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監禁前夜
六話・回帰、そして始まったモノ①
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大学でメアと再会したこと、それ自体はアイネにとって幸福と呼べる出来事だった。
ただ、ひとつ不幸があったとするなら、
それはアイネ自身が穢れてしまっているという事実だ。
昔から変わらぬ無垢な笑顔を見せるメアに、
アイネは確かな幸せと痛みを感じた。
現在と過去との差は埋めようがなかった。
彼が清純であればあるほどに、自身の穢れは色濃く見えた。
けれど、本当はそんなこと、些細な話だったのだ。
『彼』が内に秘めていた想いの前では……――
「やぁ、あ、あぁんっ、めあ、メアぁ…ッ」
「指だけでそんなに悦んでもらえるなんて、……は、…嬉しいなぁ……俺も挿れてないのにイっちゃいそう」
彼に促されるままに踏み入れてしまった家の廊下。
そこでアイネはメアに犯されていた。うにうにと内壁を刺激するように侵入者はその身を動かしている。
いつしか、ズボンは下ろされ地面へと這いつくばり、最後の砦だったはずの下着すらもすっかり床とお友達になっていた。動きを阻害するものが無くなったメアの指は、僥倖とばかりに無遠慮に、そして執拗にアイネのナカにある気持ちいいところを探り当て臨界点へと高めようとしてくる。
あんなにも離れたかったはずの身体に、もはや縋りつくしかない。
元々すでに抱かれた後だった上に、乾きが癒えず「抱かれたい」と思っていたのだ。そんなところにメアの躊躇いのなく与えてくる快楽は、致命的としか言いようがなかった。乱暴な手つきに、されど感じる痛みはあまりなく、それを上回る悦楽が体を満たす。ナカを擦る動きは手練れを思わせた。
「アイネ、入り口の方で浅く出し入れされるのも好き? 出ていかないで~っていっぱい甘えてくれる」
「あ、やぁ…っ、ふぅ、んんっ」
嗚呼、己の浮かべた幻想に嫌気がさしてくる。なにが「セックスを知らなそう」だ。どう考えたって、これは女を啼かせたことのある者の動きだというのに。童貞では決して分からぬ、女のイイ場所を知っている者のそれだというに。
メアだってもう大学生なのだ。女の一人や二人、知っていたっておかしくない。それがなぜか無性に悲しくて、メアの行いが悲しくて、快楽からか悲哀からかも分からぬ涙で目は潤み雫が頬を伝った。
幸せだった頃の記憶をよすがに生きていた事実を、こんな形で目の当たりにするなんて。
「あ、やだ、や、イっちゃ、やぁぁっ」
「イキそう? うん、いいよ。ほら、クリも触ってあげるからイって」
「ひンッ、やだぁっやめ、あ、あァっ、ゃあぁぁぁっっっ」
宣言通りにクリトリスをぐりぐり弄られて、もはや抑えなど効かなかった。
ビクンッ、と身体は大きく仰け反って、此処がただのマンションの一室であることも忘れて声をあげながら絶頂する。頭の天辺から足の先まで、甘く鋭い電流が駆けていった。イカされた。メアの手によって絶頂した。
その事実に、どこかでまたピキッとヒビが入る音がした。
中イキしたらしく、アイネの男としての象徴である兆しからは何も零れていない。代わりにナカは激しくひくひくと震え、指を締め付ける。身体からは力がすこんと抜けた。自立するだけの力はなく、しなだれかかるようにしてメアに支えてもらう他ない。
「……あぁ、かわいい。イってくれたんだ。……ふふ、あー……ほんとよかった。アイネが妊娠してたらどうしようかと思った」
「んぁ、ぁ……はぁ、……メア……」
まるで恋人だ。胸に寄りかかる恋人の髪を撫で愛でるように、メアはあの逞しくなった片腕でアイネの身体を支えながら空いた片手で髪を梳く。
とくん、とくん、胸に寄せた耳から早鐘を打つ心臓の様子が伝わってくる。昼間抱き寄せられた時よりも熱い体温が、メアの興奮を本物だと教えてくる。
何度否定したくとも、まごうことなき現実は最悪の形でそこにある。
そして、最悪は――なおも行進を続けていくのだ。
ただ、ひとつ不幸があったとするなら、
それはアイネ自身が穢れてしまっているという事実だ。
昔から変わらぬ無垢な笑顔を見せるメアに、
アイネは確かな幸せと痛みを感じた。
現在と過去との差は埋めようがなかった。
彼が清純であればあるほどに、自身の穢れは色濃く見えた。
けれど、本当はそんなこと、些細な話だったのだ。
『彼』が内に秘めていた想いの前では……――
「やぁ、あ、あぁんっ、めあ、メアぁ…ッ」
「指だけでそんなに悦んでもらえるなんて、……は、…嬉しいなぁ……俺も挿れてないのにイっちゃいそう」
彼に促されるままに踏み入れてしまった家の廊下。
そこでアイネはメアに犯されていた。うにうにと内壁を刺激するように侵入者はその身を動かしている。
いつしか、ズボンは下ろされ地面へと這いつくばり、最後の砦だったはずの下着すらもすっかり床とお友達になっていた。動きを阻害するものが無くなったメアの指は、僥倖とばかりに無遠慮に、そして執拗にアイネのナカにある気持ちいいところを探り当て臨界点へと高めようとしてくる。
あんなにも離れたかったはずの身体に、もはや縋りつくしかない。
元々すでに抱かれた後だった上に、乾きが癒えず「抱かれたい」と思っていたのだ。そんなところにメアの躊躇いのなく与えてくる快楽は、致命的としか言いようがなかった。乱暴な手つきに、されど感じる痛みはあまりなく、それを上回る悦楽が体を満たす。ナカを擦る動きは手練れを思わせた。
「アイネ、入り口の方で浅く出し入れされるのも好き? 出ていかないで~っていっぱい甘えてくれる」
「あ、やぁ…っ、ふぅ、んんっ」
嗚呼、己の浮かべた幻想に嫌気がさしてくる。なにが「セックスを知らなそう」だ。どう考えたって、これは女を啼かせたことのある者の動きだというのに。童貞では決して分からぬ、女のイイ場所を知っている者のそれだというに。
メアだってもう大学生なのだ。女の一人や二人、知っていたっておかしくない。それがなぜか無性に悲しくて、メアの行いが悲しくて、快楽からか悲哀からかも分からぬ涙で目は潤み雫が頬を伝った。
幸せだった頃の記憶をよすがに生きていた事実を、こんな形で目の当たりにするなんて。
「あ、やだ、や、イっちゃ、やぁぁっ」
「イキそう? うん、いいよ。ほら、クリも触ってあげるからイって」
「ひンッ、やだぁっやめ、あ、あァっ、ゃあぁぁぁっっっ」
宣言通りにクリトリスをぐりぐり弄られて、もはや抑えなど効かなかった。
ビクンッ、と身体は大きく仰け反って、此処がただのマンションの一室であることも忘れて声をあげながら絶頂する。頭の天辺から足の先まで、甘く鋭い電流が駆けていった。イカされた。メアの手によって絶頂した。
その事実に、どこかでまたピキッとヒビが入る音がした。
中イキしたらしく、アイネの男としての象徴である兆しからは何も零れていない。代わりにナカは激しくひくひくと震え、指を締め付ける。身体からは力がすこんと抜けた。自立するだけの力はなく、しなだれかかるようにしてメアに支えてもらう他ない。
「……あぁ、かわいい。イってくれたんだ。……ふふ、あー……ほんとよかった。アイネが妊娠してたらどうしようかと思った」
「んぁ、ぁ……はぁ、……メア……」
まるで恋人だ。胸に寄りかかる恋人の髪を撫で愛でるように、メアはあの逞しくなった片腕でアイネの身体を支えながら空いた片手で髪を梳く。
とくん、とくん、胸に寄せた耳から早鐘を打つ心臓の様子が伝わってくる。昼間抱き寄せられた時よりも熱い体温が、メアの興奮を本物だと教えてくる。
何度否定したくとも、まごうことなき現実は最悪の形でそこにある。
そして、最悪は――なおも行進を続けていくのだ。
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