迷子

響影

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おれは男の隣をパックを開けながら歩いていた。
さすがレアパックなだけあって、5個中2個がレア。
妖狐郎より強いとらさんや、妖狐郎より人気なチバニャン。キラキラしたその2つのコインを更にキラキラした瞳で見ていた。

「それ、そんなにいいの?」

不意に男が話かけてきた。

「あったりまえじゃん!超超強くてカッコいいだろ?!」

男は興味なさそうに「へー。」と返した。

「そんなコインより君の名前が気になるなー」

そこでギクッとする。記憶の中の先生が言っている。知らない大人にいっぽう的に名前を聞かれても答えないように!って、

「……知らない人には教えない。」

先ほどまでコインに集中していたおれの視線は完全に男の方へと向いていた。

「ガード硬いなぁ、…僕の名前教えるから君のも教えてよ。」

「うーん、でもs(「決まりね」

強引に決定されてしまった。

「僕の名前は八代やしろ。名前を教えたし、これで知らない人じゃないね?君の名前は?」

なんだっけこういうの……、へりくつ?のような気がする。でも、名前を教えた所で不利になることはない気がする、たぶん。

「今井。」

名前を入れると今井あさとだが、なんとなく言わない方がいいのかなって思って上の名前だけを呟く。

「………あー!君よしこちゃんの家の孫だー!通りで似てるなって思ったよ。…大きくなるのってあっという間だね」

よしこは俺のばあちゃんの名前だ。
やしろはおれのこと知っているようだが、おれはこの男のことを見たことも無ければ聞いたこともない。村の人とは大抵あったことがあるはずだ。

「よしこちゃんとは昔馴染みでね、よく遊びに来てくれたんだ。」

やしろはおれのことを見ていながらも、どこか遠くを見ている気がした。
そんなやしろを見上げて、ふと気づいた。



ここはどこだ?


神社の雑木林の方向に進むと田んぼが見えるはずだ。
見えるはずなのに、いってもいっても見えるのは木。まるで森の中だ。でもそれはおかしい、神社の周りは少し木々に囲まれているだけで木々を抜けると辺り一面田んぼのはずだ。

おかしい。

一つのことを怪しみ出すと他のことも怪しくなる。

そういえば、やしろに初めて会った時やしろは怪物コインを知らない様子だった。なのに、なぜ大量にレアパックを持っている?転売ヤー?それにしては使い方を知らないのは怪しい。それに、いくらにしても売れる物をこんな子供にタダで渡すか?

そもそもレアパックはどこから出てきた?
やしろの上着の後ろにはポケットもない、

何から何までもが怪しいs

「ついたよ。」


考えは途中で中断された。
先ほどまでただの森だったのに急に目の前が開け、ばあちゃんの家よりもデカくて、古そうな家が現れた。

その家は明らかに古いと分かるのに、手入れが行き届いているのかどこか新しく、

なんだろう、これは……ひとけを感じない?ってやつだ。

「どうしたの?入らないの?」

いつのまにかかぼーとしていた。
気づかない間にやしろが玄関を開けてこちらを待っていた。


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