私の好きな人はお嬢様の婚約者

ぐう

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終幕 ジェシカ

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「ジェシカ、君はいつまで学園にいるんだい?」

「お嬢様がすでにいらっしゃいませんので、卒業式の準備終わりましたら領地に帰省いたします。」

 自分で思ってるよりずっと冷たい声が出ました。私がお慕いしたフレデリック様はこの世のどこにもすでにいらっしゃいません。丁寧に腰をかがめて頭を下げて、使用人の礼儀を尽くして立ち去って来ました。
 私のことなど今更気になさってどうするのでしょうか。先程も第一王子殿下と男爵令嬢と三人で楽しげにしてらっしゃいましたよね。


 それからフレデリック様が私に声をかけることはありませんでした。私は卒業式の段取りを終えるとその足で帰省いたしました。
 しばらくぶりの休暇を堪能していると、王都で学園を舞台にした政争があったと伝え聞きました。詳細はこんな田舎まで伝わらないのですが、第一王子殿下の立太子を阻むため、第二王子殿下派閥の貴族が色仕掛けで第一王子殿下を陥れようとして、反対に返り討ちにあったとか。




 お嬢様からお手紙をいただきました。学園へ次の学年に戻るより早く、侯爵家に逗留して欲しいとのこと。
 数ヶ月ぶりにお嬢様にお会いしました。少し痩せられたようですが、縦ロールをやめられてストレートに流している髪型はとてもお似合いでした。

「何から話せばいいのかしら。政争があったのは聞いてる?」

「はい お嬢様」

「あの男爵令嬢は偽物で男性を誘惑するのに使われる女だったの。色仕掛けで第一王子殿下とフレデリックに迫って婚約まで持ち込んだところで、下賤な女に狂って王に反意を持ったとして王位に相応しくないと第二王子派閥の貴族が兵を連れて乗り込んで来る予定だったそうよ。二人ともあちらのすることを知っていて、色仕掛けに掛かった振りをして偽男爵令嬢にいろいろ吐かせたそうなの。第一王子殿下の方も近衛を潜ませて置いたから、乗り込んで来た第二王子派をあっという間に平定したそうよ。学生達に被害がなくてよかったわ。第二王子とその母の第二妃と親元の公爵家が処刑されたわ」
 
 お嬢様が一気に説明されて黙ってしまわれた。外に向かって開かれたテラスまで歩いて行かれたのでお供いたしました。
 テラスから中庭に出ていくと、四阿にフレデリック様がいらっしゃいました。
 訝しく思いお嬢様に視線を向けると、悪戯が見つかったようなお顔をされました。

「ごめんね。ジェシカ あなたを騙していたの」

「どういうことでしょうか お嬢様」

「私が好きな人は第一王子殿下なの。フレデリックとの婚約は仮だったの。数年前第一王子殿下と隣国の王女様の婚約が成立しそうなときに急に横槍が入って駄目になったことおぼえてる?」

「…はい」

「第二王子の祖父の公爵が隣国に手を回して、王女様を他所の国に嫁がせてしまったの。公爵は第一王子殿下に後ろ盾を作らせたくなかったのね。しばらくして私が候補に上がったけど、また横槍が入るといけないので、側近候補で私の幼馴染のフレデリックと婚約してることにして隠したの」

「お嬢様があんなにお辛そうだったのは」

「第一王子殿下にあの偽男爵令嬢がべたべたするのだもの。殿下も嫌がらないし、不安になってしまって」

「お嬢様は偽りだとご存知なかったのですか」

「何かあるとは聞いていたけど、まさかあんなことだとは知らなくて。本当に辛くて、ジェシカにもいっぱい心配かけてごめんなさいね」

「仮の婚約なのにわざわざ解消を侯爵様に願ったのは何故ですか」

「……それは私がいつも言ってたゲームの話からなの。ヒロインが現れて私が婚約破棄されて断罪されるって。フレデリックと婚約してたら婚約破棄されて断罪されると思ってお父様に婚約解消をお願いしたけど、今回のことは第一王子派の我が家とフレデリックの家は承知の上だったので、すでに仮婚約は無かったことにされてたの」

 お嬢様はすまなそうに眉を下げられました。

「だから 振り回してごめんなさい。それでフレデリックからジェシカに話があるそうなの。聞いてやってくれる」

「げえむのことはよくわからないのですが、お嬢様が今幸せを感じてらっしゃるなら、私は何も申し上げることはございません。お嬢様に言葉を返すようで申し訳ないのですが、私のような使用人がランセル侯爵令息様とお話しすることなどありません。失礼して荷物をとかせていただきます」

 お嬢様に礼をして室内に戻ろうとしたら、フレデリック様が追いかけていらっしゃいました。
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