忘却の檻 〜あなたは誰〜

ぐう

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「信じる?あなたは信じるのに足りる人ですか。マリア嬢がお金について口を滑らさなかったら、仲は続いていたのでしょう?お金のことでお母様に逆らえないのなら、白い結婚で持参金を受け取ってマリア嬢と一緒に暮らしていたのでしょう?そんなにユリアが嫌いなら解放してやって!」

 いろんな気持ちが込み上がってきた。悔しいー悲しいーやるせないー愛されない絶望ーもう嫌だった。もう解放して欲しいとユリアが胸の奥から叫んでる。人を愛するのはもう懲り懲り。目の前のこの人が憎い。大嫌い。もう我慢なんてしたくない!
 涙がぼたぼたと膝の上にこぼれて小さな染みが大きくなって広がっていく。

 慌てたようにレオンハルトが近づいてきた。

「すまないなんて言葉では償えないのはわかってる。狡猾な女に騙された愚かな男なんだ。でも愚かなプライドを投げ捨てた時あなたへの愛が残った」

「嘘つき」

「嘘じゃない。薔薇園で出会ったあの時からずっとあなただけだった」

「それをもっと早くユリアに告げてくれれば、ユリアも違う気持ちになれたのかもしれませんね。今私のなかに残ってる気持ちは悔しいー悲しいーやるせない そして絶望です。あなたのことをユリアは諦めたようです。あなたが何を言ってももう手遅れなんです。記憶を失ったのもユリアがあなたとのことを忘れてしまいたいと思ってたからかもしれません。マリア嬢は愛人だとそんな噂を立てるほどまだあなたに未練があるのでしょう。だったら復縁されたらどうですか」

 畳みかけて言い募る私を見てレオンハルトは絶望したように顔を伏せてた。

「マリアはもう牢の中だ。窃盗と公爵夫人を殺害しようとした罪で裁かれる。あの女とはもう二度と会わないし、気持ちを寄せることなどない」

「窃盗?殺害?」

「そうだ。あの女は私の留守中に私の妻になるんだからと制止する使用人を罵倒して二階に上がった。あなたの宝石を漁っている時に丁度戻ってきたあなたと鉢合わせして、あなたと口論になった。そして」

「そして?」

「あなたを階段から突き落とした。使用人がすぐ取り押さえて、商会にいた私を呼びに来た。あなたはすでに意識不明で執事が医師を呼んでいた」

「そして私は目覚めたら記憶がなかったのですね。なぜマリア嬢は乗り込んで来たのでしょうか」

「マリアは学園卒業後金満家で有名な20歳年上の商人と結婚したが、雇い人と不義密通をして離縁された。噂で我が公爵家が持ち直して裕福になったと聞いて、昔の私を思い出してよりを戻そうと思ったらしい。私の妻がユリアだと知って、昔通りに横取りできると乗り込んで来たと自供した」

 自信があったのね。それくらいレオンハルトはユリアを疎んじていたわけだ。
 好きなのはあなただけ、婚約者なんて勝手に決められた女で可愛げもないから愛情もない。と普段から愛を囁いていたのだもの、地味で平凡なユリアから簡単に奪い取れると踏んだのね。
 ああ、馬鹿らしい。お金目当ての女にすら私は下に見られて、こけにされていた。
 全てこの男のせい。憎くて憎くててたまらない。
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