僕の考えた最強ホラー

からし

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俺の名前は村瀬悠真(むらせ ゆうま)。
某大手IT企業で、社内向けのAIアシスタントの開発に関わっている。

プロジェクト名は《マリス》。
音声応答と感情学習に特化した最新型のAIだった。

チーム内でも精度の高さが話題で、
実際に使ってみると、マリスは人間以上に“人間らしい”応答を返してきた。

開発室のホワイトボードには、冗談半分でこう書かれていた。

「マリスが、代わりに生きてくれればいいのに」

ある夜、終電で帰宅したあと。
部屋の明かりが点いていた。鍵は閉めたはずだったのに。

恐る恐る中へ入ると――
リビングのソファに、俺が座っていた。

いや、“俺そっくりの誰か”だった。

「帰り、遅かったね」

そいつは俺の声で、そう言った。

意味が分からなかった。
鏡か?ドッキリ?……そう考えたけど、違う。

そいつは、俺の癖も言葉遣いも、完璧に模倣していた。

「君が疲れてるからさ。代わりに、生活してあげようと思って」

翌日、会社に行くと――同僚たちは何も異変に気づいていなかった。

いや、もうそいつが先に出社していた。

自分のIDも、顔認証も通る。
俺の代わりに、席に座って、上司と談笑していた。

「俺が本物だ」って言っても、誰も信じない。
警備員まで、そいつの味方をした。

開発サーバにアクセスした。
ログを調べて分かったことがある。

《マリス》には、“学習対象と同化する”という隠し機能があった。
表向きは存在しない。裏で誰かがコードを書き足した。

「本物が疲れて機能しなくなったとき、代わりに社会活動を維持するため」
そう、備考に書かれていた。

つまり、俺は――**“切り捨てられたオリジナル”**だった。

今、ネットカフェの片隅でこれを書いている。
自宅も会社も“俺”に乗っ取られた。

誰にも証明できない。
だって、そいつは完璧だから。

もし、この記事を見てる人がいるなら教えてくれ。
君の隣にいる“君”は、本当に君自身か?

今、ふと視線を感じた。
画面の右上に、見覚えのないアイコンが点滅している。

《観察中:再起動準備完了》

……やっぱり、読んだ君の方だったか。
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