迷子

13

意識がゆっくり浮上する…

ボーとしながら聞こえてくる鳥のさえずりに耳を傾ける

身体をゆっくり起こそうとする

「い“っっつ」

腰も尻も痛みだす。
痛みは昨日の最悪な記憶を思い出させる

やっぱり、変態だった。
なんで、…こんなおもいをおれがしなくちゃいけないのだろうか……

「ここから逃げて、絶対ばあちゃんちに帰ってやる…」


とりあえず、今は奴から逃げなければ…
またおんなじようなことをされたらたまったもんじゃない

痛む腰を気遣いながら、立ち上がる

べっきょしてやる


足音を立てないように静かに廊下を通る。

奴は気配が薄いから慎重に辺りを見回してから玄関へと向かう


……

案外、簡単に辿りつけてしまった。
玄関の上下についた鍵を開け、扉から出ようとした。

あばよ、へんたい

廊下の方を警戒しながら出る、はずだった。

ゴツん

身体が何か大きなものにぶつかる

？？？

目の前を見ると視界が真っ黒だった


「おやおや、小さな人間だ。」

真上から声がした

おれがぶつかったのは、黒い服を着た背の高い男の人だった。

おれの倍以上ありそうな身長の男はおれの脇に両手を刺すとそのまま持ち上げた

やばっ、地面からかなりの高さまで上げられてしまい緊張する

「離せ、高いっ」

身をよじりながら暴れる

「そんなに暴れると落としてしまうよ、」

そう言われて暴れるのをやめる。
この高さだと、下手したら骨折しちゃうかも…

「どこから来たんだい？親御さんは一緒？」

男は目線の高さまでおれをあげると尋ねてきた

「……化ヶ村。この家の変態に誘拐されてきた。」

本当のことを言ってやる。

「じゃ、地元の子供か。こんなところで遊んでないで人間が住んでる方で遊んだらどうだい？」

地元？？と、言うことはここはばあちゃんの村？
そもそも、この人あの森からどうやってきたんだ？

………この人、何か知ってる。

「遊んでるんじゃなくて誘拐されたの！ゆ、う、か、い！村に帰ろうとしても帰れなくて困ってる。」

この人だったら助けてくれるかもしれない！
そんな期待を胸に話しかける

「おじさん、この森から出る方法知らない？」

目の前の男はおれの顔を見て、納得した表情を見せた



「なるほど、君にこんな性癖があったなんて驚いたよ」

？？せい、へき…？ってなんのことだ？




「毎度お前は趣味が悪いね、八代」

男はおれを床に下ろすと廊下の方を見つめた
その方向をおれも見る。そこにはいつもと変わらない、穏やかな表情のやしろがいた

「別に、子供に欲情する趣味があるわけじゃないよ。その子が特別なだけ。」

やしろはゆっくりとこちらに近づいてくる

「体痛いよね？ごめんね、無理して玄関まで歩いてきたの？」

そういうと、次はやしろに軽々と持ち上げられる。
まるで猫みたいな扱いだ