好きだった人 〜二度目の恋は本物か〜

ぐう

文字の大きさ
29 / 43
ミラ編

ミラの二番目の恋

しおりを挟む
 それから日々は単調に過ぎた。マリアンヌは幸い症状が悪化することもなく、エミリアにとって明るい母だ。エミリアの実際の世話はエレナが行い、私はエミリアの教育を担っている。
 できるなら将来エミール様の商会で働けるように読み書きと算術に重きを置いている。
 エミール様はお忙しいらしく、ここには滅多においでにならない。それでもおいでになる時はエミリアにエミリアの好きそうなお土産、私たちには美味しいものをと気を使ってもらっている。
 その日は一ヶ月ぶりにエミール様が訪問されて、エミリアははしゃぎマリアンヌも嬉しそうだった。相変わらずエミール様がマリアンヌに声をかけているのを見るのは辛い。

「今日はミラ嬢にお願いがあって。商会も順調にいって貴族との付き合いも増えました。商会の使用人に貴族の礼儀作法を教える講師をしてほしいのですが」

「いつもお世話になっているので、私でできることならなんでも」

 ああ そうじゃない。エミール様に会う機会が増えるのが嬉しいのだ。引き受けて週に二回エミール様の商会に出向く事になった。



 商会に出向く日が来た。エミール様からの迎えの馬車が来た。エレナにマリアンヌとエミリアを頼んで馬車に乗る。久々の外出だ。王都の中心部に向かうと見たことのある風景が広がっている。十年前は自分がこんな境遇になるとは思っていなかった。王太子殿下に心があっても嫌々ディビスに嫁ぐのだろうと諦めていた。そのまま嫁いで蔑ろにされた方が良かったのか、貴族の身分を失った今が良いのかと比べると今の方がいいに決まっていると思えた。

 そんなことを考えていたら、ヘルマン商会に着いた。まだ新しい商会だが、活気があり人の出入りも多いようだ。エミール様が出迎えて下さった姿を見て自覚した。私はこの人に恋をしているのだと。しかしこの人はいつも穏やかな目を向けてはくれるけれど、熱の篭った目は向けてくれない。複雑な気持ちでエミール様に着いて行く。


「教えていただきたいことは、女性従業員の貴族に対する所作言葉使い全般を。お茶の入れ方などもお願いしたい。男性従業員にも言葉使いが間違っていないかチェックもお願いできますか」

「お茶はエレナを今度同伴しますので、エレナから教えて貰った方が確実です。それ以外は私でも教えることができます」

「ありがとうございます。では今日は女性従業員を手の空き次第向かわせますので、客に対する作法を教えてやって下さい」

 エミール様が一度出て行かれ、女性従業員を二人連れて入ってきた。どんなことがわからないのか聞き、実際の入室の仕方から教えていたら言葉使いは教本があった方がいいことに気がついた。今日はわからないないことを教えるに終始して、家で教本を作ってそれを元に教えたいとエミール様に提案する。

「教本ですか、自習のためにもいいですね。原本を作っていただければ印刷します」

「それで間違ったことを教えるといけないので図書室に行きたいのですが」

「もう私も貴族ではないので王宮の図書室には入れませんが、王都にある有料の図書室になら行けますのでご一緒します」

 エミール様と二人で出歩ける。仕事だけれども胸が高まる。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

東雲の空を行け ~皇妃候補から外れた公爵令嬢の再生~

くる ひなた
恋愛
「あなたは皇妃となり、国母となるのよ」  幼い頃からそう母に言い聞かされて育ったロートリアス公爵家の令嬢ソフィリアは、自分こそが同い年の皇帝ルドヴィークの妻になるのだと信じて疑わなかった。父は長く皇帝家に仕える忠臣中の忠臣。皇帝の母の覚えもめでたく、彼女は名実ともに皇妃最有力候補だったのだ。  ところがその驕りによって、とある少女に対して暴挙に及んだことを理由に、ソフィリアは皇妃候補から外れることになる。  それから八年。母が敷いた軌道から外れて人生を見つめ直したソフィリアは、豪奢なドレスから質素な文官の制服に着替え、皇妃ではなく補佐官として皇帝ルドヴィークの側にいた。  上司と部下として、友人として、さらには密かな思いを互いに抱き始めた頃、隣国から退っ引きならない事情を抱えた公爵令嬢がやってくる。 「ルドヴィーク様、私と結婚してくださいませ」  彼女が執拗にルドヴィークに求婚し始めたことで、ソフィリアも彼との関係に変化を強いられることになっていく…… 『蔦王』より八年後を舞台に、元悪役令嬢ソフィリアと、皇帝家の三男坊である皇帝ルドヴィークの恋の行方を描きます。

その結婚、承服致しかねます

チャイムン
恋愛
結婚が五か月後に迫ったアイラは、婚約者のグレイグ・ウォーラー伯爵令息から一方的に婚約解消を求められた。 理由はグレイグが「真実の愛をみつけた」から。 グレイグは彼の妹の侍女フィルとの結婚を望んでいた。 誰もがゲレイグとフィルの結婚に難色を示す。 アイラの未来は、フィルの気持ちは…

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

嫌われ者の王弟殿下には、私がお似合いなのでしょう? 彼が王になったからといって今更離婚しろなんて言わないでください。

木山楽斗
恋愛
冷遇されていたフェルリナは、妹の策略によって嫌われ者の王弟殿下ロナードと結婚することになった。 色々と問題があると噂だったロナードとの婚約に不安を感じていたフェルリナだったが、彼は多少面倒臭がり屋ではあったが、悪い人ではなかっため、なんとか事なきを得た。 それから穏やかな生活を送っていた二人だったが、ある時ロナードの兄である国王が死去したという事実を知らされる。 王位を継承できるのは、ロナードだけであったため、彼はほぼなし崩し的に国王となり、フェルリナはその妻となることになったのだ。 しかし、フェルリナの妹はそれを快く思わなかった。 ロナードと婚約破棄しろ。そう主張する妹を、フェルリナはロナードの助けも借りつつ切り捨てるのだった。

4人の女

猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。 うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。 このご婦人方には共通点がある。 かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。 『氷の貴公子』の異名を持つ男。 ジルベール・タレーラン公爵令息。 絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。 しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。 この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。 こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。

処理中です...