悪役令嬢が死んだ後

ぐう

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 ここ王国の貴族の子女が通う唯一の王立学園の園長室の室内で視察に訪れていた第一王子フェリクスと園長が対峙している。
 園長はソファの後ろにずらりと並ぶ護衛に目をやった。フェリクスは園長を強い視線で睨みつけた。

「今回の事件は第二王子アルベルトの婚約者が被害者だ。国王に第一王子である私に捜査権を委ねていただく様に上申してある。園長は先程から煮え切らない返事しかしないがなにか不服があるのか。はっきり言っていただこう」

 フェリクスとのやり取りに消耗した園長は青ざめた顔をフェリクスに向けた。

「不服などありません。全ての権限をフェリクス殿下に移譲いたします」

「結構 それでは尋問に使う部屋を提供してくれたまえ」

 園長はすぐそばに控えていた園長の側仕えに『用意するように』と申しつけた。そして意を決した様に顔を上げフェリクスを見つめて言った。

「フェリクス殿下 今回のことにはきっと第二王子殿下から横槍が入ります」

 園長は最後の砦の第二王子の名前を出す。

「なぜだね?被害者はその第二王子アルベルトの婚約者だ。婚約者の無念は晴らしたくないと言うのか」

「いえ 加害者として捕まった男爵令嬢が問題なのです。学園で第二王子殿下 宰相子息 騎士団長子息 公爵子息が集まってまるでその……」

「ハーレムを築いていると言いたいのか。第二王子の学園での振る舞いはこちらにも情報は届いている」

「それがその、教師も加わっておりまして」

「情け無い。いい大人が小娘のハーレムに加わってるとは」

「きっとハーレムの面々は男爵令嬢の救出を画策すると思います」

「だからこそ私が必要だろう。その面々を押さえつけるために。園長 その情け無い教師の名前は?」

「……ダニエル・アンカー アンカー伯爵家の三男です。爵位は持っておりません。男爵令嬢が入学してから試験の問題を彼女に漏らしていると言う疑惑がありまして調べていたのですが、妨害が入りまして…」

「妨害を入れたのは第二王子か」

「左様でございます」

「ではその教師を裁く権限も頂こう」

「証拠はこちらにあります。お持ちになって下さい」

 園長の側使えがフェリクスの護衛に嵩張る封筒を渡した。

 園長を一瞥してフェリクスは立ち上がり、護衛を引き連れて園長室を出て、側使えが案内する尋問する部屋に向かう。


「加害者の男爵令嬢はどこに収監した?」

 フェリクスが己の側近の一人のアランに尋ねた。

「学園ですから牢はありません。唯一しっかり鍵のかかる反省室に入れました。錯乱しておりますので中には女騎士を配し、出入り口と窓には近衛を三名配置しました。位の高いものが権力で加害者を奪還に来るかもしれないと忠告を受けたので、公爵令息で近衛第一副団長のマークス・マッテンハイマーがその場合の対応を引き受けてくれました」

「被害者の公爵令嬢の家族には連絡したか」

「はい。デングラー公爵は王宮にいらしたので、陛下に報告後こちらに向かっておられます」

「確か学園には義弟がいたのでは無かったか?」

「おりますが義姉の死を嘆くより、加害者の男爵令嬢が無実だと喚いているだけで全く役に立ちません」

「他に家族はいないのか」

「母親は早くに亡くなり、公爵は後添えを貰っていません。これから参考人の事情聴取をいたしますが、殿下が直々にされるのでしょうか」

「そうだ。第二王子の婚約者が殺されたのだ。私が視察の日であったのも何かの縁だ。冥福を祈るためにも私が真実を彼女に捧げよう。デングラー公爵令嬢の遺体はどうした?」

「保健室のベッドに安置いたしました。デングラー公爵に死顔を見せてから死因の詳細を医師が解明する手配にしてあります」

「素人が見た限りは転落死だが胸に刺し傷があったな」

「加害者が血のついたナイフを握りしめておりました。詳細は目撃者に聞きましょう」

「筆記をする文官は呼んであるか?」

「先程名前が出ておりましたアンカーと言う教師が筆記をすると立候補しましたがその教師は加害者の男爵令嬢を崇拝していると情報を得ましたので、却下して王宮から至急呼びました。到着までは私が記録いたします」

 フェリクスと護衛は物陰から見詰める沢山の視線を無視をして尋問に借りた教室に入って行った。
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