ビターバレンタイン

聖 りんご

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前編

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私、水島 ほのか の初恋は叶いそうも無い。
何故なら彼が私を女の子として見ていないから。

「ほのか~もうすぐバレンタインだけどどうすんの?高三のバレンタイン、高校最後のバレンタインだよ~。」

「友里…。」

バレンタインまで二日と迫った今日。
昼休みに友里から切り出されたバレンタインの話。
私は毎年本気の恋心入りの義理チョコを幼馴染の金田 亨にあげている。その事を知ってる友里の目は早く告ってしまえと言っているからゆっくりと視線がそれてしまう。

「まったく…亨(とおる)君がモテるの知っててコレだもんね……。いい?ほのか、今年告白しないと大変な事になるよ。」

「大変な事?」

「そう。今年で亨君は卒業なの。だから亨君のファンクラブ通称【水島ほのかの玉砕を待つ会】で告白が解禁されたわ。」

「変な通称つけないでよ…。告白が解禁って今までだってたくさんの人からチョコもらってたよ?」

「あれは規定内に修めたギリ義理チョコ。今年は本気度が違うのっ!今年はね…告白する子だけが手作りして手紙を一緒に渡すの。それ以外は渡す事も許されないわ。」

「……ほ、本当に?」

頷く友里に私は周りの本気を悟った。

私の片想いの相手、金田 亨はとてもモテる。
可愛い系の顔だけど殆ど笑わない亨は一見無愛想で取っ付き難いけど、優しいし女の子にも紳士的でサッカー部のゴールキーパーをしていて勉強も出来て…たまに見せる笑顔の破壊力が凄い。

私は家が隣りで幼稚園の頃から一緒だから耐性があったけど、中二の時に階段から落ちそうになった私を抱きとめてくれた亨の力強さと筋肉のついた腕にドキドキして意識し始めて恋してるって気がついた。

だけど振られたら気まずいしなんか恥ずかしいってしてたら告白出来ずに五年目突入。本当に自分が嫌になる…。
一応毎年バレンタインにはチョコを渡しているけど自己申告で義理って言っちゃう意気地無しぶり。
だけど、今年そうも言ってられないかな……。

決めた。

「私、バレンタインに亨に告白する。そしてキッパリ振られて次に進むっ!」

「何故振られる前提かなぁ…。」

「だってただの幼馴染だって言われたし。」

「中学の頃に男友達との会話盗み聞きした時の話ね。」

「いつも頭クシャクシャって撫でてくるし。」

「照れ隠しね。」

「毎年チョコ渡すと義理を強調されるもん。」

「それはアレがヘタレなだけ……。まぁ、告白する気になったなら良かったっ!頑張ってね!!」

今年は何作ろうかな…亨は実はあまり甘いの好きじゃなかったりするんだよね。
去年までは甘さ控えめにしたガトーショコラをあげてたから…今年はショコラオランジュタルトにしようかな。


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