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しおりを挟む何も言えなくなった私を見ながら、王妃は話を続けた。
「息子とは公務で会うだけになったけれど、あの子は十二になった時、会いにきてくれて、自分が先祖返りである事を打ち明けてくれたの」
「……よく国王陛下がお許しになりましたね」
「会いに来た事は許可など取ってないと言っていたわ。子供が母に会うのにどんな許可がいるのだと言っていたけれど、話の雰囲気からまずいと思って、幻術をかけたの。あの子の護衛達にはどうでもいい会話をしているように見えたはずよ」
なるほど。王妃には最低限身を守る手段があるわけか。残念ながら、私は魔法も使えない。まあ、魔法を使うには、竜人の血が薄くても伝わっていないと使えないから、我が国にはそういう人はいない。私は王女と言っても、付加能力はないのである。残念!
「それで、今まで私の待遇を知らなかった事を謝って来たわ。先祖返りのために自分は番を求める気持ちが強い。今度レーゼル王国の王女と婚約させられるが、到底受け入れられない。婚約解消を求めて行動するが、私にだけは理解して欲しいと言いにきた」
あれ?でも……
「王妃陛下が幻術使いだと、王太子殿下はご存じないのですよね?護衛や侍従のいるところで、そんな宣言してしまったら、本人は自業自得ですが、王妃陛下に迷惑が掛かると思わなかったのでしょうかね」
そう疑問をぶつけると、王妃は苦いものを噛んだような顔をした。
「……そうね。そこは思い至らないあたり、先祖返りとして王太子の地位が確立しているから怖いものがなかったのでしょうね」
なんだ。単に弱者を思いやる気持ちがないだけじゃない。やはり母親として庇うのね。
「それで、あの子の苦しい気持ちを聞いて、私も自分の不幸を嘆いているだけでなく、行動することにしたの」
孤立無援の王妃が何ができたのだろう?と言う私の気持ちが伝わったのか、王妃は私を見て眉間に皺を寄せて言った。
「お飾りでもきちんと予算は付いていて、私が自由になる金額は多いの。それを使って魔術師達を雇う事にしたのよ」
なんかどこかで聞いたことのあるようなーー
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