……………………」


 心なしか、国王陛下の顔が青い。


「さてさてぇ~…………。

 話し合いだったけぇ~?

 なら、全面戦争…………始めよっか…………!」


「待ってくれ…………!!」


 俺が笑顔で交渉というなのを行うとして、その国王の側に佇んでいた執事らしき人物が割って入って来る。


「何を待てというのかなぁ~……?


 そちらから呼び出して置いて、交渉と言いつつ、暴力に勝手出たあなた達に対して、一体何を待てば良いと言うのぉ~?


 大方、あなた達は私の技術を狙って、力強くで奪おうとしたんでしょうけどぉ~…………。


 でも、残念だったねぇ~。


 例え、深傷を負っていたとしても、私は…………ぁ~…………。


 だ・か・らぁ~……………………喧嘩売った以上、覚悟しておいてよねぇ~…………?」


 俺が声を低くして、冷たく言い放つと、俺の覇気に当てられ、割り込んで来た執事風の男がたじろぐ。


 だが、彼も国王の側近として、何か言い作ろうとして------------


「それじゃあ~…………。

 何処から滅ぼして欲しいぃ~?

 言っておくけど、私の力ってこんなもんじゃないからねぇ~…………。


 今だったら、指一本動かさずに、近くの町ぐらい……………………大体、七つぐらいなら余裕で滅ぼせるかなぁ~?

 こんな風にねぇ~…………」


 俺が指を鳴らすと、テラスから見える山脈が爆音を立てて、跡形も無く消え去った。


 あまりにも、ありえない出来事に、国王やその執事の顔が強張る。


「ねぇ、何処を滅ぼして欲しいぃ~?」


 俺は結局、こいつらに何も言わせず、亜空間収納から地図を取り出して、国王の前に掲げる。


「もし選ばなかったら…………ここから、消すよぉ~……?


 あの山みたいにねぇ~…………」


 それは事実上の最終宣告だった。


 俺が本気である事が分かるのか…………。

 一気に周りの連中--------それこそ、倒れている騎士達の顔も、どんどん悪くなる。


 俺は悪戯っぽい笑みを浮かべて、片手を地図から外して、国王に見せるようにして、指を一本一本折って、数えて行く。


 カウントダウンのスタートだ。


「はいぃ~…………残り十秒前ぇ~。


 十、九、八------------」


「待たれよ!?」

 

 何だよ…………。


 良い所なのに…………。


 声のする方へと振り向くと、テラスへと息を切らせた勇者の横に、王冠を被った初老の男が護衛と思しき、騎士を引き連れて来ていた。


「ち、父上…………!?」


 はぁ……?

 父上……?


 って事は、こいつが本当の国王なのか……?
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