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監禁前夜
五話・憤怒の先にあったモノ②
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それからは、地獄だった。
「ま、待って。待てって!! なあ!」
「大丈夫。ちゃんと俺が満たしてあげる。愛してあげる。だって、それがアイネのしたかったことでしょ?」
「ちが、そうじゃなくて…っ、な、なぁ! メア、聞いて……うぁっ、」
手を引かれ、車から下ろされた。
手を引かれ、高層階までエレベーターで上がった。
手を引かれ、とある部屋の前までやって来た。
手を引かれ、鉄格子のなかに入れと促された。
その部屋は異質だった。外観は他の部屋と全く違いが無かったけれど、メアが部屋の鍵を開けた途端に異端分子がアイネに挨拶をしたのだ。
眼前に見えたのは、顔すら映せそうなほど磨き上げられた銀色の輝き。玄関スペースのすぐ目の前に設置された鉄格子が照明を反射しているのだと気付いた時、背筋に冷たいものが這った。「なんでこんな場所に鉄格子が?」。震える声をどうにか律して発した質問に、メアは子どものような笑みを浮かべるだけだった。
見える廊下は広々としており、日常的に使用される居住区であるにも関わらずホテル並みの高級感が漂っていた。それ故に、玄関スペースと室内を隔てる無骨な鉄格子の異質さが際立っている。本来はここに無かったものを後付けしたのだと分かるからこそ、そんなものを用意しているメアが一層恐ろしく見えた。
それでも、アイネは手を放すことは出来なかった。逃げることも、暴れることも。メアを恐ろしいと思う以上に「メアにだけは嫌われたくない」と心が怯えてしまった。
「右手にある扉は浴室。いつでも自由に使ってね。その隣はトイレ。目の前の戸はリビング。……あ。左手、浴室の向かいにある、こっちの部屋は入っちゃダメ。俺の仕事部屋だから」
アイネの手を引きながら、先導するメアは実家の説明でもしているかのように廊下から見える扉について教えてくれる。ずんずん歩みを進めていくものだから、アイネは否応なしにソレを潜ってしまった。
――カチャン
手を引かれるままに通ってしまった鉄格子が、アイネの後ろで独りでに閉まった。音に導かれるまま咄嗟に後方を見れば、鉄格子には小さな箱型のなにかと赤いランプが点灯していた。おそらく自動制御用の機械だろう。そして、だとすれば先ほどの音は……
「あの鉄格子は、俺を認証して開くんだ」
きゅっと繋いだ手を強く握られた。
「逃がさない」という声が聞こえた。
手を引かれて、再会した時と同じくきつく体を抱きしめられた。
「あぁ、ああ!! やっと会えた!! やっと取り戻せた!! もう離さない。怖かったよね、嫌だったよね。気持ち悪かったよね。でも、大丈夫だよ。アイネ。俺はもうずーっと一緒だから。これからはもう誰にも近付けさせない。触れさせない。俺が守ってあげるから」
『アイネは何も心配いらないんだよ』
砂糖を溶かし、ドロドロに煮詰めたような声で甘く囁かれる。心の底から嬉しくて堪らないのだと告げている。ぎゅうっと力いっぱい抱きしめられて、無遠慮なほどきつく抱きしめられて、昼間の味わったはずのその覚えのない力加減が今はやけに恐ろしくて。
「……メ、ア…?」
そう声を振り絞るのが限界だった。
「ま、待って。待てって!! なあ!」
「大丈夫。ちゃんと俺が満たしてあげる。愛してあげる。だって、それがアイネのしたかったことでしょ?」
「ちが、そうじゃなくて…っ、な、なぁ! メア、聞いて……うぁっ、」
手を引かれ、車から下ろされた。
手を引かれ、高層階までエレベーターで上がった。
手を引かれ、とある部屋の前までやって来た。
手を引かれ、鉄格子のなかに入れと促された。
その部屋は異質だった。外観は他の部屋と全く違いが無かったけれど、メアが部屋の鍵を開けた途端に異端分子がアイネに挨拶をしたのだ。
眼前に見えたのは、顔すら映せそうなほど磨き上げられた銀色の輝き。玄関スペースのすぐ目の前に設置された鉄格子が照明を反射しているのだと気付いた時、背筋に冷たいものが這った。「なんでこんな場所に鉄格子が?」。震える声をどうにか律して発した質問に、メアは子どものような笑みを浮かべるだけだった。
見える廊下は広々としており、日常的に使用される居住区であるにも関わらずホテル並みの高級感が漂っていた。それ故に、玄関スペースと室内を隔てる無骨な鉄格子の異質さが際立っている。本来はここに無かったものを後付けしたのだと分かるからこそ、そんなものを用意しているメアが一層恐ろしく見えた。
それでも、アイネは手を放すことは出来なかった。逃げることも、暴れることも。メアを恐ろしいと思う以上に「メアにだけは嫌われたくない」と心が怯えてしまった。
「右手にある扉は浴室。いつでも自由に使ってね。その隣はトイレ。目の前の戸はリビング。……あ。左手、浴室の向かいにある、こっちの部屋は入っちゃダメ。俺の仕事部屋だから」
アイネの手を引きながら、先導するメアは実家の説明でもしているかのように廊下から見える扉について教えてくれる。ずんずん歩みを進めていくものだから、アイネは否応なしにソレを潜ってしまった。
――カチャン
手を引かれるままに通ってしまった鉄格子が、アイネの後ろで独りでに閉まった。音に導かれるまま咄嗟に後方を見れば、鉄格子には小さな箱型のなにかと赤いランプが点灯していた。おそらく自動制御用の機械だろう。そして、だとすれば先ほどの音は……
「あの鉄格子は、俺を認証して開くんだ」
きゅっと繋いだ手を強く握られた。
「逃がさない」という声が聞こえた。
手を引かれて、再会した時と同じくきつく体を抱きしめられた。
「あぁ、ああ!! やっと会えた!! やっと取り戻せた!! もう離さない。怖かったよね、嫌だったよね。気持ち悪かったよね。でも、大丈夫だよ。アイネ。俺はもうずーっと一緒だから。これからはもう誰にも近付けさせない。触れさせない。俺が守ってあげるから」
『アイネは何も心配いらないんだよ』
砂糖を溶かし、ドロドロに煮詰めたような声で甘く囁かれる。心の底から嬉しくて堪らないのだと告げている。ぎゅうっと力いっぱい抱きしめられて、無遠慮なほどきつく抱きしめられて、昼間の味わったはずのその覚えのない力加減が今はやけに恐ろしくて。
「……メ、ア…?」
そう声を振り絞るのが限界だった。
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