背後に注意を

響影

文字の大きさ
5 / 13

5

しおりを挟む
あの後、暫く頭が回らなくて志麻の腕の中でぼーとしていた。が、すぐにハッとして起き上がる。泣きべそをかきながら、
「しまのばーっっか」と言い残し、自室へと帰った。

その日の夜は志麻のが効いたのか、スレンダーマンが現れることもなく眠ることができた。…眠ることはできたが、ぐっすりとまではいかなかった。




「母さん、いってくるね」

朝、靴を履き鍵を開ける。

「よっ!」

玄関から出ると志麻が家の前で待っていた。正直、昨日の今日で志麻と顔を合わせるのは抵抗があると言うか…、昨日のことを思い出してしまいそうになる。

「顔色悪いな、熱は………ないな」

志麻が俺のおでこに手をあてる。誰のせいで眠れなかったのか、人の気も知らないで。

「……結季?昨日大丈夫だったか?」

昨日と聞いてボンッと俺の顔に熱が一気に集まるのを感じる。幼馴染にあんなことをされて大丈夫なわけがない。

「……大丈夫じゃねぇよ」

「え、……おまじない効かなかったのか?来ちゃった感じ?」

……そっちの心配か。スレンダーマンを追い払えたどうかの「大丈夫か?」だった。

「…………別に来てない。大丈夫だった。」

「よかったな!念の為、今日はもっとヤるか」

赤い顔が更に赤くなる。本当に、こいつは……

その後、俺は登校中も教室でも志麻のことを無視した。どんなに志麻が話しかけてこようが、謝ってこようが完全無視を決め込む。
後ろから、「なにあいつ、」「志麻君かわいそー」「調子乗ってんじゃねーよ」と言う声が聞こえてくるがそれを含めて無視する。

全部デリカシーのない志麻が悪い。今考えれば、あ、あんなことしなくても盛り塩とか置いておけばよかったんだ!今日からはそうしよう。





学校が終わり、下駄箱で靴を履き替える。

「ゆうきー、俺が悪かったって、…今度からはもっと優しくやるから。」

ソコジャナイ。こいつは人の気持ちが一切分からないのだろうか?

「ふんっ、」

「ゆうきぃぃぃ」

こんな会話?をしていると後ろから人がやってくる。

「おい、志麻。俺ら剣道部3年全員集合だって」

志麻と同じ部活の人だ。

「はー?俺部活引退したんですけど、………悪い結季ちょっと待ってて。」

そういうと志麻と部活の人は下駄箱へ戻っていってしまう。俺はいつも通り校門に立って待つ。ぼーとしながら道路を眺める。昨日よりも落葉が減ったな。そろそろ本格的に冬が始まるのかな。学校の前は閑散としており、あまり車が走らない。が、奥から一台の赤い車が走ってくる。

あの車高そうだなーと思いながら走り去った車を眺め、前へと視線を戻す。


俺の体は固まり、背筋が一気に冷える。


道路を挟んで向かい側に帽子を深く被り間から見える肌は青白く、背があまりにも高すぎるスーツの男。スレンダーマンが立って、こちらを見つめていた。

あ、うそ…なんで、

俺は後ろを振り返ると全力で学校まで駆け出した。

今のは絶対見間違えじゃない。用がないのに呼び出した俺を殺しに来たんだ。

学校に行けば誰かしらいて、助けを求めることができる。
早く、誰かに助けを求めねば、

結季は後ろも振り返らずに走る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

処理中です...