天界アイドル~ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら~

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第十一章 失恋編

第31話‐3 ガニュメデスの正体

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「ねえヒュアキントス。君、何か辛いことがあったんじゃないか?」
「え!?何故そう思うんですか?」
「君が辛そうにしてるからだよ」
「……」

図星だったので何も言えなかった。そしてやはりこの方は鋭いと思った。


「そんなに我慢しなくてもいい。泣きたいなら泣いていいんだよ。ここには誰もいない」
優しい言葉をかけながらそっと肩を抱いてくれた。

そんな風に優しくされて思わず涙が出そうになるのをヒュアキントスは慌てて堪えた。


「な、泣きませんよ~僕は男だし、神ですから(元だけど…)」
そう虚勢を張ってごまかした。


ゼピュロスはそんな彼を優しく見つめ返しこう言った。

「私なら君を楽にしてあげられると思うよ」


そう言ってゼピュロスは助手席に座るヒュアキントスの方へ身を乗り出してきたのだ。そしてそのまま顔を近づけてきてーーーー 



次の瞬間、唇に柔らかいものが触れたのを感じた。それは紛れもなくキスであった。

(えっ?!何これ?どういうこと??)

あまりに突然の出来事で思考が追いつかなかった。そして数秒後ようやくキスをされているのだと理解したと同時に、顔がカーッと熱くなったのがわかった。



心臓がドキドキして胸が苦しくなった。そして動揺のあまり頭が真っ白になり固まってしまったのだった。

そんなヒュアキントスを見て、ゼピュロスは優しく微笑んだ。そして唇を離すと言った。


「ごめんよいきなりこんなことして……でも君には笑っていて欲しいんだ」
「あ…あの…」
「心配しなくてもいい。君は恋愛禁止だったね。これ以上踏み込むことはないよ。今のは友情のキスさ」


そう言ってまたいつもの爽やかで人懐っこい笑顔を見せたのだ。


(もしかして僕を元気付けるためにこんなことを?優しい方なんだな……)
そしてそれ以上手を出してこようとしない彼に安心して、好感を持つのだった。



***

その夜。
ガニュメデスは1人である場所へと来ていた。


そこは美少年達が最初に集められた高層ビルの1室。
彼は画面越しにマスターに報告をしていた。


「いつも報告ご苦労。ガニュメデス君。君はエースだし有能だから助かってるよ。しかし他のメンバーは驚くだろうね。まさか君が1だったと知れば」

マスターは画面の向こうで笑っていた。
ガニュメデスも笑い返すとこう続けた。


「ええ。それにを知ったらさらに驚くでしょうね」
「ははは、全く気付いてないようだがな。ところで君から見て気になることはあるかね?ミニライブの開催はもうすぐだが」

マスターはそう言って期待を込めた眼差しを向けてきた。

それに対してガニュメデスは答えた。

「そうですね…認知度も上がり僕たちも人気アーティストの仲間入りといっていいでしょう。アドニスはTV出演をして以来、意識が変わったようです。ファンも増えましたしね。ヒュアキントスは最近一皮剥けたようですがもう一歩というところです。ただ、問題はナルキッソスですね。彼が足を引っ張りかねない」


それを聞いたマスターは言った。

「ふむ……では次のステップに進む時が来たようだな……そろそろあれを出すか」


それを聞いてニヤリと笑ったガニュメデスだったが、すぐに表情を戻すと言った。
「はい、そのつもりです」


2人は不敵な笑みを浮かべていたのだったーーー


第32話に続く・・・
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