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思わぬ牽制

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ララの家から帰ってきたメリーとサムはテーブルに向かい合わせで座り一息をついた。
七歳になる息子はまだ戻って来てはいないので気遣うものは何も無い。

「ララがちゃんとリックにやり返してやれて良かったわ~。」

「あ、ああ…そいだね。」

「何よ。何か不満?まあ、サムからしたらリックへの同情もあるのかしら。」

「ど、同情している訳じゃないよ。」

サムのハッキリしない態度にメリーは呆れた顔を向ける。
男女の考え方の違いなのか、あるいは別の理由なのか、どちらにしてもメリーには息子が帰ってくる前にサムに話しておかなくてはいけない事があるので話しを進める事にした。

「あのね、私のお腹に二人目がいるみたいなの。」

「ほ!本当か!!」

「ええ。ちゃんと診てもらってるから間違いないわ。」

「ああ…メリー!愛してるよ!!」

「私もよ。だから貴方の一時の過ちを許すわ。」

その言葉にサムは身を硬くしてメリーと目を合わせた。
メリーは笑顔でサムを見返すがその目は笑っていない。
何か言わなければと思いながらもサムの喉は何かがつっかえているようで言葉が出てこない。

「ララに頼まれてメリッサのところに行って疑問に思わなかった?何故メリッサのところに行くように言ったのか。何故ミグの父親を連れて行ったのか。メリッサはととっても詳しかったでしょ?」

「い、いつから…。」

「少なくとも今日明日では無いわね。私とっても悩んだのよ?あ、リックの件はメリッサもララに話そうとしてたところだったの。先に現場見ちゃったけど。」

頭を強く殴られたような衝撃を受けたサムは椅子から立ち上がるとメリーに土下座の姿勢をとった。
サムはリックみたいにミグに溺れている訳では無い。愛するのは家族のみ。ミグは安い娼婦のような存在で都合よく使っていたにすぎない。メリーはきっと理解してくれたからララに便乗しなかったのだとサムは信じた。

「メリー、すまなかった!もうしない!!金輪際あの店にも行かない!!!」

「そうね。でも許すのは今回だけだからね。次が無いこと忘れないでね?」

「もちろんだ!神に誓う!!」

「結婚の時に誓ってコレだもの。誓わなくていいわ。」

話が終わった直後、タイミング良く息子が帰ってきて二人はドキリと心臓は跳ねた。

「ただいまー。父さんそんな格好でどうしたの?」

「あ、ああ、おかえり。ちょっと腕立てでもしようと思ってな。」

「ここで?ふ~ん…。変なの。」

「ハ…ハハ…。お前もやるか?」

「やるわけないじゃないか。僕はそういうのはお断り!」

「…だよな。」

サムは誤魔化す為にその場で数回腕立て伏せをするとそそくさと部屋に入っていった。
メリーはその様子を黙ってみながら心の中で再びララに感謝をし、伸びをすると椅子から立ち上がった。



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