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しおりを挟むそれは確かに最初は笑い声だった。だが、しばらくすると声がくぐもり、ぽったぽったと音がした。王妃をまじまじと見つめると、滂沱の涙が彼女の膝を濡らしていた。
「母上、どうされたのですか」
王太子が声をかけ、王妃の座っている椅子に近づいた。王妃は近づいて腕を伸ばして来た息子をぐいっと押しのけて、立ち上がり、あふれる涙を袖で拭った。乱暴に拭ったため、目の周りの化粧が崩れてなんとも言えない顔になっていたが、王妃の鬼気迫る雰囲気に誰も指摘することはなかった。
「あなたはそんな魔道具を付けてどうなさるの。愛しい妾に安心させるためにつけるのですか……」
王妃の口から、ぽろっと言葉がこぼれ落ちた。
「私、疲れました。番ではない人間が竜人と婚姻する辛さは身に染みております。なんとか歩み寄りたい、恋人は無理でも夫婦として親として一緒にやっていきたいと思っておりました。でもあなたにことごとく拒否されました。息子ともろくに会えず、あなたにも会うこともできず、王妃とは名ばかり。私は何のために嫁いできたのでしょうか。せめてエレオノーラ王女を私の二の舞にすまいと魔道具開発をリヒャルトに依頼していましたが、どうやら番でなくても、テオバルトはエレオノーラ王女に好意を寄せている様子。ーーーー私はもうこれでお役御免です。戻る国もありません。修道院に向かいます」
淡々と話す内容は目も当てられない。それでも政略結婚ならあり得る内容だった。私のご先祖様の最後はわからないが、きっとこんなふうに思っていたに違いない。
私だってテオバルトが先祖返りで徹底的に拒否してたから、未だに婚姻してないけれど、テオバルトが普通の竜人だったら、きっとこう言う立場になっていた。
青ざめた顔で王妃はふらりと出口に向かった。王太子もそれ以上何も出来ない様で見送っていた。
「待ってくれ!王妃!いやマディ!」
そんな言葉が後ろから聞こえたが王妃は振り返らない。ふらふらと右に左に身体を傾けて出口に向かっていく。
私の側を誰かが急いで走っていく。
「マディ!頼むから話を聞いてくれ」
それは国王だった。それにしてもマディと言うのは愛称よね。愛称で呼ぶ仲なのかと疑問に思った。
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