リンバース公爵領の教会で

聖 りんご

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娘を思う父親

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司祭は迷える子羊の為に小窓を開けました。

「改心を呼びかけておられる神の声に心を開いてください。神のいつくしみに信頼して、あなたの罪を告白してください。」

「はい。私には大切な自慢の娘がおります。しかし私は権力に逆らえず、娘が望まぬ者を婚約者候補にしてしまいました。」

(この方は娘さんを本当に愛してるのですね。お可哀相に。)
司祭には娘はいないが、この父親の必死さに心を痛めた。

「娘には、どうやら想い人がいるようで…それなのに婚約者候補をだなんて私は酷い父親です。」

(なんて清らかな方でしょう!神よこの方に救いはないのでしょうか!!)
司祭は父親の娘への想いに感動した。

「婚約者候補の方々は世の女性には人気の高い方なのです。しかし、私は婚約者候補を排除する為に行動する事にしました。」

(ん?何やら雲行きが怪しい……?)

「候補は二人で一人はただの隠れ蓑なので問題ありません!もう一人をどうにかすれば良いのです!!
彼は脳筋だからきっと上手く罠にはまってくれるに違いありません。
彼に好意を持った女性に協力させてハニートラップでもかければ一発ですよ!後はそのタイミングを間違えないようにさえするば、娘は救えます!!」

(さっきまでの清らかさは何処へ行ったのでしょうか……ぜひ、戻って来て下さい。娘さんへの愛は素晴らしいですが、婚約者候補の方に対しては恐ろしいですね……止めたいところですが……)
司祭は一変した父親に心が沈んだ。

「神様、どうかこの愚かな私めを許しください。そして娘の為に、ハニートラップが成功するようお力をお貸しください。」

(ぇ。神に御力添えを願いました?それは流石にダメですよ…困った方ですね。)

「迷える子羊よ。貴方の娘を想う心は美しい。しかし、相手を貶めるのは罪深き事です。神はそれをお許しにはならないでしょう。」

「そうですか……ですが神様、私は自身に天罰が下ろうと意思は変わりません。」

「それは残念な事です。今は…とりあえず祈りましょう。」

「神よ、罪深き私をお許し下さい。願わくば、娘にはさそのお心を……」



「神が貴方に許しと平和を与えてくださいますように。私も共に祈りましょう。」

「「アーメン」」

「ありがとうございました。」


懺悔室の扉が開かれ迷える子羊が出ていくと、司祭は何とも言い難い気持ちになりました。

きっと立て続けに懺悔をきいて疲れてしまったのだと自分に言い聞かせ、司祭も懺悔室を後にする。

外に出ると、眩しい太陽が司祭を暖めてくれた。
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