忘却の檻 〜あなたは誰〜

ぐう

文字の大きさ
21 / 50

21

しおりを挟む
 目が覚めるとレオンハルトの美しい顔が目の前にあった。

「寝てないの?」

「少しうとうとしたけど、あまり寝ていない。寝たらいなくなってしまいそうで。もう絶対手放さない」

 なんだろう。甘い言葉でユリアは嬉しいはずなのに、心に染みない。こう言う甘い言葉を他の女にも言っていそうだ。信用できないなんて寂しい事だ。好きなのに信じられない。

「五年間も夫婦でいて夫婦でなかったのは、マリア嬢に未練があったのか、ほかに好きな人がいたの?」

 レオンハルトが起き上がって、ユリアを抱き上げた。お互い全裸だ。ユリアは慌てて上掛けを自分の身体に巻き付けた。その上掛けをレオンハルトは無理矢理引き剥がして全裸に戻して、自分の身体にぴったり密着させた。

「結婚式と言っても身内だけ、しかもあなたの兄は反対して出席しなかった。そんな結婚式だったけど、ウェディングドレスを着たあなたは綺麗だった。でも始終俯いて目を合わせてくれなかった。あなたに学園でのこと、卒業パーティーのこと謝ってこれから夫婦としてやっていきたいと話すつもりだった。ユリアの待つ夫婦の部屋にすぐ行きたいのに、母にユリアに頼めと金の話ばかりされて口論になって夫婦の部屋に行った時は真夜中だった。当然疲れてたあなたはもう寝ていた。寝ているあなたに手を出すわけにはいけないと隣で寝たのに、朝目が覚めたらあなたは居なかった」

 ユリアを抱きしめる力が強くなる。

「慌てて執事に聞くと、朝早くあなたは領地に旅立ったと言われた。慌てて追おうとしたら母が倒れた」

 レオンハルトがユリアの首に顔を埋めた。

「神経からと医師に言われたから、落ち着かせて領地へ行こうと思っていたが、母が私が王都から離れるのを許さなかった。病気の母を見捨てるのかと言われた。仮病なら手を振り払って領地に行った」

「仮病じゃなかったのね」

「そうだ。だんだん弱って来るので、看病せざる終えない。ユリアのことは気になって手紙は書いた。いつも返事はお気遣いなく。お大事にという簡単な内容だった。母に一度領地に戻ってユリアを連れて来たいと願った」

 レオンハルトは一瞬黙った。

「願ったらどうなったの」

 先を促すとレオンハルトは顔を上げた。

「母は弱って食事も取れないほどだったのに、ユリアはお飾りでいいと言い始めた。持参金が入ったからもうユリアはいらないと。愕然とした。自分の母がこんな人だったなんて。ユリアは母から暴言をかなり吐かれていたようなんだ。お前は所詮お飾りだと。それを聞いて今度こそ母を見捨てて領地に向かおうとしたら、危篤になった」



しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

(完結)婚約者の勇者に忘れられた王女様――行方不明になった勇者は妻と子供を伴い戻って来た

青空一夏
恋愛
私はジョージア王国の王女でレイラ・ジョージア。護衛騎士のアルフィーは私の憧れの男性だった。彼はローガンナ男爵家の三男で到底私とは結婚できる身分ではない。 それでも私は彼にお嫁さんにしてほしいと告白し勇者になってくれるようにお願いした。勇者は望めば王女とも婚姻できるからだ。 彼は私の為に勇者になり私と婚約。その後、魔物討伐に向かった。 ところが彼は行方不明となりおよそ2年後やっと戻って来た。しかし、彼の横には子供を抱いた見知らぬ女性が立っており・・・・・・ ハッピーエンドではない悲恋になるかもしれません。もやもやエンドの追記あり。ちょっとしたざまぁになっています。

セラフィーネの選択

棗らみ
恋愛
「彼女を壊してくれてありがとう」 王太子は願った、彼女との安寧を。男は願った己の半身である彼女を。そして彼女は選択したー

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

処理中です...