おまじないしたら恋の妖精さんが出てきちゃった。わたしのお願い叶えてくれる?

みにゃるき しうにゃ

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標準語訳?

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 次の日から、ふみかはいつもの場所には姿を見せなくなった。当たり前なんだろうけど、ちょこっと寂しい気もする。

 登校中にばったり会うということもないところをみると、たぶんふみかはいつもより早めに家を出てるんだろう。そのくせ教室には遅刻ぎりぎりまで入って来ない。

「俺らが言える立場じゃないけど、ふみか、早く元気になるといいな」

 タカキも淋しそうに言った。

「うん。前みたいにとはいかないだろうけど、早く普通にしゃべれるようになれればいいね」

 仕方がないことなんだろうけど、あれからタカキも元気がない。せっかくわたし達、付き合いだしたのに二人でいてもなんか暗い。

 タカキもそれが分かってるからか、時々わざとふざけてみせるの。それだからわたしも、それ見ておおげさに声たてて笑う。

 でも、やっりなんか淋しい。

 タカキがいない時に、時々ふみかに声をかけてみる。ふみかはぎこちない笑顔で答えてくれるんだけど、やっぱり前のようには喋ってくれない。

 帰り道、タカキにそのことを言ったら深いため息をもらした。

「仕方ないよな。俺が悪いんだし」

 落ち込むタカキにかける言葉が見つからない。ほんとはタカキも悪くないのに。

 わたしもうつむいてしまっていたら、タカキが急にパンっと背中を叩いてきた。

「ふみかには悪いけど、俺らが落ち込んでてもなんにもならない。だから元気出そうよ」

 にかっとタカキが笑顔を作る。その言葉と笑顔に、なんかすごく励まされた。

「そうだよね。ふみかを泣かせてまでわたし達付き合い始めたのに、わたし達まで暗くなって落ち込んでたら意味ないじゃんね」

「おう」

 わたしも笑顔をタカキに見せてあげたら、タカキも安心したように笑った。

「そうそう、それでな。今度の日曜、水族館行かないか?」

「水族館?」

 いきなりのタカキの誘いにびっくりした。これってデートのお誘い?

「行く行くっ」

 嬉しくて勢いこんで返事した。それ見たタカキに笑われてしまったけど、ほんと嬉しいから腹も立たない。勝手に顔がにやけてとまらない。

「それじゃあ、日曜日十時にお前んちに迎えに行くんでいい?」

「分かった。十時だね」

 タカキに満面の笑みを向けて答えた。

 初デート! 嬉しい! 考えただけでドキドキする。十時、忘れないようにしないと。

 嬉しそうなわたしを見て、タカキも嬉しそうに笑った。



 土曜はバタバタ大変だった。デートに何を着て行こうかってあれこれ服を引っ張りだして。お母さんにおねだりして、服は買ってもらえなかったけど新しいヘアアクセ買ってもらって。夜になってもこのアクセ付けるんならこの髪型がいいだろうかとか、この服にこの髪型は合わないからやっぱり服を変えようかとか、さんざん迷いまくった。

 ふと、もしふみかとこんな事になってなかったら、一緒に買い物に行ってもらったり服やら髪型やら選んでもらえたのにって頭に浮かんだ。それを考えるとちょっと淋しい。一番の仲良しだったから、ふみかとは女の子同士でしか話せないこといっぱい喋っていた。

 だけどもう、ふみかとそういう話は出来ない。でも、仕方ないよね。二人ともタカキを好きになってしまったんだもの。

 暗くなってしまった気持ちを洗い流したくてお風呂に入ってシャワーを浴びる。いつもより長めに丁寧に体中をピカピカに洗った。

「デートか。順調にいってるみたいだね」

 お風呂からあがって部屋に戻ると、ひょこっと妖精さんが顔を出してわたしを見た。

「うん。そうなの。あ、ねぇねぇ。明日この服着ていこうと思ってるんだけど、どう? 変じゃないかな?」

 選んだ服を体に当てて妖精さんに見せる。お母さんにも聞いてみたけど、ここはやっぱり男の子の意見も聞いてみたいから。て、あれ? タカキの顔してるからそう思い込んでたけど、妖精さんって男の子なんだろうか?

「うん、よく似合ってるよ。かわいい」

 にこりと妖精さんがタカキの顔をして笑う。

 ほっぺたがぼあって熱くなった。タカキじゃないって分かってるけど、ドキドキする。

「あああ、ありがと」

 動揺してしまってどもってしまった、恥ずかしい。だけどわたしの反応を見て、妖精さんもちょっと照れたみたいだった。

「ところで、あれから何か問題は起きてない?」

 慌てて話題を変えようとしたのか、妖精さんが言う。

「問題? んー。そりゃ、ふみかのことがあったから二人でいるとどうしてもそのこと思い出して暗くなるけど、それ以外は特に問題ないよ?」

 明日はデートだしねって言ったら妖精さんも笑って頷いた。

「それじゃあ、このままあと三日なにも問題なければアフターケアのサービス期間は終了ってことでいいかな?」

 そう言われると、ちょっと不安になる。けど、いつまでも妖精さんにたよってられないよね。

「うん、大丈夫。色々ありがと。あと三日よろしくね」

 お礼言ったら妖精さん、ちょびっと寂しそうな顔になった。タカキと同じ顔でそんな表情されたら、こっちまで寂しくなるっていうか、胸がきゅんとするっていうか。

「それじゃ、そろそろひっこむよ。あんまり夜更かしさせて明日のデートにひびいちゃいけないから」

 笑顔に戻って妖精さんはバイバイってした。

「うん」

 わたしもバイバイってして、アフターサービス期間が終わっても良かったら遊びにおいでよって言おうとしたけど、その前にあみぐるみはただのうさぎの顔になった。呼びかければまた出てきてくれるのは分かってたけど、わざわざ呼び出して言うほどのことじゃないから、そのままわたしは広げた服をしまい始めた。



 パジャマに着替えて、さあ寝ようってベットの中に入ったけど、明日はデートって思ったら興奮してなかなか寝付けなかった。タカキと一緒に水族館。デート中はやっぱ手、つなぐよね。学校の行き帰りも人のいないところではつないでるし。明日はいつもより長い時間つないでれるよね? そう思っただけで胸がドキドキする。二人っきりでデートだから、キス、とかするのかな? 考えただけで体中熱くなって恥ずかしくなって、布団の中に潜り込んだ。

 中学生でキスとか早い? けど、マンガとか見ると中学生でもしてるし、クラスの女の子でキスしたことあるって子もいたし……。

 タカキとキスする。想像しただけで心臓が壊れそうなほどドキドキした。だけど恋人同士だもん、いつかするよね。それが明日かどうかは分からないけど。

 タカキの唇はやわらかいだろうか。それでもって、あったかい……? 

 わくわくそんなこと考えてるうちに、わたしはいつの間にか寝入っていた。


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