番と言えばなんでもかなうと思っているんですか

ぐう

文字の大きさ
47 / 69

47

しおりを挟む



「今は殿下が付けるか付けないかの話なのではないのですか」

 ニックの眼鏡の銀縁がきらりと光ったように見えた。あれってニックの怒りのサインか。

「私は付けると決めた。だが、私だけでは駄目だ。これから先の王族は全員付けるべきだ。だからいくつぐらいから付けるのが効果的かと聞いたのだ」

 他の人の怒りなどに一切忖度しないテオバルトが胸をはる。そんなに偉そうに言うことなのかね。ちょっと考えればわかるじゃないの。

「殿下にしては、先を考えてますね」

 だから、リヒャルトに茶々を入れられる。

「失礼だな。これでも反省しているんだ。私みたいなのを出さないために、私とエレオノーラの子供達のことを考えていかないと」

 おい、ちょっと待て。私はテオバルトと婚姻するなどと一言も言ってない。子供などと先走るのもやめて欲しいものだ。竜人は子供ができにくいのに。
 ニックはテオバルトにしらっと言った。

「そうですね。精通の来る前がよろしいかと」

「ば、馬鹿者、レディの前で何て言葉を!」

「殿下が問われたのですけど」

 ニックはテオバルトに叱責されて、不満げである。残念ながら、私は王族教育の一環で精通ぐらい知っているのだ。テオバルトは女にどれだけ夢と憧れを持っているのだ。そんなに何も知らない箱入り王女がいいのなら、他所を当たって欲しいものだ。だから言ってやった。

「精通くらい知ってます」

 テオバルトがショックを受けたような顔をした。それから私の手を離して、二~三歩後ろに下がった。やっと手を離してくれたので、好機と見てテオバルトから距離を取った。

「王女殿下はきちんと閨教育されていると言うことでしょう」

 とリヒャルトが呆れたように言った。そうだよ。教育されるんだよ。何にも知らない乙女がいいのなら他所を当たってくれ。

 ニックがまた話が逸れたことに苛立ったのか、テーブルをどんっと叩いた。

「続けてよろしいですか」

 ドスが効いた声になってる。

「お願いします」

 思わず敬語になる私たちである。

「王族に番を感じさせなくなる魔道具装着義務を課すなら、精通前がいいと思います。また、あまりに早くても情緒が育ってないので弊害があるかもしれません。何しろ若い実験体がいないので、そこまではわかりません。王族に義務を課すなら、国王陛下にも付けていただくと夫婦仲の改善になると思います」

 ニックの淡々とした説明にテオバルトは真面目に聞き入っていた。

「貴族達に魔道具を付ける義務を課すのはやりすぎか」

 テオバルトがリヒャルトの方に向き直った。

「王族は義務にして、貴族はまず魔力の高いものを義務にしたらいかがですか。あとは希望者で。だんだんと浸透させていけばいいと思います」

「そのあたりは、父上に上申して大臣達とも話し合うために叩き台を作るぞ」

 テオバルトはもう進めるつもりだ。即断即決。その辺りは上に立つものとして当たり前だと私はテオバルトをじっと見ていた。
しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。 まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。 だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。 竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。 ※設定はゆるいです。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...