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宰相令息と侯爵令嬢
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しおりを挟むそれからレイチェルは第二王子にまとわりついているのに、隙を狙ってはカイにも抱いてもらいたがるようになった。
「アルベルト様は前戯少ないし、ワンパターンでつまらないの」
レイチェルはカイに対しては純潔を第二王子に捧げたとかいうお芝居は放棄していた。第二王子がダメならカイか騎士団長の息子と結婚したがっていた。そんな思惑はカイから見るとお見通しだったのだが。
卒業パーティーが近づきライラに衣装と装身具を贈るために一度実家に戻らねばと思って第二王子の控室にいたら、茶番劇が始まった。
レイチェルが第二王子に卒業パーティーでエスコートして欲しいとすがりついたのだ。予想した通り拒否されて泣き喚いた。その姿を見て醜いなとカイは思った。卒業後レイチェルを愛人にしようと思っていたが、感情が冷えるのを感じた。ライラと比べる価値などこの女にはないだろう。在学中の遊びで終わりだ。
出て行く第二王子に従って出て行こうとしたら、我に帰ったレイチェルが騎士団長の息子にすがりつくのが見えた。
自分は三番目か。レイチェルをいらないと思ったのに自尊心が傷ついたような気がした。
まあ、あの女とはもう関わらないでいようと、第二王子に実家に行くと伝え、実家に出向いた。
実家に着くと執事にたいそうびっくりされた。ちょうど学院に呼び出しの手紙を届けたところだと言う。行き違いになったのだろう。父親が話があるのだと言う。
父親が王城から戻るのを待つ間に執事にライラに衣装と装身具を手配するように伝えた。執事が困ったような何か言いたげな顔をした。そこに久しぶりに会う弟が来た。
弟は年子で学院に在学中だ。卒業生はすでに授業が終わっているが、在学生はまだ授業があるはずだ。どうしたのかと聞くとやはり父親に呼び出されたとのこと。
夕食の時間にやっと戻った父親が弟とカイを呼んだ。
「ライラ嬢とカイの婚約は解消された。卒業パーティーにもカイがライラ嬢をエスコートする必要もない」
あまりな内容に動揺したカイは立ち上がり
「どういうことですか!私は婚約を解消するつもりはありません!」
「お前になくとも、ライラ嬢の方にある」
「これは政略結婚だから個人のいい悪いなど!」
「確かにそうだな」
「だったらなぜ解消など!」
「お前はライラ嬢に何を言った。弁えろと言ったそうじゃないか。婚約者が学院で女遊びをしても、ライラ嬢には何も言う権利はないと言ったも同然だな」
グッと言葉に詰まった。レイチェルとのことがばれている。隠していたはずなのにどうしてだ。
「お前、今どうして発覚したかと思っただろう。さすがに我が家だけだったらお前の所業を全て知ることはできなかったがな。お前と騎士団長の息子にとって運の悪いことには、遊んだ女が第二王子の慰み者だったらということだ。国王の直属の監視員から全て報告されてお前らの調査書が各家に渡された」
「た 確かにその女と関係のあったことは認めます。でもそのぐらいで同程度の爵位の家で相手側から婚約を解消できるのですか!」
「お前は同程度というが一つ忘れている。現国王の王妃の出身家はどこだ?」
「あ」
血の気が引いた。第二王子の兄の国王の寵愛深い王妃はライラの伯母だ。侯爵家から王太子妃を出すことに反対もあったが、王太子がぜひにと願って婚姻を結んだ。早々と王子を二人挙げたことにより、王妃の地位は盤石となっている。
「王妃は姪のライラ嬢を可愛がってる。そのライラ嬢から婚約者が浮気しているから婚約を解消したいと王妃に願い出たのだ。わかるな。我が家の恥だ。国王は側妃はこの先も置かず王妃一人と宣言するほど王妃を寵愛されている。その王妃に睨まれたのだ。私は国王に辞表を出したが、それには及ばないとのことで我が家はお前を廃嫡する。卒業後は領地に下り、領地の代官の見習いをしろ。王都に戻ってくるのは許さん。弟が後継だ」
弟のアレックスがびっくりした顔でカイを見ながら言葉を発した。
「え 廃嫡など。父上嘘でしょう?」
「嘘だったら良かったのだがな。冷静に物事を見るカイに期待をしていたのだ。女で踏み外すとは思いもしなかった。大体ライラ嬢のどこに不満があったのだ」
「不満などないです。結婚するつもりでした。自分の隣を任す相手はライラだと思ってました」
「兄上 兄上はライラ嬢が学院にいないことご存知でしたか」
それまで黙っていたアレックスが口を挟む。
「いない?いないとはどういうことだ?」
「やっぱりご存知なかったのですね。今の話を聞いて納得がいきました。弁えろとか言って婚約者を蔑ろにして、入学したかどうかも知らないなんて解消されるはずです。ライラ嬢は私の一つ下です。入学式からクラス編成に名前がないことに気がついて、一年生の妹がいる同級生に聞いて貰ったりしたのですが、入学していないと」
弟ですらライラのことを気にかけていた。私はライラとの仲は万全だと思ってなんら努力をしなかった。そのつけがこれか……
もうライラには会えないのか。それが胸を掻き毟るほどつらい。ライラが自分の隣に立つことは当たり前だと思っていた。絶対にライラと結婚することができると思っていた。ああ この世に絶対などないのだ。私はライラを愛していたのだな。
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