天界アイドル～ギリシャ神話の美少年達が天界でアイドルになったら～

第二十七章 ユニット対決第二弾後編

第86話‐2 激戦の行方

ヘパイストスは物作りに長けた神でもあるが、ありとあらゆる舞台やイベントのプロデュースを手掛ける天才としても知られている。
彼の手腕によって多くの伝説が生み出されてきたと言っても過言ではないだろう。


そのため、彼への依頼は競争率が非常に高く、彼が手掛けるだけで成功は約束されたも同然と言われるほどだ。
そんな彼によって生み出されたパフォーマンスは、文句無しに素晴らしいものであった。


2人が披露したのは、かつて天界の間で流行した『パンドラの箱』を題材にしたものだった。

人類が生まれる遥か昔、箱に封じ込められた恐怖により世界は混沌と化したと伝えられている、地球人が作った神話上の物語である。


その中でも特に有名なエピソードとして、パンドラという女性が好奇心に負けて開けてしまったことであらゆる災厄が飛び出してしまい、人間の世界が混沌に向かうという話だ。

彼女は箱の中身を見た後に後悔の念に駆られたが、既に手遅れであった。


つまり、パンドラの箱とは、開けることによって中身が出てしまう危険なものであり、開けた者には必ず不幸が訪れると言われているのである。
それを表現するために、2人は花の妖精をイメージした美しい衣装に身を包んでいたのである。

そして花が開く瞬間を演出するための装置を用意し、それを合図にして衣装を脱いでいくという流れになっていたのだった。

この演出には、審査員さえも度肝を抜かれていたようで、誰もが言葉を失っていたようだ。
それだけではない。


衣装を脱ぐと同時に、大量の花びらが舞い散る演出が施されており、より一層幻想的な雰囲気を醸し出していたのである。
会場全体が圧倒されるほどの圧倒的なステージングであり、観客たちも思わず息を呑んでしまっていた。

まさに圧巻の一言だったーーー

「いやぁ～、すごかったですね～！まさかあんな仕掛けを用意してくるなんて！」
「ああ、驚いたよ……！正直言って侮っていた部分があったかもしれないな……」
「おお～、これは素晴らしい！」

審査員の反応も上々のようだ。
それは観客たちも同様で、皆口々に賞賛の言葉を口にしていた。

中には涙を流しながら拍手をしている者もいたほどだ。
それほどまでに、今回のステージは素晴らしかったということである。

ヒュアキントスとナルキッソスの魅力とパフォーマンス、そしてそれを最大限にまで引き出したヘパイストスの演出力と技術力が遺憾なく発揮されていたと言えるだろう。
これこそまさに芸術と呼ぶに相応しいだろう。

審査員達も皆感動していた様子だが、1人複雑な表情をしている者がいた。
それはゼウスの妻である女神ヘラだったーーー

第87話に続く・・・