天界アイドル~ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら~

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第十二章 メンバーの危機編

第33話‐3 ナルキッソスの過去

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「やあ、久しぶりだね!今度ライブをするそうだね?私も観に行くよ」

どうやらヘルメスは様子を見に来てくれたようだ。


(そういえば…ヘルメス様はナルキッソスを気に入ってたっけ)



ヒュアキントスは彼に、ナルキッソスのどこが魅力に感じるか訊いてみることにした。何かヒントになるかもしれないからだ。


「え?ナルキッソス君?いや~、だって美しいじゃない?それに、クールで媚びない所もいいよね~。それに彼はギャップがあるよね。一見繊細そうなのに意外と中身は男っぽかったり。そのギャップが魅力的で色気があるんだよね」



「なるほど…(ギャップ、かあ)」
「ところでさ、ヒュアキントス君。アポロンとは最近会ってないの?」
「え……!!」


アポロンの名前が急に出てつい動揺した。確かに今は忙しいが、まだアポロンへの傷心を引きずっているからだ。


ヘルメスは続けて言った。

「彼、今は忙しいからね。でも様子がおかしいんだよね、いつもの陽気さがなくてよくボーっとしてるし。良かったらさ、様子を見に行ってやってよ」
「…………」



ヘルメスは2人が決別したことを知らないのだろう。だがヒュアキントスはそれを聞いて複雑な気持ちだった。

そしてアポロンのことを思った。一体どうしているんだろう……?

僕はもう嫌われてるし、アポロン様を心配するなんておこがましい。

そう頭では思っても、彼の様子が心配だった。そして前にアルテミスに聞いた話も思い出していた。
 

(アポロン様………)


***


ある日のこと、ヒュアキントスは久しぶりにアポロンの元を訪れた。
迷惑かもしれないし勇気がいったが、どうしても会いたかったからだ。


「何の用だ?私を拒絶しておいて」

アポロンは素っ気なくそう言っただけだった。だが、やはり元気がないように見える。
そして少しやつれたようにも見えたのだ。


「すみません…。どうしてもこれを、渡したかったんです」



ヒュアキントスが手に持っていたのは、美少年達の新曲である2ndシングルだった。



「………これを渡しに来たのか?」

プライドからつい虚勢を張っていたアポロンだが、彼の思いがけない行動に驚きを隠せなかったようだった。
ヒュアキントスが頷いたのを見て、思わずCDを受け取った。


「そうか。聴かせてもらおう」

本当はもうCDは購入していたが、そのことは黙っていた。
2人は何を話していいかわからず気まずい空気が流れた。


沈黙に耐えかねたヒュアキントスは慌ててこう言った。
「すみません、お忙しいのに時間を取らせて。それでは失礼します」


そのまま立ち去ろうとした時、突然腕を掴まれた。驚いて振り返るとそこには真剣な表情をしたアポロンがいた。
その表情を見て、一瞬ドキッとした。


「用事はそれだけではないだろう。何かあったんじゃないのか?」
「え?」
「また君達のことで悩んでいることがあるんだろう。どれ、話を聞いてやろう」


そう言って腕を掴んだまま離そうとしないアポロンに対し、ヒュアキントスは戸惑った。

(どうしよう……こんなこと言うつもりじゃなかったんだけど……)


だがアポロンの優しさに触れ、今まで堪えていたものが堰を切ったかのように溢れ出してきた。

そして、グループの危機のことを打ち明けたのだった。


第34話に続く・・・
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