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第三章 今世
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しおりを挟む私もそのまま侍女を連れて校舎に向かう。侍女を連れて来ない家もあるが、高位貴族になると護衛も連れてきている。
校舎の一角に侍女達がお昼を持って待機する控室があるので、一旦侍女と別れてクラス別が貼り出された入学式が行われる講堂に向かう。貴族しか通っていないため、学院が雇っている使用人はお仕着せを来て、色んな仕事をしている。学院は学ぶ場と言っても、所詮は貴族社会、貴族が自分で単純労働はしないでいい様になっている。
クラス別を貼り出された場所にはすでに人が沢山いた。
AからFクラスまであり、一クラスの定員は20人ほど。成績順で決まり、これは身分で忖度されない。理事長は王族が務めるため、身分でゴリ押しは出来ない様になっている。ここだけは実力主義だそうだ。定期考査で振り分けられて、クラスを落ちたり上がったりとすることも日常だと姉に聞いている。
「おかしいですわ」
「不正が行われているに違いないですわ」
「こんなこと許せませんわ」
「マルティナ様、抗議に参りましょう」
「そうだわ。ルドルフ殿下は生徒会長にお成りになったと聞いてますわ。一緒に抗議に行っていただきましょう」
大きな声で先程の取り巻き二人がマルティナ嬢に口々に訴えている。
目をやるとマルティナ嬢の名前はFにある。さすがに驚いた。経済的余裕のある高位貴族は幼い頃から家庭教師が複数付き、事前に学んでいる。学院ではA、Bぐらいにいるのが普通なのだそうだ。
「私達ですらCですのに、誰か政敵がマルティナ様を陥れようとしているのではなくて」
取り巻きが騒げば騒ぐほど、マルティナ嬢の恥が周りに広まるのがこの二人にはわからないらしい。
マルティナ嬢はと見れば、扇を広げて顔を隠して何も言ってなかった。
後ろから子爵家の子女もやって来始めたので、私も自分のクラスを確認して、講堂に入って行った。後ろではまだ茶番劇の様な騒ぎが続いている。
講堂に入るとすでに新入生達は着席をしていた。壇上には教師らしき人達とルドルフ殿下と制服を着ている上級生らしき人達がいた。
そこに学院使用人がやってきて教師に何か言っている。数人の教師が壇を降りて、クラス別を貼り出された場所には向かった。ああ、まだ騒いでいるんだと思ったが、見に行くわけにもいかない。そのうち新入生が揃い、時間になって入学式が始まった。
それでもマルティナ嬢とその取り巻き二人は入ってこなかった。身分順で座るので、高位貴族の座る最前列に一人だけ空席があるのは目立った。
そしてルドルフ殿下が拡声器の前に立った。
「私が今年度の生徒会長です」
生徒会は入学時の成績順に三~四人、会に入ると聞いている。私の上の姉はAクラスだけれど生徒会には入れなかった。下の姉は生徒会に入り、留学生のお世話をすることになり、玉の輿と言われる結婚をした。
生徒会に入ると高位貴族と知り合う機会も多く、下の姉の様に玉の輿に乗ることもあるので生徒会は憧れだ。
今の生徒会にはルドルフ殿下だけでなく、王弟殿下が臣下に降りられた公爵家の子息もいるらしい。
そうデビュタントで王族のダンスを担当していたあの人だから見覚えがあった。
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