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第2話
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第2話
教室を出てからしばらく経った頃、誰かの腹の虫が鳴った。腹の虫が鳴ったのはたぶん涼花だろう。彼女は、少し顔を赤くしながらも、それを誤魔化すように、大きく伸びをしながら言った。
「お腹空いたー!」
「涼。声が大きいよ。」
「あ、ごめん。でも本当にお腹空いた。」
涼花は腹を抱えながら、苦笑いを浮かべた。
「そろそろ購買行こうか。」
私はそう切り出すと、鞄を持って階段を駆け下りた。4人も、私の後に続いて階段を下りる。私達は、誰もいない静かで蒸し暑い廊下を歩き、購買へと向かった。
購買には、私達にとても優しく接してくれる「ひとみさん」がいる。彼女は私達がいつ購買に来るのか見計らっている訳でもないのに、私達が購買に着く頃には、腕を組んで待っているのだ。そして、「あんた達またさぼったんじゃないだろうね。」と、大きな声で話した後、「ほら、早く選びな!」と、笑顔で言ってくれる。
「今日新作出る日だったよね。」
「そうなん!?やった!めっちゃラッキーやん。」
雪斗が思い出したように言うと、涼花が嬉しそうにスキップを始めた。そして、私達が購買に着くと、やはりひとみさんが待っていた。
「あんた達またさぼったんじゃないだろうね。」
「今日はさぼっちゃった!でもあれは向こうが悪いんやで!うちらは悪くないもん。」
「またそんなこと言って。そうやってさぼるから、向こうに何でもかんでも言われるんだよ?そこはぐっと堪えなきゃ。」
「だってムカつくんやもん!堪えられたらさぼらへんよー。」
そう言い終わった後、涼花が「新作何!?」と聞いたので、ひとみさんは、「やれやれ。」と言いながらも、新作のパンを出してきた。フランスパンにハンバーグとレタス、チーズにトマトも挟んであるパンと、チキン南蛮にタルタルソースがたっぷりかかったハンバーガーサンド。最後の一つは、さくらんぼと桃が生クリームと一緒に挟んである、サンドイッチだ。
「これがガッツリハンバーグサンドで、こっちはタルタルハンバーガーサンド。それでこれが、フレッシュサンドね。」
「うわ―めっちゃ美味しそうやん!優美何にする!?」
「私はフレッシュサンドにしようかな。」
「じゃあ、うちもそうする!ひとみさーん。フレッシュサンド、2つちょーだい。あ、あといちごミルクも2つ!」
「はいよー。」
ひとみさんは、私達の頼んだパンといちごミルクを袋にいれて渡してくれた。私と涼花が割り勘でお金を払っている中、
男子3人はまだ悩んでいるようだった。
「雪斗何にするん?」
「んー。僕は、タルタルハンバーガーサンドで。昴は?」
「じゃあ俺は、ガッツリハンバーグサンド。蒼は?」
「…フレッシュサンドか、ガッツリハンバーグサンドで悩む。」
「蒼は意外と甘党だもんな。」
雪斗の言葉はあまり耳に入っていない様子の蒼は、「んー。」
と唸りながら、商品と睨めっこをしている。
「蒼。私とフレッシュサンド半分こする?そしたら、2つ食べれるよ。」
「ん。そうする。」
「ひとみさん、ガッツリハンバーグサンド1つ下さい。」
「はいよー!」
お金を払い、ひとみさんから袋を受け取った時だった。
「コラー!!」と、廊下中に大きな声が鳴り響いた。
そこに立っていたのは、うちの担任だ。
少し向こうの方に仁王立ちで、私達を睨みつけている。
「あ、あれー?先生、席替え終わったんですか?」
「んなもんとっくに終わっとるわ!それよりお前ら!またサボって購買にいるとはどういうことだ!」
「えー。そんなこと言われてもぉ。うちらお腹減ったんよー」
「んなこと知るか!おら!教室戻るぞ!」
涼花と会話を交わしながら、ズカズカと歩みってくる近藤先生に後退りをする私達。
「あはは。いやー、私達教室に戻る気はないんよねー。なーんて………逃げるで!!」
これ以上は無理かと思ったのか、涼花はヘラヘラ笑ったが、ぐるっと方向を変え一目散に走り出したので、その後を追うように、私達は先生に背を向け、一斉に走り出した。
「待たんかコラァ!」
「嘘でしょ!追ってきてるやん!」
かなりの速度で走ってはいるものの、先生は負けじと追ってくる。体格からして、いつも鍛えている体にも見える。日々の鍛錬から身についた体力はバカにできない。
「どうする?どっか隠れる?」
「隠れるって言っても、空き教室もそんなないからすぐバレるし、そんないい場所なくない?」
「じゃあどうすんねん!」
後ろからものすごい勢いで追いかけてくる先生に、気を向けながらも、どこか良い所がないか探していると、急に蒼が足を止めた。それに気づいた私も思わず足を止め、蒼の隣に入った。
「蒼?」
「ちょ!止まったら捕まるで!」
私達が止まったことに気づいたのか、3人も足を止めこちらを見ていた。しかし、そんなことにもお構いなしに、蒼は静かにどこかを指差した。その方向に目を向けると、今は使われていない旧校舎があった。
「あそこならどうだ?」
「なるほど。いいかもね。」
「よさ気やけど、早くしないとアゴリラ来てるで!」
後ろを振り返ると、ゼェゼェ言いながらも追いかけてきている先生がいた。汗をだらだらとかきながら、フラフラと走っている。それは今にも倒れそうな姿だった。
「よし。じゃあ、とりあえずあそこまで走りきろうか。」
雪斗の言葉を合図に私達はまた走り出した。さっきよりも少し遅くした速度で。遅くしたところで、先生があの様子では、捕まることはないだろう。
「あの旧校舎、なんかやばそうなオーラ出てるけど、大丈夫なのかな?」
「俺等みたいな奴にはピッタリの場所だろ。」
私の言葉に、隣を走っていた蒼が言葉を返す。その横顔を見ると、額にうっすらと汗をかいていた。
窓の外から照りつける陽射し。蒸し暑い廊下。
体力的にも限界が来たので、走るのをやめた私達は、ゆっくりと歩き始めた。
「ここから行けばいいのかな」
雪斗の指差す先には、「立ち入り禁止」と書かれた看板が立っていた。ロープが張られ、その向こうには、旧校舎に続く廊下が続いていた。
「みんな気をつけてね。よくよく見たら、針金とか張ってあるから。」
雪斗を先頭に、昴、涼花、私、蒼の順番で通って行く。
少し歩くと、廊下は取り壊されていて、地面は砂利になった。
先程まであった屋根も無く、陽射しの照りつけが強くなる。
「暑い…死ぬ。死んでまう。」
「別にそんな辛いもんでもないだろ。」
「昴にはわからへんかもしれへんけどなぁ。うちやて女子なんや。体力だってそんなある訳じゃないんやで?」
「涼、もう少しだよ。頑張れ。」
雪斗は涼花の手を引くと、旧校舎の入り口へと歩き勧めた。
後ろから見ていても、涼花の顔が嬉しそうに笑っているのがわかる気がした。私から見ても、あの2人はお似合いだと思う。もちろん、付き合ってる訳ではない。でも、少なくとも涼花は、雪斗の事が好きだと思う。鋭い雪斗なら気付きそうなものだなとは思うが、他人のことだから変に口出しもできない。
「…優美、お前は大丈夫なのか?」
「え?あ、うん!全然大丈夫。私は元気だよ!」
「なんかぼーっとしてるから…」
「あぁ。いや、あの2人ってお似合いだな。って思っただけ。」
そう話しながら蒼の方を見ると、汗が顔をつたっていた。明らかにさっきよりも汗をかいている。
「蒼。これ使う?」
私は、自分のポケットから取り出したハンカチを蒼に差し出した。が、「いらねー」と断られ、ハンカチは行き場を失い、私のポケットに戻ってくるしかなかった。
「よし。ついた。ってあれ…鍵掛かってる」
雪斗が扉を引こうとするが、扉は開かない。
「鍵が掛かってるんじゃなくて、錆び付いてるんじゃない?」
「あぁ、なるほど。」
「じゃあ、これで開けられんじゃね。」
そう言って蒼が持ってきたのは、近くに落ちていた廃材だ。
蒼が、扉に廃材を差し込むように打つと、錆が剥がれ落ち、隙間が出来たので、その隙間に廃材を差し込むと、また錆が落ち、手を入れられるような隙間が出来た。
蒼はその隙間に手を入れると、思いっきり横に引っ張った。
すると扉は、嫌な音を立ててゆっくりと開いた。
「…埃くさっ!これはやばいんちゃうん?」
「ここ空気悪いし、衛生上悪いんじゃね…」
「どうする?場所的にはいいかもしれないけど…」
中に入ってみると、埃やら蜘蛛の巣やらが積もりに積もった天井、ゴミや廃材、紙くずか撒き散らされた床が広がっていた。
「どうする優美、やめとく?って…何してるんよ?」
「んーとね…あ、あった。」
私は、散らかっている床からホウキを見つけた。
その他にも、雑巾、ちりとり、モップ、バケツを見つけ、
それらの掃除用具についていた埃をはらう。
「散らかってて汚れてるなら、掃除すればいいんじゃない?」
「掃除って今から?」
「そうだよ?」
「え、ガチでやるん?この校舎4階建てやし、どこもかしこもボロボロやで?」
「だって、こんな場所そうそうないよ。広さも十分だし、いい隠れ家?になりそう。掃除すれば絶対使えるし、家出してきた時なんかここに泊まれるかもよ?」
水道の蛇口を捻ると、勢い良く水が出てきたので、バケツにはあっという間に水が溜まった。
「しょうがない。やりますか。」
「…やるしかないんか…」
「まぁ、やって損はないんじゃねーの。」
「暑さと空腹でぶっ倒れる前に終わらせそうぜ…。」
4人は何だかんだ賛成をしたようで、自分の持っていた物を取り敢えず安全そうな場所に置き始めた。私は髪をポニーテールに結び直し、4人の方に向き直した。
「やる気十分だね!じゃ、始めよっか!まずは散らかってるゴミをこのゴミ箱に入れてって。そのあとに4階から降りてくるように、埃を天井から落としてったり蜘蛛の巣をはらうから。それが終わったら、それぞれ階ごとに人を振り分けて、ホウキをかけて、窓拭きね。そしたら最後にバケツの水を流してモップがけするよ。ただ、穴とか空いてて水漏れするかもだから、全員4階に避難してからモップかけ始めるよ。その後は、そこら辺にある廃材で穴を補修ね。結構ハードだけど頑張ろう!」
「「「「おー!」」」」
4人も気合を入れるかのように声を上げる。
真夏の気温が体力を奪い、窓の外から照りつける陽射しに耐えながら、私達の夏の大掃除が始まった。
第2話 終
教室を出てからしばらく経った頃、誰かの腹の虫が鳴った。腹の虫が鳴ったのはたぶん涼花だろう。彼女は、少し顔を赤くしながらも、それを誤魔化すように、大きく伸びをしながら言った。
「お腹空いたー!」
「涼。声が大きいよ。」
「あ、ごめん。でも本当にお腹空いた。」
涼花は腹を抱えながら、苦笑いを浮かべた。
「そろそろ購買行こうか。」
私はそう切り出すと、鞄を持って階段を駆け下りた。4人も、私の後に続いて階段を下りる。私達は、誰もいない静かで蒸し暑い廊下を歩き、購買へと向かった。
購買には、私達にとても優しく接してくれる「ひとみさん」がいる。彼女は私達がいつ購買に来るのか見計らっている訳でもないのに、私達が購買に着く頃には、腕を組んで待っているのだ。そして、「あんた達またさぼったんじゃないだろうね。」と、大きな声で話した後、「ほら、早く選びな!」と、笑顔で言ってくれる。
「今日新作出る日だったよね。」
「そうなん!?やった!めっちゃラッキーやん。」
雪斗が思い出したように言うと、涼花が嬉しそうにスキップを始めた。そして、私達が購買に着くと、やはりひとみさんが待っていた。
「あんた達またさぼったんじゃないだろうね。」
「今日はさぼっちゃった!でもあれは向こうが悪いんやで!うちらは悪くないもん。」
「またそんなこと言って。そうやってさぼるから、向こうに何でもかんでも言われるんだよ?そこはぐっと堪えなきゃ。」
「だってムカつくんやもん!堪えられたらさぼらへんよー。」
そう言い終わった後、涼花が「新作何!?」と聞いたので、ひとみさんは、「やれやれ。」と言いながらも、新作のパンを出してきた。フランスパンにハンバーグとレタス、チーズにトマトも挟んであるパンと、チキン南蛮にタルタルソースがたっぷりかかったハンバーガーサンド。最後の一つは、さくらんぼと桃が生クリームと一緒に挟んである、サンドイッチだ。
「これがガッツリハンバーグサンドで、こっちはタルタルハンバーガーサンド。それでこれが、フレッシュサンドね。」
「うわ―めっちゃ美味しそうやん!優美何にする!?」
「私はフレッシュサンドにしようかな。」
「じゃあ、うちもそうする!ひとみさーん。フレッシュサンド、2つちょーだい。あ、あといちごミルクも2つ!」
「はいよー。」
ひとみさんは、私達の頼んだパンといちごミルクを袋にいれて渡してくれた。私と涼花が割り勘でお金を払っている中、
男子3人はまだ悩んでいるようだった。
「雪斗何にするん?」
「んー。僕は、タルタルハンバーガーサンドで。昴は?」
「じゃあ俺は、ガッツリハンバーグサンド。蒼は?」
「…フレッシュサンドか、ガッツリハンバーグサンドで悩む。」
「蒼は意外と甘党だもんな。」
雪斗の言葉はあまり耳に入っていない様子の蒼は、「んー。」
と唸りながら、商品と睨めっこをしている。
「蒼。私とフレッシュサンド半分こする?そしたら、2つ食べれるよ。」
「ん。そうする。」
「ひとみさん、ガッツリハンバーグサンド1つ下さい。」
「はいよー!」
お金を払い、ひとみさんから袋を受け取った時だった。
「コラー!!」と、廊下中に大きな声が鳴り響いた。
そこに立っていたのは、うちの担任だ。
少し向こうの方に仁王立ちで、私達を睨みつけている。
「あ、あれー?先生、席替え終わったんですか?」
「んなもんとっくに終わっとるわ!それよりお前ら!またサボって購買にいるとはどういうことだ!」
「えー。そんなこと言われてもぉ。うちらお腹減ったんよー」
「んなこと知るか!おら!教室戻るぞ!」
涼花と会話を交わしながら、ズカズカと歩みってくる近藤先生に後退りをする私達。
「あはは。いやー、私達教室に戻る気はないんよねー。なーんて………逃げるで!!」
これ以上は無理かと思ったのか、涼花はヘラヘラ笑ったが、ぐるっと方向を変え一目散に走り出したので、その後を追うように、私達は先生に背を向け、一斉に走り出した。
「待たんかコラァ!」
「嘘でしょ!追ってきてるやん!」
かなりの速度で走ってはいるものの、先生は負けじと追ってくる。体格からして、いつも鍛えている体にも見える。日々の鍛錬から身についた体力はバカにできない。
「どうする?どっか隠れる?」
「隠れるって言っても、空き教室もそんなないからすぐバレるし、そんないい場所なくない?」
「じゃあどうすんねん!」
後ろからものすごい勢いで追いかけてくる先生に、気を向けながらも、どこか良い所がないか探していると、急に蒼が足を止めた。それに気づいた私も思わず足を止め、蒼の隣に入った。
「蒼?」
「ちょ!止まったら捕まるで!」
私達が止まったことに気づいたのか、3人も足を止めこちらを見ていた。しかし、そんなことにもお構いなしに、蒼は静かにどこかを指差した。その方向に目を向けると、今は使われていない旧校舎があった。
「あそこならどうだ?」
「なるほど。いいかもね。」
「よさ気やけど、早くしないとアゴリラ来てるで!」
後ろを振り返ると、ゼェゼェ言いながらも追いかけてきている先生がいた。汗をだらだらとかきながら、フラフラと走っている。それは今にも倒れそうな姿だった。
「よし。じゃあ、とりあえずあそこまで走りきろうか。」
雪斗の言葉を合図に私達はまた走り出した。さっきよりも少し遅くした速度で。遅くしたところで、先生があの様子では、捕まることはないだろう。
「あの旧校舎、なんかやばそうなオーラ出てるけど、大丈夫なのかな?」
「俺等みたいな奴にはピッタリの場所だろ。」
私の言葉に、隣を走っていた蒼が言葉を返す。その横顔を見ると、額にうっすらと汗をかいていた。
窓の外から照りつける陽射し。蒸し暑い廊下。
体力的にも限界が来たので、走るのをやめた私達は、ゆっくりと歩き始めた。
「ここから行けばいいのかな」
雪斗の指差す先には、「立ち入り禁止」と書かれた看板が立っていた。ロープが張られ、その向こうには、旧校舎に続く廊下が続いていた。
「みんな気をつけてね。よくよく見たら、針金とか張ってあるから。」
雪斗を先頭に、昴、涼花、私、蒼の順番で通って行く。
少し歩くと、廊下は取り壊されていて、地面は砂利になった。
先程まであった屋根も無く、陽射しの照りつけが強くなる。
「暑い…死ぬ。死んでまう。」
「別にそんな辛いもんでもないだろ。」
「昴にはわからへんかもしれへんけどなぁ。うちやて女子なんや。体力だってそんなある訳じゃないんやで?」
「涼、もう少しだよ。頑張れ。」
雪斗は涼花の手を引くと、旧校舎の入り口へと歩き勧めた。
後ろから見ていても、涼花の顔が嬉しそうに笑っているのがわかる気がした。私から見ても、あの2人はお似合いだと思う。もちろん、付き合ってる訳ではない。でも、少なくとも涼花は、雪斗の事が好きだと思う。鋭い雪斗なら気付きそうなものだなとは思うが、他人のことだから変に口出しもできない。
「…優美、お前は大丈夫なのか?」
「え?あ、うん!全然大丈夫。私は元気だよ!」
「なんかぼーっとしてるから…」
「あぁ。いや、あの2人ってお似合いだな。って思っただけ。」
そう話しながら蒼の方を見ると、汗が顔をつたっていた。明らかにさっきよりも汗をかいている。
「蒼。これ使う?」
私は、自分のポケットから取り出したハンカチを蒼に差し出した。が、「いらねー」と断られ、ハンカチは行き場を失い、私のポケットに戻ってくるしかなかった。
「よし。ついた。ってあれ…鍵掛かってる」
雪斗が扉を引こうとするが、扉は開かない。
「鍵が掛かってるんじゃなくて、錆び付いてるんじゃない?」
「あぁ、なるほど。」
「じゃあ、これで開けられんじゃね。」
そう言って蒼が持ってきたのは、近くに落ちていた廃材だ。
蒼が、扉に廃材を差し込むように打つと、錆が剥がれ落ち、隙間が出来たので、その隙間に廃材を差し込むと、また錆が落ち、手を入れられるような隙間が出来た。
蒼はその隙間に手を入れると、思いっきり横に引っ張った。
すると扉は、嫌な音を立ててゆっくりと開いた。
「…埃くさっ!これはやばいんちゃうん?」
「ここ空気悪いし、衛生上悪いんじゃね…」
「どうする?場所的にはいいかもしれないけど…」
中に入ってみると、埃やら蜘蛛の巣やらが積もりに積もった天井、ゴミや廃材、紙くずか撒き散らされた床が広がっていた。
「どうする優美、やめとく?って…何してるんよ?」
「んーとね…あ、あった。」
私は、散らかっている床からホウキを見つけた。
その他にも、雑巾、ちりとり、モップ、バケツを見つけ、
それらの掃除用具についていた埃をはらう。
「散らかってて汚れてるなら、掃除すればいいんじゃない?」
「掃除って今から?」
「そうだよ?」
「え、ガチでやるん?この校舎4階建てやし、どこもかしこもボロボロやで?」
「だって、こんな場所そうそうないよ。広さも十分だし、いい隠れ家?になりそう。掃除すれば絶対使えるし、家出してきた時なんかここに泊まれるかもよ?」
水道の蛇口を捻ると、勢い良く水が出てきたので、バケツにはあっという間に水が溜まった。
「しょうがない。やりますか。」
「…やるしかないんか…」
「まぁ、やって損はないんじゃねーの。」
「暑さと空腹でぶっ倒れる前に終わらせそうぜ…。」
4人は何だかんだ賛成をしたようで、自分の持っていた物を取り敢えず安全そうな場所に置き始めた。私は髪をポニーテールに結び直し、4人の方に向き直した。
「やる気十分だね!じゃ、始めよっか!まずは散らかってるゴミをこのゴミ箱に入れてって。そのあとに4階から降りてくるように、埃を天井から落としてったり蜘蛛の巣をはらうから。それが終わったら、それぞれ階ごとに人を振り分けて、ホウキをかけて、窓拭きね。そしたら最後にバケツの水を流してモップがけするよ。ただ、穴とか空いてて水漏れするかもだから、全員4階に避難してからモップかけ始めるよ。その後は、そこら辺にある廃材で穴を補修ね。結構ハードだけど頑張ろう!」
「「「「おー!」」」」
4人も気合を入れるかのように声を上げる。
真夏の気温が体力を奪い、窓の外から照りつける陽射しに耐えながら、私達の夏の大掃除が始まった。
第2話 終
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ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。
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