5 / 14
手遅れ
しおりを挟む
伸一と悦子が深い関係になってから3か月が過ぎた。
そして、影山と晴美も同じように何度も体を重ねて3か月が過ぎた。
悦子と晴美は変わらずカード募集の仕事を続けていた。
2人が入ってから申込件数は伸び続け、所長からも褒め言葉があったほどだ。
伸一の配慮で異例ではあるが時給が200円アップし1200円になった。
これは2人も喜んだ。
3人でお疲れ会をした時のことである。
晴美のテンションが高かった。
まだ、悦子は伸一との関係を話していなかった。
「ねぇ、2人付き合っちゃえば?」
「えぇっ」
伸一はタバコ吹かしてた。
「いいじゃん、お似合いだと思うよ」
「だって、山咲さん独身でしょ? 悦子も募集中だしぃ、いいじゃん!」
「下田さん、尾美さんとじゃ釣り合わないでしょ?」
「そんな見た目なんて関係ないですよぉ」
酒の勢いもあるのか、妙なハイテンションだった。
晴美がトイレに行ったとき悦子が呟いた。
「なんか…おかしいですよね?」
「俺は初めて見たけど…あんな時もあるんだね」
「いや、なんか変です」
「変?」
「普通の明るさじゃない…なんて言うか…」
「無理してるとか?」
「あっ、それかも知れません。なんかそっちの方が納得しちゃいます」
帰り道。
今日は伸一が業務報告の纏めがあると言って営業所に戻った。
悦子は晴美の妙な素振りを探ろうとした。
「ねぇ、晴美何かあったの?」
「別にぃ…何もないわよ。どうして?」
「だって、この間まで沈んでいたじゃない。それが今日のテンション変だったよ」
「うふふっ…彼が出来たのぉ~」
「えっ?ホント?」
悦子は意外だった。いつもなら悦子に相談があるからだ。
「聞いてないよ、いつから?」
「もう、3か月ぐらいになるの…」
「あっ、そう…どんな人?」
「うん、優しい人よ。アタシと同じような家庭なんだって!」
「ふーん…優しいならいいけど」
晴美はニヤニヤしながら悦子に自慢気な顔をした。
「悦子も遊んでないで、そろそろちゃんと1人の人を愛した方がいいよ」
言い出せなかった。
もう、1人に絞っているのだが。
伸一と関係を持ってから、悦子はそれまでの男連中と付き合わなくなった。
夜の遊びもしていない。
「ねぇ、晴美…ホントに幸せなの?」
「うん、幸せよ。一番幸せかも」
晴美は王子駅で降りた。
悦子は晴美の言葉を素直に喜べなかった。
何かが引っ掛かった。
悦子は部屋に戻ってから伸一に電話した。
ここのところ毎日電話している。
悦子にとって伸一の声を聴くのが日課で、聞けないとストレスが溜まりそうだった。
ちょっとだけエッチな気分にもなる。
「そう、彼氏出来たんだ、じゃあ、いいことだよね」
「そうなんですけど、なんか納得できないんです」
「どういうこと?」
「いつも彼氏作る時は私に相談していたんです。でも、今回は何も言わずに3か月前から付き合ってるって。それはいいんですけど、なんか恋愛関係に思えなくて…」
「そうか…どんな相手なの?」
「優しい人以外言わないんです」
「ふーん、まぁ優しいならいいけどね」
「あっ、ごめんなさい。こんな相談しちゃって」
「いやいや、いいよ。悦子さんの相談は乗ってあげたいしね」
「そうだ、言おうと思ってた事があるんです」
「なんでしょうか?」
「今度から、悦子って呼んで下さい」
「あぁ…」
「一番最初にお願いしてからずっと<さん>づけなんですから!」
「了解です」
「今週なんですけど、また会えますか?」
「そうそう、今週さ2連休なんだよね。泊まる?」
「はい!泊まりたいです」
「寮はまずいから、どっこドライブ先で泊まろうか?」
「はい、楽しみにしてます」
「ちゃんと勝負パンツよろしく」
「えっ!」
「冗談ですよ!」
「…もう!」
「ゴメン、ゴメン」
「…でも、頑張ります」
「おっ!いいね」
「ふふふ…」
「それからさ、来週ちょっと出張入りそうなんだ」
「そうなんですか?」
「研修でね。一泊しなきゃならない」
「……なんか、寂しいです」
「オレもだよ、じゃあ、悦子のパンツでもかな持っていこうかな?」
「えっ……いいですよ」
「ふぁっ?」
「どうしてもと言われるなら…」
「イヤイヤ冗談ですよ」
「だって…」
「なに?」
「それなら浮気しないでしょ?」
「バカ言うな!そんな気ないよ」
「ホントに?」
「でも、いいんですよ、嫌じゃなくて喜んで差し上げます」
「……ちょっと考える。ハハッ…」
「ふふっ…いつでも言って下さいね」
悦子は伸一と話す時は敬語になる。
遊び人でタメ口が当たり前の関係で、しかも年下なのに、その方がしっくりくる事に不思議な感覚を感じてた。
風呂から上がると母親がテレビを見ていた。
「おかーさん、なんかある?」
「ビールならあるわよ」
横に座って髪を拭く。
「なんかさ、エッちゃん変わった?」
「そう?」
「うん、最近スゴく優しい顔してるわよ」
「あ…そーかな?」
トボけたが、明らかに伸一と付き合い出してからなのは分かっている。
「アネキ恋してんだよ」
弟の信行も突っ込んだ。
「うるさい!」
信行は空手5段の腕前で、悦子にとってもいい用心棒になる。
しかし、昔から悦子には頭が上がらない。
悦子は伸一と撮った写真にキスした。
(好きです、大好きですよ。伸一さん)
とても穏やかで、寝ても覚めても伸一が頭にいた。
告白されてないけど、自分から突撃したようなものだから、無くても気にならなかった。
(パンツ欲しいのかな?…)
悦子はタンスを開けて、好きそうなモノを選んだ。
「ふぁーっくしょん!」
部屋でラーメン食べながら、伸一のくしゃみが響いた。
晴美は影山の部屋にいた。
今日も抱かれ精子を飲んだ。
今の晴美は注がれる精子が、自分が保てる薬のように感じていた。
だが、この頃から影山は本性を現し始めた。
食事をした後、会計になって影山は「ワリィ、払っておいて」と放った。
「えっ!う、うん」
それが続いた。
気がつけば、いつも晴美の支払いが当たり前になった。
セックスも変わりだした。
「オラァ!しゃぶれよ」
無理矢理、肉棒を口に捻じ込まれ頭をガンガン振られ、イマラチオもされるようになった。
口に出された精子は顔中にかけられた。
そして終わった後に必ず、晴美を抱きしめて謝った。
影山は俳優になれば成功するぐらい〈泣き〉が上手かった。
どこでも涙を出せる。
「ごめん、ホントにごめん!昔の嫌な思い出が蘇るんだ!すまない!ホントにすまない」
こうして甘える。
晴美はいつのまにか(この人も辛いんだ、私が居ないと死んじゃうかも)と思うようになった。
「…いいのよ、辛いのね」
「ごめん、晴美は悪くないんだ!全部オレのせいなんだ!」
「違うわ、アナタは悪くない…気にしないで」
一度、この思考に入ると抜け出せなくなる。
見捨てたら自分が悪いと思うようになる。
ヒモの手段だ。
影山は、セックスで必ず中には出さない主義だった。
子供なんて出来たら面倒になるだけだ。
だから、顔や口に出していた。
晴美が家を空けて4日が経っていた。
また土曜日。
カード募集で悦子と会った。
「晴美、電話したけど居なかったよね?」
「うん、彼のとこに泊まってたの」
「そう、おばさん心配してたわよ」
「あの人は心配なんてしないわ、私が居なくてせいせいしてるもの」
「そんなことないよ、この間話だけど…」
晴美がキッと悦子を睨んだ。
「違わない!違わないわよ!」
「……」
初めてだった。
こんな目をする子じゃなかった。
いつも優しく寂しい目をしていた。
2人で飲み明かした時は、お互いに泣いて抱き合った事もある。
それ以上言えなくなった。
仕事終わりに、伸一に相談しようか悩んだ。
晴美は定時になり「先に帰るね」と悦子を置いてサッサと出て行った。
片付けてる伸一のもとに行き「今日、時間ないですか?」と聞くと、その顔で察した伸一は「じゃ市川塩浜駅で。迎えに行くから」と言ってくれた。
行徳は海沿いは埋立地だ。
駅からすぐ側に堤防がある。
自販機で飲み物を買って堤防に腰かけた。
何人かの夜釣り人がいる。
「下田さんが?」
「はい、ものすごい目で睨まれて…」
「何か言ったの?」
「そんなおかしな事は…ただ、親の話はマズかったかも知れません」
「仕事上は何時ものような気がしてるけど」
「そうなんです。最近、家にも帰ってないみたいで…晴美も部屋に電話あるんですけど全然出ないから、家の電話にかけたら帰ってないって…」
「うーん、困ったなぁ…」
「ごめんなさい…変な相談して…お仕事に支障は出ないようにしますから」
「それはいいよ、気にしないで!なんとかなるからさ」
伸一の暖かい言葉が沁みた。
「ちょっと調べられないかな?」
「えっ?」
「気になるなら探ってみたら?」
「でも、どうやって?」
「参考になるか…ちょっと気になる事があるんだ。この間の晩飯食べた時なんだけどね」
「何ですか?」
「確かに、あのはしゃぎ方を見て引っ掛かっててね。気のせいかとも思ったんだけど」
「それで?」
「思い出したらさ、確かに似たようなのを見たことがあったんだ。大学の時にどーしよーもない女タラシがいてね、何人ものオンナを囲ってて飯代とかも出させてさ」
「ええっ?」
「俺らから見てても、女連中がそれでもくっ付いてるのが理解出来なくてね。何人かと話したことがあるんだ、そしたら、そいつの話するだけで喜ぶ顔するんだよ。その顔とよく似ていた」
「…」
「その時は理解できなかったけど、もしかしたらその彼氏絡みじゃないかな?」
「なるほど」
「思い出して考えすぎか、と思ったけどね」
「彼氏ですか…確かにあるかも」
「可能性あるよ」
「分かりました、調べてみます」
「何か分かったら連絡してくれる?」
「はい、ありがとうございます!」
「よし、送るわ!」
「あっ、電車で帰れます」
「バカ言うな!こんな時間に悦子1人で帰らせられないだろう」
「あっ…はい」
「…それに、まだ一緒に居たいしね」
悦子はその言葉を待っていた。
待っていた言葉を言ってくれる、だから伸一の事が心底好きなんだと実感する。
家に着いて悦子は小さな紙袋を渡した。
「はい、これ」
「なにこれ?」
「帰ったら開けて下さいね、今は恥ずかしいから…おやすみなさい」
「おやすみ」
キスして別れた。
部屋に戻ってシャワーも終えた伸一は、テーブルの紙袋を開けた。
「げっ!パンツ…だ」
メモが添えてある。
〈これで良ければ使って下さいね。大好きです。悦子〉
「気が利きすぎ…悦子ちゃん…」
そして、影山と晴美も同じように何度も体を重ねて3か月が過ぎた。
悦子と晴美は変わらずカード募集の仕事を続けていた。
2人が入ってから申込件数は伸び続け、所長からも褒め言葉があったほどだ。
伸一の配慮で異例ではあるが時給が200円アップし1200円になった。
これは2人も喜んだ。
3人でお疲れ会をした時のことである。
晴美のテンションが高かった。
まだ、悦子は伸一との関係を話していなかった。
「ねぇ、2人付き合っちゃえば?」
「えぇっ」
伸一はタバコ吹かしてた。
「いいじゃん、お似合いだと思うよ」
「だって、山咲さん独身でしょ? 悦子も募集中だしぃ、いいじゃん!」
「下田さん、尾美さんとじゃ釣り合わないでしょ?」
「そんな見た目なんて関係ないですよぉ」
酒の勢いもあるのか、妙なハイテンションだった。
晴美がトイレに行ったとき悦子が呟いた。
「なんか…おかしいですよね?」
「俺は初めて見たけど…あんな時もあるんだね」
「いや、なんか変です」
「変?」
「普通の明るさじゃない…なんて言うか…」
「無理してるとか?」
「あっ、それかも知れません。なんかそっちの方が納得しちゃいます」
帰り道。
今日は伸一が業務報告の纏めがあると言って営業所に戻った。
悦子は晴美の妙な素振りを探ろうとした。
「ねぇ、晴美何かあったの?」
「別にぃ…何もないわよ。どうして?」
「だって、この間まで沈んでいたじゃない。それが今日のテンション変だったよ」
「うふふっ…彼が出来たのぉ~」
「えっ?ホント?」
悦子は意外だった。いつもなら悦子に相談があるからだ。
「聞いてないよ、いつから?」
「もう、3か月ぐらいになるの…」
「あっ、そう…どんな人?」
「うん、優しい人よ。アタシと同じような家庭なんだって!」
「ふーん…優しいならいいけど」
晴美はニヤニヤしながら悦子に自慢気な顔をした。
「悦子も遊んでないで、そろそろちゃんと1人の人を愛した方がいいよ」
言い出せなかった。
もう、1人に絞っているのだが。
伸一と関係を持ってから、悦子はそれまでの男連中と付き合わなくなった。
夜の遊びもしていない。
「ねぇ、晴美…ホントに幸せなの?」
「うん、幸せよ。一番幸せかも」
晴美は王子駅で降りた。
悦子は晴美の言葉を素直に喜べなかった。
何かが引っ掛かった。
悦子は部屋に戻ってから伸一に電話した。
ここのところ毎日電話している。
悦子にとって伸一の声を聴くのが日課で、聞けないとストレスが溜まりそうだった。
ちょっとだけエッチな気分にもなる。
「そう、彼氏出来たんだ、じゃあ、いいことだよね」
「そうなんですけど、なんか納得できないんです」
「どういうこと?」
「いつも彼氏作る時は私に相談していたんです。でも、今回は何も言わずに3か月前から付き合ってるって。それはいいんですけど、なんか恋愛関係に思えなくて…」
「そうか…どんな相手なの?」
「優しい人以外言わないんです」
「ふーん、まぁ優しいならいいけどね」
「あっ、ごめんなさい。こんな相談しちゃって」
「いやいや、いいよ。悦子さんの相談は乗ってあげたいしね」
「そうだ、言おうと思ってた事があるんです」
「なんでしょうか?」
「今度から、悦子って呼んで下さい」
「あぁ…」
「一番最初にお願いしてからずっと<さん>づけなんですから!」
「了解です」
「今週なんですけど、また会えますか?」
「そうそう、今週さ2連休なんだよね。泊まる?」
「はい!泊まりたいです」
「寮はまずいから、どっこドライブ先で泊まろうか?」
「はい、楽しみにしてます」
「ちゃんと勝負パンツよろしく」
「えっ!」
「冗談ですよ!」
「…もう!」
「ゴメン、ゴメン」
「…でも、頑張ります」
「おっ!いいね」
「ふふふ…」
「それからさ、来週ちょっと出張入りそうなんだ」
「そうなんですか?」
「研修でね。一泊しなきゃならない」
「……なんか、寂しいです」
「オレもだよ、じゃあ、悦子のパンツでもかな持っていこうかな?」
「えっ……いいですよ」
「ふぁっ?」
「どうしてもと言われるなら…」
「イヤイヤ冗談ですよ」
「だって…」
「なに?」
「それなら浮気しないでしょ?」
「バカ言うな!そんな気ないよ」
「ホントに?」
「でも、いいんですよ、嫌じゃなくて喜んで差し上げます」
「……ちょっと考える。ハハッ…」
「ふふっ…いつでも言って下さいね」
悦子は伸一と話す時は敬語になる。
遊び人でタメ口が当たり前の関係で、しかも年下なのに、その方がしっくりくる事に不思議な感覚を感じてた。
風呂から上がると母親がテレビを見ていた。
「おかーさん、なんかある?」
「ビールならあるわよ」
横に座って髪を拭く。
「なんかさ、エッちゃん変わった?」
「そう?」
「うん、最近スゴく優しい顔してるわよ」
「あ…そーかな?」
トボけたが、明らかに伸一と付き合い出してからなのは分かっている。
「アネキ恋してんだよ」
弟の信行も突っ込んだ。
「うるさい!」
信行は空手5段の腕前で、悦子にとってもいい用心棒になる。
しかし、昔から悦子には頭が上がらない。
悦子は伸一と撮った写真にキスした。
(好きです、大好きですよ。伸一さん)
とても穏やかで、寝ても覚めても伸一が頭にいた。
告白されてないけど、自分から突撃したようなものだから、無くても気にならなかった。
(パンツ欲しいのかな?…)
悦子はタンスを開けて、好きそうなモノを選んだ。
「ふぁーっくしょん!」
部屋でラーメン食べながら、伸一のくしゃみが響いた。
晴美は影山の部屋にいた。
今日も抱かれ精子を飲んだ。
今の晴美は注がれる精子が、自分が保てる薬のように感じていた。
だが、この頃から影山は本性を現し始めた。
食事をした後、会計になって影山は「ワリィ、払っておいて」と放った。
「えっ!う、うん」
それが続いた。
気がつけば、いつも晴美の支払いが当たり前になった。
セックスも変わりだした。
「オラァ!しゃぶれよ」
無理矢理、肉棒を口に捻じ込まれ頭をガンガン振られ、イマラチオもされるようになった。
口に出された精子は顔中にかけられた。
そして終わった後に必ず、晴美を抱きしめて謝った。
影山は俳優になれば成功するぐらい〈泣き〉が上手かった。
どこでも涙を出せる。
「ごめん、ホントにごめん!昔の嫌な思い出が蘇るんだ!すまない!ホントにすまない」
こうして甘える。
晴美はいつのまにか(この人も辛いんだ、私が居ないと死んじゃうかも)と思うようになった。
「…いいのよ、辛いのね」
「ごめん、晴美は悪くないんだ!全部オレのせいなんだ!」
「違うわ、アナタは悪くない…気にしないで」
一度、この思考に入ると抜け出せなくなる。
見捨てたら自分が悪いと思うようになる。
ヒモの手段だ。
影山は、セックスで必ず中には出さない主義だった。
子供なんて出来たら面倒になるだけだ。
だから、顔や口に出していた。
晴美が家を空けて4日が経っていた。
また土曜日。
カード募集で悦子と会った。
「晴美、電話したけど居なかったよね?」
「うん、彼のとこに泊まってたの」
「そう、おばさん心配してたわよ」
「あの人は心配なんてしないわ、私が居なくてせいせいしてるもの」
「そんなことないよ、この間話だけど…」
晴美がキッと悦子を睨んだ。
「違わない!違わないわよ!」
「……」
初めてだった。
こんな目をする子じゃなかった。
いつも優しく寂しい目をしていた。
2人で飲み明かした時は、お互いに泣いて抱き合った事もある。
それ以上言えなくなった。
仕事終わりに、伸一に相談しようか悩んだ。
晴美は定時になり「先に帰るね」と悦子を置いてサッサと出て行った。
片付けてる伸一のもとに行き「今日、時間ないですか?」と聞くと、その顔で察した伸一は「じゃ市川塩浜駅で。迎えに行くから」と言ってくれた。
行徳は海沿いは埋立地だ。
駅からすぐ側に堤防がある。
自販機で飲み物を買って堤防に腰かけた。
何人かの夜釣り人がいる。
「下田さんが?」
「はい、ものすごい目で睨まれて…」
「何か言ったの?」
「そんなおかしな事は…ただ、親の話はマズかったかも知れません」
「仕事上は何時ものような気がしてるけど」
「そうなんです。最近、家にも帰ってないみたいで…晴美も部屋に電話あるんですけど全然出ないから、家の電話にかけたら帰ってないって…」
「うーん、困ったなぁ…」
「ごめんなさい…変な相談して…お仕事に支障は出ないようにしますから」
「それはいいよ、気にしないで!なんとかなるからさ」
伸一の暖かい言葉が沁みた。
「ちょっと調べられないかな?」
「えっ?」
「気になるなら探ってみたら?」
「でも、どうやって?」
「参考になるか…ちょっと気になる事があるんだ。この間の晩飯食べた時なんだけどね」
「何ですか?」
「確かに、あのはしゃぎ方を見て引っ掛かっててね。気のせいかとも思ったんだけど」
「それで?」
「思い出したらさ、確かに似たようなのを見たことがあったんだ。大学の時にどーしよーもない女タラシがいてね、何人ものオンナを囲ってて飯代とかも出させてさ」
「ええっ?」
「俺らから見てても、女連中がそれでもくっ付いてるのが理解出来なくてね。何人かと話したことがあるんだ、そしたら、そいつの話するだけで喜ぶ顔するんだよ。その顔とよく似ていた」
「…」
「その時は理解できなかったけど、もしかしたらその彼氏絡みじゃないかな?」
「なるほど」
「思い出して考えすぎか、と思ったけどね」
「彼氏ですか…確かにあるかも」
「可能性あるよ」
「分かりました、調べてみます」
「何か分かったら連絡してくれる?」
「はい、ありがとうございます!」
「よし、送るわ!」
「あっ、電車で帰れます」
「バカ言うな!こんな時間に悦子1人で帰らせられないだろう」
「あっ…はい」
「…それに、まだ一緒に居たいしね」
悦子はその言葉を待っていた。
待っていた言葉を言ってくれる、だから伸一の事が心底好きなんだと実感する。
家に着いて悦子は小さな紙袋を渡した。
「はい、これ」
「なにこれ?」
「帰ったら開けて下さいね、今は恥ずかしいから…おやすみなさい」
「おやすみ」
キスして別れた。
部屋に戻ってシャワーも終えた伸一は、テーブルの紙袋を開けた。
「げっ!パンツ…だ」
メモが添えてある。
〈これで良ければ使って下さいね。大好きです。悦子〉
「気が利きすぎ…悦子ちゃん…」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる