僕の考えた最強ホラー

からし

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お札、はがしたの誰?

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引っ越してきたのは、7月の終わりだった。
大学の下宿先が決まらず、焦って借りたのがこの築50年のアパート。

ボロいけど、家賃は安い。
内見のとき、唯一気になったのが、押し入れの中に貼られていた古びたお札だった。

「これ……なんですか?」

不動産屋の男は、言葉を濁した。

「前の住人が、なんか宗教的な理由で。剥がしときましょうか?」

俺は見栄を張って言った。

「いや、大丈夫です。自分でなんとかします」

実際は、ちょっと怖かったから“なんとなく”放置してた。

けど、その判断が間違いだった。

8月1日。
引っ越し翌日。寝ていたら、深夜2時半。耳元で音がした。

「ビリッ」

目を開けると、押し入れの扉が少し開いていた。

確認すると――
お札が半分、破れていた。

誰が?
鍵は閉めていたし、窓も開けていない。

寝ぼけて自分でやったのかもしれない。そう思い込んでその日は寝た。

翌日、大学から帰宅すると、押し入れの扉が全開だった。
中は真っ暗で、なぜか奥が異様に深く見えた。

部屋の構造的に、奥行きはせいぜい1メートル。
なのに、見ていると吸い込まれそうになる。

お札は――完全に剥がれていた。
床に落ちて、ぐしゃぐしゃに丸まっていた。

このとき、やっと「まずい」と思った。
でも、それが“何か”を引き込んでしまった後だった。

その夜。
金縛りにあった。

耳元で、何かの息遣い。
それが少しずつ、首の方へ――いや、喉の奥へ入り込もうとしているような感覚。

「――おいで」

女の声。やけに澄んでいて、妙に静かだった。

翌朝、喉に内出血の痕が残っていた。
首に指の跡のような、赤黒い痕。

心霊系の知人に相談した。
写メを送っただけで、彼は電話してきた。

「お札、剥がした?」

「いや……勝手に剥がれてて……」

「そのお札、お前を閉じ込めるための“鍵”だったんだよ。
つまりもう、出てる。“それ”が」

今も毎晩、押し入れの奥が開く。
そのたびに、誰かがこっちを覗いている。

でも、俺はもう部屋から出られない。

本当は気づいてる。
玄関の外に出ようとすると、廊下が見知らぬ景色に変わっていることに。

そして今日、押し入れの奥から――
俺と同じ顔をした誰かが這い出してきた。

そいつは俺を見て、笑ってこう言った。

「お札、貼り直してくれてありがとう。
次は、お前が中に入る番だね?」
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