166 / 295
第十九章 トリックスター編
第57話‐1 ユニット対決勃発
しおりを挟む
第57話「ユニット対決勃発」
ガニュメデスの記者会見の場に唐突に現れ、主導権を奪ったのは伝令の神ヘルメスだった。
そして彼の口から驚くべき発表がされ、会場は騒然となった。
美少年達のグループ「B‐PROJECT」内で2組のユニットに分かれ、ユニット対決を行うという仲間内のライバル関係を作るというものだ。
さらに、1組はヘルメスがプロデュースするというのだから尚更のことである。
そして彼は会場で、直々にナルキッソスを指名したのだったーー
(これは一体どういうことなんだ……?)
アポロンはこの状況を飲み込めずにいた。
(まさか、これもあのエロスの差し金なのか……!?)
動揺するアポロンだったが、それは当の本人である美少年達も同様だった。
だがナルキッソスは彼らとは違う感情を感じていた。
(何だ、これ・・・何だ?この胸の高鳴りは……)
大勢の者たちが注目する中でヘルメスから指名され、ナルキッソスは戸惑うと同時に胸の高鳴りを抑えられなかった。
(動悸が止まらない。一体何なんだ、この人は……!)
今まで感じたことのない感覚に戸惑いを隠せない様子のナルキッソスであったが、その一方で他の者達は別の意味で戸惑っていた。
そして、同じく会場に駆けつけていた、コーラスメンバーのエコーも複雑な表情で眺めていた。
(ナルキッソス……)
***
「おい、ヘルメス!一体どういうことだ!?」
記者会見が終わった後、アポロンはすぐにヘルメスに詰め寄った。
詰め寄られた側の本人はと言うと、相変わらずの飄々とした態度で答えた。
「実はロキさんと組むことになってね。同じグループでライバル対決したら話題になりそうだから提案したんだ」
まるで悪びれる様子もない。
むしろこの状況を楽しんでいるかのようにさえ見えるほどだ。
それが余計に腹立たしく思えたのだが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「エロスの差し金なのか……?」
そう尋ねると、ヘルメスはきょとんとした表情を浮かべた。
「エロス?何のこと??」
その表情からは嘘がなく彼は本当に知らないようだった。
(ただの偶然だというのか?しかし、ヘルメスに出し抜かれる形になってしまうとはな……)
思わず溜息が出る。
「ヘルメス。今はそんなことをしている場合ではないんだ。実は…」
アポロンは、エロスと勝負をすることになったいきさつを説明した。
だがヒュアキントスとアドニスが大罪を犯して処刑を保留されていることを、口外することは憚られる。
なので彼らの恋愛禁止令を解除するためだと方便をついた。
それを聞いたヘルメスは少し考えるような素振りを見せたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「なるほどね。親友として君とヒュアキントス君を応援したいけど、今更白紙に戻せないよ。記者会見で発表までしたし。それに父上も乗り気でね」
ヘルメスの言う父上というのは、もちろんゼウスのことだ。
今回の記者会見に関してはゼウスの差し金でもあったらしい。
だから今回ばかりはどうすることもできないのだとヘルメスは言った。
ガニュメデスの記者会見の場に唐突に現れ、主導権を奪ったのは伝令の神ヘルメスだった。
そして彼の口から驚くべき発表がされ、会場は騒然となった。
美少年達のグループ「B‐PROJECT」内で2組のユニットに分かれ、ユニット対決を行うという仲間内のライバル関係を作るというものだ。
さらに、1組はヘルメスがプロデュースするというのだから尚更のことである。
そして彼は会場で、直々にナルキッソスを指名したのだったーー
(これは一体どういうことなんだ……?)
アポロンはこの状況を飲み込めずにいた。
(まさか、これもあのエロスの差し金なのか……!?)
動揺するアポロンだったが、それは当の本人である美少年達も同様だった。
だがナルキッソスは彼らとは違う感情を感じていた。
(何だ、これ・・・何だ?この胸の高鳴りは……)
大勢の者たちが注目する中でヘルメスから指名され、ナルキッソスは戸惑うと同時に胸の高鳴りを抑えられなかった。
(動悸が止まらない。一体何なんだ、この人は……!)
今まで感じたことのない感覚に戸惑いを隠せない様子のナルキッソスであったが、その一方で他の者達は別の意味で戸惑っていた。
そして、同じく会場に駆けつけていた、コーラスメンバーのエコーも複雑な表情で眺めていた。
(ナルキッソス……)
***
「おい、ヘルメス!一体どういうことだ!?」
記者会見が終わった後、アポロンはすぐにヘルメスに詰め寄った。
詰め寄られた側の本人はと言うと、相変わらずの飄々とした態度で答えた。
「実はロキさんと組むことになってね。同じグループでライバル対決したら話題になりそうだから提案したんだ」
まるで悪びれる様子もない。
むしろこの状況を楽しんでいるかのようにさえ見えるほどだ。
それが余計に腹立たしく思えたのだが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「エロスの差し金なのか……?」
そう尋ねると、ヘルメスはきょとんとした表情を浮かべた。
「エロス?何のこと??」
その表情からは嘘がなく彼は本当に知らないようだった。
(ただの偶然だというのか?しかし、ヘルメスに出し抜かれる形になってしまうとはな……)
思わず溜息が出る。
「ヘルメス。今はそんなことをしている場合ではないんだ。実は…」
アポロンは、エロスと勝負をすることになったいきさつを説明した。
だがヒュアキントスとアドニスが大罪を犯して処刑を保留されていることを、口外することは憚られる。
なので彼らの恋愛禁止令を解除するためだと方便をついた。
それを聞いたヘルメスは少し考えるような素振りを見せたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「なるほどね。親友として君とヒュアキントス君を応援したいけど、今更白紙に戻せないよ。記者会見で発表までしたし。それに父上も乗り気でね」
ヘルメスの言う父上というのは、もちろんゼウスのことだ。
今回の記者会見に関してはゼウスの差し金でもあったらしい。
だから今回ばかりはどうすることもできないのだとヘルメスは言った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

