忘却の檻 〜あなたは誰〜

ぐう

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 次の朝はレオンハルトの遠慮会釈のない行為のおかげで、爽やかな朝と言うわけにはいかなかった。それより朝起きて唖然としたのは身体中に散らばる鬱血痕。

「レオンハルト これ 酷くない?恥ずかしくて侍女に世話してもらえないわ」

 レオンハルトはニコニコしている。

「夫婦仲がいい証拠だよ。ノンナなら気にしないよ」

 呆れたものだとユリアは気怠い身体を鞭打って、ノンナに首まで詰まった服を着せてもらった。
 それでも何とか馬車の用意をして王都に向かった。その日はよい天気で青空が広がり馬車の窓からの景色も見応えあるのに、レオンハルトはユリアしか見てなかった。

「ねえ レオンハルト なぜそんなに見つめるの?」

「見たいから。若しくはいなくならないように見張ってる」

「同じ馬車に乗ってるのに?意味がわからないわ」

「わからなくてもいいんだよ」

 そんな会話を交わしていると、同じ馬車に乗って控えているノンナが気になる。今までと全く違うユリアとレオンハルトを見て、どう思っているのだろうか。ユリア自身も思い出した学園時代のレオンハルトと全く違うレオンハルトに戸惑っている。愛してるとか好きだと連発するレオンハルトを全て信用してはいない。何か目当てがあるのではないかと勘繰ってしまう。それは仕方ないのだ。レオンハルトの仕打ちはそれほど酷いものだったのだ。


 そんなことを考えていると、ノンナが開き窓を全開にして言った。

「お嬢様 エーレンフェスト家の別邸が近付いて参りました」

 開き窓から見る別邸は何故か懐かしかった。

「懐かしい」

「お嬢様のお母様の嫁入りの持参金でしたのでお嬢様に譲られています。お小さい頃はここでお過ごしになったこともあります」

「私も来た事がある。ここの庭は広くてユリアとクラウスと隠れんぼをしたことがある」

 驚いた。そんな時代もあったのだ。びっくりしてじっと見つめてしまった。それに気がついたレオンハルトが口を歪めて言った。

「そんな時代もあったよ。一人っ子だったからクラウスと君の仲がいいのもうらやましかった。裕福で家族みんなで仲の良いユリアが羨ましかった。金・金と騒ぐ母が疎ましくて正反対の家族しかいない自分が惨めでいつの間にかエーレンフェスト家からユリアから遠ざかってしまった」

 そして視線下げて

「意地を張らずにそのまま仲良くして馬鹿な暴言を吐かなければ、ユリアはそばにいてくれたのだろうか」
 
 ポツリと言った。

「あら 学園時代の浮気が抜けてるわ。浮気があったのではユリアはそばにはいられないじゃない」

 レオンハルトが頭を両手で抱えて

「その通りだ」

 と言った。それにしてもこんなに攻撃されてもレオンハルトはなぜ付いて来るのかしら。

「公爵様 奥様 着きました」

 御者が外から声を掛けてきた。

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