Cry for the moon

Yamato

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第1章 別れ道

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「どうしてなんだ!?」神居信金の本店ロビー中に響く怒号が飛んだ。
「いや…神田さん、落ち着いてください」担当の貝原が必死になだめる。
「これが落ち着いていられるか!! 融資出来ないとはどういうことだ?」
「もう、御社への融資枠が限界なんです。これ以上は…」
「バカヤロー!!融資が無いとウチは倒産なんだよ、もうアサヒ中央家具店が破産して売掛が清算出来ないんだ」
「それは分かります…しかし…」
「しかしもかかしもあるか!1000万だぞ!? この売掛の金が入ってこないんだ。このままじゃ潰れるんだよ!!」

北海道旭川市は地元の名産として「家具」の製造に長けていた。堅牢で使うほど風合いを増す家具は「嫁入り道具」としても重宝された。
実際に市内に家具関係の会社は類を見ないほど沢山あった。
しかし、本州からきた格安家具店の「クローバー」が3店舗同時出店という力技で旭川に乗り込んできた。
中国製で見栄えだけが良い家具だが、若い世代に良く売れた。
最初は市内大手の家具店である「四条タンス店」が倒産し、お抱えの製造会社である中和木工も連鎖で不渡手形を出すハメになった。
神田の経営する「旭川家具木工」のメイン取引は老舗のアサヒ中央家具店である。
<寝耳に水>という言葉がぴったりくるような倒産だった。
既に、神居信金からは2000万の融資を受けており、会社の土地・建物・神田の自宅まで抵当が貼り付いていた。
もう融資を受けるだけの余力が無いことは明らかだった。

貝原は神田に座るように懇願しボソッと耳打ちをした。
「…神田さん、これは聞かなかった事にして下さい。私は苦しかった時に神田さんに助けられた恩があります。
それは忘れてません。なのでこれから話すことは絶対に誰にも言わないでください」
貝原の手が神田の肩を掴んだ。尋常ではない力に神田は眉をひそめた。
「なっ、なんだ?」
「申し訳ないが、もう社長の会社は救えません。融資を受けるだけの資産もありません。ですから、在庫でもなんでも現金化出来るものは全て金に換えて下さい。その金でどこかに身を隠して下さい」
「えっ?…それって」
貝原が静かに頷いた。
「逃げるんです」
「逃げる…?そんなバカな事が…」
貝原は静かに力強く話した。
「私たちが御社の担保を清算すれば1500万にはなります。実損は500万円程度で済みます。これに今までの金利を計算すれば充分にプラスになります。私たちはヤクザではない…社長が逃げても追うことはしません。そのお金で新たに出発すればいいんです」
「しかし…それじゃ…社員はどうなる?」
「現金化した金を社員に配っても大した金にはなりません。それなら社長とそのご家族が救われる方が価値があります…」
「オレに社員を見捨てろと…」
貝原は決めろ、と言わんばかりに頷いた。
この瞬間、神田の心は会社を救う思いから自分と家族の被害を食い止める事に移っていた。
「社長…これからは時間との勝負です。まだ不渡りが出ていませんから銀行は何も出来ません。今のうちに預金を引き出して別の銀行に預けて下さい。不渡りが出たら預金は差し押さえられます」
「あっあぁ…分かった。そ、それでどうすれば?」
「在庫は全て現金化して下さい。逃げる前日の夜に業者にきてもらい買い取ってもらうんです」
「この間、伺った時に在庫を見させてもらいました。預金と合わせると200万ぐらいにはなります」
「だが、アンタは大丈夫なのか?そんな入れ知恵して…」
「私は大丈夫です。恩を返すのが今なんです。どのみち社長は逃げたとなれば銀行も諦めます」
神田は少し考えてから貝原の提案を受けることにした。
「わかったよ…」
貝原は神田が帰ったのを見届けてから上司の中島に報告した。
「提案どうだった?」
「はい、受け入れました」
「よし!これであの土地はクローバーに売れるな…」
「ですね、今なら2500万で売れますからね」
「まさか、あの土地をクローバーが欲しがってるとは予想もしないだろう?」
「課長の描いた図は完璧ですね」
「神田とクローバーの接触だけは避けたかったしな…まぁ、200万は惜しいが、それに時間を取られると、クローバーが神田に話す危険がある。そうなりゃ、ウチの取り分は少なくなる。1000万の利益に社長の家を叩き売れば1800万にはなるだろう。こんな美味しい話は滅多にないからな」

時間は半年前に遡る。

神居信金の融資課長である中島のもとに、クローバー家具の経営企画室長の横沢が現れた。
全国企業が地元の信金に来ることは無いが、当初は融資の申し込みかと思われた。
「あのどういったお話で…?」
「既に私どもは旭川市内に3店舗の出店を実現しました」
「はい、存じております」
「実は、本当なら4店舗の出店を計画していたんです」
「はぁ…」
「これをご覧ください」
横沢は、テーブルの上にバサッと旭川市内と近郊の地図を広げた。
よく見ると黒丸と赤丸がポツポツと書かれている。
「これは…?」
「旭川市内および近郊の地図です。黒丸が私どものクローバーの店で、赤丸が地元の家具店さんと下請け会社さんの位置になります。よくご覧ください」
横沢の言葉通りに全体を見てもよく分からなかった。
「当初、我々はローンバス計画と呼んでいました。つまり東西南北に店を出してその中にある地元の家具店
を包囲する、という計画です」
確かに、地図の黒丸はひし形が欠けているようになる。
「残る場所は旭川の東側でした。しかし、このあたりは田畑が多く出せる土地が無かったのです」
「はぁ…なるほど」
「そこで、私どもが目を付けた土地がここです」
指先の赤丸には「旭川家具木工」と書かれている。
「しかし、ここは…」
「はい、調べてみたら御行の抵当に入っていることが分かりました。ということは御行からの融資があると
思います。そこでここが倒産の折には、土地を売って頂きたいのです」
やっと思惑を理解した。
「ですが、倒産といってもいつになるか分からないですよ」
横沢は自信ありげに答えた。
「そんなに長いことかかりませんよ。アサヒ中央家具さんの売上も激減していますから…
すぐに対応していただいた場合、土地取得代として2500万を用意します」
「えっ!!!? 」驚くのも無理はない。相場よりかなり高い。
「でも、どうしてそこまでする必要があるのですか?」
「旭川市は全国でも家具の街で知られています。そこで我々の価値が認められる、ということは全国展開する上で<顔>に出来るんですよ」
「そういうものですか?」
「はい、コマーシャルになるんです。2500万なんて安いものです…」
その後、横沢の予告通りにとなった。


二階堂進は中卒で旭川家具木工に入って10年になる頃-
スナックのホステスをしていた輝美と結ばれた。
間に二卵性の双子が生まれ「洋介」「準」と命名し3才になる。
裕福ではないものの、ずっと真面目な進に輝美は幸せを感じていた。
しかし、アサヒ中央家具店の倒産は輝美の心にも不安の影を落としていた。

神田が貝原の提案を受けた夜。
「ねぇ、アナタ…アサヒ中央家具店が倒産して大丈夫なの?」
輝美は焼酎の水割りをこしらえながら呟いた。
「うん、経理の矢田さんは売掛の1000万が入ってこないのが不安だって…」
「それが入ってこないとどうなるの?」
つまみのキュウリの角切りを放り込んだ。
「…分からないよ。オレには…」
「社長は何て言ってるの?」
「神居信金が貸してくれるから大丈夫だって。それに賭けるしかないかもな…」
「…心配だわ」
「何とかなるよ…」グイッと残った焼酎を一気に飲み干した。
輝美の心配は3日後に的中する。

旭川の夏は短い。大雪山にうっすらと残る雪を見ながら進は、いつもの通勤路を走らせていた。
会社に入ると、いつもは開いている工場のシャッターが閉まっていた。前に人だかりがいた。
「どうしたんですか?」安田が青ざめた顔で進に振り返った。
「…進、見てみろ…」
濃いグレーのシャッターに白い紙が張り付いていた。
[本日をもって旭川家具木工は閉鎖する事となりました。従業員の方には申し訳ありません。神田新吉]
(えっ…)
「社長はどこだ!!!?」
武藤が叫んだ。工場も事務室にもいなかった。
安田や他の社員もくまなく探したが、いる訳もなかった。そもそも、居るなら貼り紙なんてしない。
「オイ!武藤!」
奥の材木室から安田の声がした。
進と武藤が走った。
目の前の光景に言葉を失った。
昨日まで積まれていた材木が、一本も無くなり少しの木屑が転がってた。
「あの野郎…材木を売りやがったな…」
「…どういうことですか?」
進は何がなんだか分からなくなっていた。
「社長が潰れると知ってて、金に変えたんだよ!」
「でも、銀行が貸してくれるからって…」
「貸してくれなかったんだよ。だから、材木売って逃げたんだ」
その時、入り口の方で事務員の叫ぶ声が響いた。
「何ですか?アナタ達は?」
進達が戻ると、そこにはスーツ姿の男達が数人立っていた。
「神居信金の貝原といいます。昨日、御社の手形が不渡になりました。従いまして、担保となっている土地、建物、重機類は全て差押えとなります。従業員の方達はその場から離れて下さい」
カバンから紙を出して、次々と差押え状を貼り付けた。
「オイ!ちょっと待てよ!」
安田は悔しさと怒りを貝原にぶつけた。
「放してください!私たちは契約に乗っ取って実行しているまでです、これ以上の妨害行為は警察に届け出る事になりますよ!」
そう言われると何も出来なかった。社員たちは、ただ貝原達の行動を見つめるしかなかった。

ガラガラと玄関の引き戸の音に気づいて輝美が顔を出した。
「あれっ、どうしたの?忘れ物?」
生気の無い進の顔を見て、輝美が悟った。
「…まさか?」
進は無言のまま、居間に力無く座った。
「ねぇ!どうしたの?」身体を揺すられ進は輝美を見つめた。
「…社長が…逃げた…」
その言葉はとても冷たく、そして無機質な鉄塊のように感じた。
「そんな…逃げたって…」
途切れ途切れに進は、会社で見た光景を話した。輝美の目には涙が浮かび、頬をつたってエプロンに染みた。
「…これからどうするの?」
一気に不安の波が押し寄せる輝美の言葉に返せるものはなかった。
「洋介も準もまだ3歳なのよ…」
「わかってるよ!そんなこと」
進はどうしていいか、考える余裕などなかった。
ただ輝美の言葉に返せない自分に腹が立っていた。
外では蝉の鳴き声が響き、それすらも釘を打たれるかのように感じた。

翌日ー
職安に進はいた。少し遅れて安田や武藤の姿も見えた。
少しの救いは、まだ若い事だった。26歳の進は求人欄を漁るように見たが、どれも高卒以上が条件で、中卒の進はどんなに優れていても窓口で止まってしまう。
毎日行っても求人欄は、毎週火曜日にしか更新されない。
一日中職安に居ても、面接すら受けられなかった。
進の心は、だんだんと暗くなっていった。仕方なく日雇いの仕事を探したが、不況の旭川で数が少なく、経験者が優遇されており進まで回って来なかった。

「今日もダメだった…」
「うん、何とかなるわよ…」
この頃から進は、職安から戻ると酒を飲むようになった。輝美は何度も止めたが言う事を聞いてはくれない。
飲んでは寝て、を繰り返した。そしてとうとう職安にも行かなくなった。
「職安に行かないの?」
「どうせ無いんだよ!俺みたいな中卒なんてどこも雇ってくれないんだよ」
「でも、このままじゃ…」
すがる輝美に進は、怒りをぶつけてしまった。
「うるせぇ、お前に何がわかる!!!」
ショックを受けた輝美は台所に消えた。
「チッ…」
家にも居づらくなった進は、飲みに出るようになった。昼に起きて酒を煽り、そのまま夕方には出て行ってしまった。
戻るのは朝方だった。
ツケで酒場を渡り、溜まると踏み倒すようになった。
輝美は、それでも進の帰りを待った。
(…どうしちゃったの…)
寝ている洋介と準を見ながら、居ない進に問いかけた。
そんな輝美の思いを知らず、進は街中で酔っ払いの喧嘩に巻き込まれた。
相手をボコボコにしてしまい、その場から逃げた。
酔いが冷めた進の視界に、クローバー家具店のネオンが飛び込んできた。
全てを奪った会社が目の前にある。
怒りと憎しみ、そしてぶつけようの無い憤りが一気に爆発した。
フラフラと店の裏に回ると、一台のトラックが見えた。
荷台を見ると、満タンに家具と材木が積んであった。
(チクショウ…)
ポケットからライターを取り出し、薄い材木を着火材にして火を付けた。
旭川の夏は本州と違い湿気が少ない。
火はすぐに大きくなり、積んでいる材木に燃え移った。
トラックの荷台は火の塊となり、進の暗い心を溶かすように燃えた。
笑った。進は転げながら笑った。それは子供の無邪気な笑いに似ていた。

輝美が電話に出た時、何を言われてるか理解出来なかった。
「…す、すいません、どういう…」
「ですから、二階堂進という男性が放火で逮捕されました。今は中央警察署で身柄を拘束しています。旦那さんですよね?」
「ほ…放火、ですか?」
「はい、クローバー家具の四条店にある裏のトラックに火を付けたんです。事情をお聞きしたい事もあるので、こちらに来られませんか?」
「被害は…?」
「幸いトラックが燃えただけで済みました。怪我人も死亡者もいません」
輝美はコマ切れに息を吐いた。
「…分かりました。これから…向かいます」

夜中の1時近くに、輝美は中央警察署に着いた。
受付の警察官は、名前を聞いてから案内した。
面談室で待つように指示された。
待ってる間、輝美はウソだと信じたかった。何かの間違いだと。
1人の中年の刑事らしき人物が、鋭い目付きのままで入ってきた。
「えーと、二階堂輝美さん?」
「は…はい」
「二階堂進さんは旦那さんですよね?」
「はい、あの…本当に…?」
「残念ながら、旦那さんが間違い無く放火犯です。先程自供しました」
「あの、会えるんでしょうか?」
「今は無理です、調書をとってから拘置所に護送されます。そこでなら面会は可能ですが…」
淡々と話す刑事は、こういう会話に慣れているようだった。
「なぜ、なぜ主人はこんな事を…」
刑事は胸元からタバコを取り出し、火を付けて大きく煙を吐いた。
漂う煙は、まるで輝美の心のようだった。
「んー、会社が潰れてヤケになっていたようですな。ご存知でしたか?」
「突然、会社が倒産して仕事を探していたのですが…中卒という事で中々見つからず…」
「なるほど、それで?」
「そのうちお酒を飲むようになって、職安にも行かなくなって…」
「そうでしたか…まぁ、よくある原因なんですが、幸い死亡者も怪我人も出ていませんから、二、三年で出られると思います」
「あ…あの、どうしたら…」
言葉が見つからなかった。それを知りつつ刑事は、淡々と進めた。
「奥さんの証言とほぼ一致してますし、今日はお帰りください。署の者に送らせますから」

帰りの車の中で、何を思ったから覚えてなかった。
気がつくと家の玄関に座り込んでいた。
何も考えられなかった。涙さえも出なかった。
その晩は居間で、横になっても寝られず大雪山の向こうから顔を出した朝日をボンヤリ眺めていた。
洋介と準だけが変わらず、いつもの笑顔を見せてくれた。それだけが輝美の支えになった。
夕方に新聞が届いた。夕刊を捲ると進の起こした放火事件が小さく載っていた。
そこには[二階堂進]の文字がクッキリと書かれていた。
翌日から輝美は世間の冷たい洗礼を浴びる事になる。

昼前に洗濯を済ませて、居間でお茶を入れてた時に突然、窓ガラスが割れた。
反射的に身を翻した。何か白い塊が飛び込んできた。
ガラスのカケラを避けながら、よく見ると紙に包まれた石だった。
〈放火魔はどこかヨソにいけ!〉
それだけ墨字で書かれていた。
ワナワナと震えが止まらなくなった。
この時になって、初めて涙が出た。
(なんで…どうして…?)
誰かは分からないが、この家を知ってる人間は近所の誰がだ。
破片を片付けて、輝美は洋介と準を連れて買い物に出かけた。
スーパーには顔馴染みがそれなりにいる。昨日まで普通に挨拶してきた人達も、まるで腫れ物を見るような冷たい視線を浴びせた。レジのパートの笑顔も無く、さっさと帰れ!と言わんばかりの仕草だった。
スーパーを出た所で、三軒隣の大西冨佐子が大声で話しかけてきた。
「輝美さん、アンタの旦那はとんでもない事をしたなぁー、アンタもアンタだわ、よく買い物なんて出来るなぁー!」
それがキッカケだった。
「そうだ!出て行けよ!」
「この犯罪者!」
「今度はどこを燃やすんだ?ああっ!」
「子供も放火魔にするんか!?」
容赦無い罵声が輝美に向けられた。
たまらなくなった輝美は逃げるように、その場を去った。
「ままぁ、放火魔ってなぁーに?」
洋介の言葉に崩れそうになった。
(…もう、いられない…)
必死に込み上げる嗚咽を飲み込み、洋介と準を抱きしめた。

「お父さん…もう、だめかも知れない…」
輝美は美瑛町の実家に電話した。
「旦那がバカな事をするからだ…帰ってこい」
泰三は輝美の気持ちを察した。
「ごめんなさい…お父さん、もう居場所が無いの」
「わかってる、こっちは知ってるもんがいないから、なんとかなるさ」
輝美が進と結婚した事実を知る者は美瑛にはいない。

進が拘置所に送られると同時に、輝美は美瑛の実家に越した。問い合わせると面会が可能になり
輝美は久しぶりに夫の顔を見た。
かなりやつれて口の周りは無精ヒゲが伸びていた。たった数週間なのに別人に見える。
「身体、大丈夫?」
進は黙っていた。
「どうしてあんな事したの?」
答えなかった。
「私達は…家も住めなくなったわ。洋介も準もアナタの帰りを待ってる…」
反応が無い進の表情に輝美は怒りが込み上げてきた。
「なんとか言ってよ!」
黙り込む進に輝美の中で何かが切れた。
「…もういい、もういいわ」
輝美は立ち上がり、面会室を出る時に進がボソッと呟いた。
「…すまない」
泣きながら輝美は、進の顔も見ずに出て行った。

それから3日後ー

進は暗く狭い拘置所の一室で、短い人生を自ら絶った。
夏の終わりで、少し涼しくなる頃だった。

秋口も深まると、美瑛も米の収穫が忙しくなる。輝美の実家も農家で、漏れなく朝から田んぼで収穫を急いでいた。
だが毎年、米の価格は農協に叩かれ生活も大変だったが、この年は特に酷かった。
この頃の北海道米の評価は良くない。
農協は何とか本州に売り出したかったが、新潟のコシヒカリブランドに勝てず、更には秋田こまちの品質が高くなり、その煽りを食らった。結局、弁当に使われる程度にしかならず業者に買い叩かれる。そのシワ寄せは農家を直撃した。

輝美の実家も、全員を養えるだけの余力は無いに等しかった。
「輝美…話があるんだが…」泰三が深刻な顔で呼びかけた。
「うん…」
「お前も分かってると思うが、今年は特に米の卸価格が安かった…」
輝美は黙って聞いていた。
「母さんと2人なら何とかなるが、お前や子供達を養えるだけの金が無いんだ」
進が自殺してから、その葬式費用も泰三達の僅かな貯金から負担している。
「私達、どうしたらいい…?」
泰三は重い口を開いた。
「洋介か準のどちらか里子に出したら…と」
「えっ⁉︎ どっちか見捨てるってこと?」
予想外の言葉に輝美は驚きを隠せない。
「…そうだ、だが見捨てるんじゃない…余裕のある家庭に引き取ってもらうんだ」
「そんな…兄弟なのよ、それを引き裂くの?お父さん、正気なの?」
「オレだって、そんなことやりたくないさ。
だが、このままじゃみんな路頭に彷徨うことになるだけだ!」
「まだ3歳なのに…そんなツラい事させるのなんて耐えられない…」
輝美の思いはもっともだ。その時、母親の直子が挟んだ。
「輝美、わかって!私もお父さんも悩んで悩んで出した結論なの…こんな田舎じゃアナタの働く口も無いのよ」
輝美の目から涙が止まらなかった。
「…じゃあ、私達がここを出て行けばいいのよね?」
「バカ言わないで!放火して勝手に死んだ旦那の事を忘れたの?アンタがまた戻れば非難されるのは目に見えてるじゃない!洋介と準をもっと辛い目に合わせたいの?」
家を追われた時の、周りの見る目が輝美の頭にフラッシュバックした。
「札幌とか函館とか…遠くなら分からないわよ…」
「そんな知り合いも誰もいない所で、女手ひとつで無理よ!」
直子は猛反対した。
それは、輝美の心境をよく理解していたからだ。今の輝美には家族が側にいる事が必要だった。
進が自殺した連絡が来た日。輝美は崩れ落ちるように倒れた。食事もとれず、病院で点滴治療で持ちこたえた。生活出来るぐらい回復したものの、その傷は未だに癒えていない。
「でも、2人を引き離すなんて考えられないわ…」
「それしかないのよ…このままだと生活が出来ないの!」
そこから誰も口を開かなくなった。

結論が出ないまま3日が過ぎた。直子は里子の仲介をしている知り合いに聞いてみた。
すると静岡のある資産家で男の子を探しているという話を聞いた。輝美には内緒で引き受けてくれるのか、
聞いてもらうことにした。里子を探しても条件が折り合わないと中々需要と供給が合致することは少ない。
なぜなら、小学高学年や中学生になるとある程度の人格形成が出来てしまう。そこから矯正するのは難しい。
引き取り手が望むのは幼少の子が望まれる。しかし、そういう需要は多いため、たとえ金を払ってでも
欲しがる現状があった。これは必要悪とも言えるものだった。
その静岡の資産家の条件は5歳以下の男子だった。
そんな時、タイミング悪く家に借金取りが現れた。輝美たちの食い扶持が増え、作物も買いたたかれる中で
どうしても必要な借金だったが、既に一か月分の支払をジャンプしていた。輝美たちは買い物に出ていた。
「いい加減、払ってもらえませんかね?先月分だけでもいいから…」
泰三は土下座して詫びた。
「すいません。どうしても工面出来なかったんです。来月まで待ってくれませんか?」
「あのねぇ、今月工面出来ない人が、どうやったら来月工面できるのよ?」
「いや…それは、あの…」泰三の口が閉じた。
横から直子がたまらず叫んだ。
「実は、孫を一人里子に出します。それで入ってくるお金から返します」
誰もが予想もしない言葉に息をのんだ。
「アンタ、孫を売って金を作るのか?」
「仕方無いんです。このままでは食べていけないので出すしかないんです。そこでお金を工面します」
「まぁ、金が払えるなら問題ないよ。今月末にまた来るからそれまで用意しておけよ」
借金取りはそのまま帰っていった。
本来、こんな人身売買のようなことは許されるはずがない。だが、後が無い家族に唯一凌げる方法だった。

買い物から戻った輝美に尚子と泰三は説得を続けた。
だが、頭ではわかっていても母親としての本能が拒否していた。
何度話しても顔を頑なに左右に振るだけだ。
尚子と泰三は苦渋の決断をせざるを得なくなった。
輝美に旭川での用事を頼んだ。子供たちは連れていけないため一人で出かけさせた。
尚子はその間に仲介役にきてもらい洋介と準を見てもらうことにした。
双子のどらかを選ぶことにし、兄の洋介が選ばれた。
それから一週間後に静岡の資産家に来てもらい、輝美が買い物に出かけている隙に洋介は引き取られていった。
実に呆気なく別れを惜しむ間もなく洋介はいなくなった。

この事実を知った輝美は、あまりにショックで両親と口を聞かなくなった。
そして、借金を返済するために洋介を里子に出したことを知り、親を憎みながら準を連れて家出する。
居間のテーブルには「あなたたちを恨みます」とだけ書かれていた。
これ以降、輝美は親との連絡を絶ち二度と戻ることはなかった。

輝美は準を連れて札幌で生活することにした。
補修人なしでも借りれるアパートに居を構え、昼も夜も働いて少しでも不便にない生活を送れるように
身を粉にした。
生活のために、準のために働いてきたがいつまでも楽にならない環境に心が徐々に荒み始めた。
準が中学生の頃になると、あるスナックの客が3万円を出すから…とになり身体を求められたことがあった。
はじめは嫌だったが、僅かな時間で得られる大金に目がくらみ、昼の仕事を辞めて男と寝る時間に充てるようになった。
そんな時はアパートの部屋で行為をしていて、それが当たり前になると準は学校から家には帰らず図書館で
勉強していた。
心で輝美を見下げはじめ、この環境から絶対に抜け出すために勉強に打ち込むようになった。
家に帰る時間に輝美はスナックに出勤する。
「ただいま」
「おかえり。私はこれから仕事だからこれで何か食べなさい」
日曜日以外、輝美の手料理は出てこない。渡された千円札に嫌悪感すら抱いた。
図書館帰りにアパートに戻ると部屋から大家の男が出てきた。家賃の支払いと思っていたが、玄関でキスをしているのを目撃した。輝美は家賃の代わりに体で払っていた。これが大家の妻にバレて大騒ぎになった。
当然、そのことはアパート中に知れ渡った。中には出て行ってくれ、と言ってくる者もいたが、そのころの輝美の神経は図太くなり平然とはねのけていた。
一方でそのことが準の学校で広まった。
「売春女の息子」というレッテルが貼られ、学校のどこにいてもイジメの的になった。
「汚い・香水臭い・不潔」そんな罵声が浴びせられ、数人に囲まれカバンをボロボロにされて教科書を泥水に
放り込まれることもあった。
輝美はそれに無関心を装った。それは心のどこかに準に済まない気持ちはあったが、それを自分に向けられることを恐れた。だから、ターゲットを洋介に向けるようにした。
「アイツは金持ちの息子になって自分だけいい思いをしている」「悪いには洋介だ」そんな言葉を何度も口にした。里子の条件として、どこに住んでいるか一切の素性は明かさないこと、そして連絡手段も断ち切られる、というのがある。いつしか準の心には洋介も悪者として存在していた。
それに反対して準の成績は極めて良かった。
ある体育の先生に言われたことがあった。
「今の環境を抜けたいなら、勉強してレベルの高い大学に進め。そうすれば世間がお前に擦り寄ってくる。それが社会であり人の性というものだ。いい大学に入って成績が優秀ならどんな企業にも入れるぞ。その時になって他のやつを見返すことが出来る」
その言葉が準の中にスッと入ったきた。
それから準は勉強と社会を見返す心が支えになり、強い心を持つようになった。

ある日、学校でイジメられた後に図書館に寄った時のことである。
図書館で英語関係の本を探しているときに、<英語の世界観-イディオム->という本を見つけた。
見ると英語版の慣用句と訳が記されていた。その中に目に留まった言葉があった。
<Cry for the moon>-出来ないことを望む--ないものねだり-
(ないものねだり…ぴったりだな…)
この慣用句は準の中に強く残った。
(だったら望むものは全部手に入れてやる!!!)

だが、天は順に更なる過酷な試練を与える。

進路相談の時期になると準は憂鬱になった。
生活は苦しい上に金がかかる。輝美の生活能力だけでは賄えないことは準も分かっていた。
輝美は定時制高校へ進むように準を説得するが、担任の山上はそれに反対した。
山上は全校でトップの成績である準を、市内高校の最高峰と言われる札幌海星高校に進学させたかった。
返済の必要のない奨学金を受けてみては?とアドバイスを受け、輝美は渋々納得した。
それは準にとって嬉しいことだった。これで頑張れば上への道が開けると感じた。

一週間後。
図書館から帰宅すると、真っ暗な中で輝美が血を吐いて倒れていた。
何が起きたのか分からず輝美に話しかけるが反応は何もない。
畳には血が赤黒く滲んでいる。

「残念ですが、末期の膵臓がんです」
「えっ…もうダメって事ですか?」
「あと三か月持つかどうか…」
救急車で運ばれた病院の一室で医師から衝撃の一言が口にされた。

何をどうしてか分からず学校に電話した。残業で残っていた山上が電話で話を聞き病院に駆け付けた。
「準、お母さんは?」
「…ベッドで寝てる」
「本当にダメなのか?」
「医者はそう言ってた…」
山上は、準のこれからの先をどうするかを考えていた。
「俺…高校行けないのかな…」
そこだった。16歳にも届かない準が一人で生きていくには、身内に引き取ってもらうか、後見人か、養護施設に入るか、のどれかになるだろう。
だが、以前に準から洋介の里子に出された事を聞いていた。祖父母には借金があるし、新家具にかかる費用を捻出するのは厳しいだろう。
だが、これだけ成績が優秀な準を見放すことはあまりに惜しい、と感じていた山上は翌日から方法を探ることにした。
翌日、輝美が意識を取り戻した。
「気分はどう?」準がささやいた。
「…だるい…あと、痛いかな…」
「そうか…何か食べたいものある?」ぶっきらぼうに聞いた。輝美は首を左右にわずかに振った。
「準…アンタには迷惑しかかけなかったね…」
「なんとしても高校にいって、洋介や他のやつらを見返して…」
「…あぁ」
母親が自分の息子を憎むなんておかしい話だが、旦那や親からの仕打ちを受け、向ける矛先を世間と息子にしないとやってられなかった。そして日に日に輝美は弱っていった。
準には悲しみや寂しさが沸かなかった。

山上は祖父の泰三に連絡し、輝美の事情を話した。せめて準の支援が得られないか、相談したかった。
だが、返事は一言「輝美とは縁を切った」とだけだった。
仕方なく山上は市役所に足を運んだ。
生活保護を受けられないかを聞くためだった。幸いにも条件はクリア出来、アパートでも、何とか住めるくらいは大丈夫な事も分かった。
学校終わりに輝美の病院に向かう途中で、山上は集団の男子達が騒いでるのを見つけた。
「何してるんだ?」
その声に振り向いた顔は見た事があった。
「やべ!」
一斉に走り出し逃げた囲いの中に、準が横たわってるのを目撃した。
「おい、二階堂じゃないか⁉︎」
準はまるで何も無かったように立ち上がって、山上に振り返った。
「…大丈夫だよ、先生…」
「もしかして…イジメか?」
「まぁね…アイツらヒマになるとオレを囲むんだ。もう慣れたよ…」
山上は驚いた。イジメられている子供の顔ではないからだ。
「だ、大丈夫なのか⁉︎」
「うん…それよりどうしたの?」
「あっ、あー…そうだ、二階堂のこれからの生活のことでな。何とかなりそうだから、それを話すために病院に向かうところだった」
「…ありがとう、それでまた生き延びれるかな…」
中学生が吐くセリフではない。
「ホントに大丈夫なのか?」
「うん、こんな事でつまづく訳にはいかないからね。このままじゃ終われない…」
そう言う準の顔つきは、大人の顔をしていた。山上は強い意志を感じた。
「Cry for the moonでは終われないんだ」
「なんだって?」
「…何でもない、病院に行こうよ」

輝美の部屋の階でエレベーターを降りると、ナースステーションの看護婦が、慌てて準に近寄って来た。
「お母さんが!」
その言葉で病室にダッシュで向かった。
「酸素マスク!」
「ハイ‼︎」
「血圧は?」
「80です」
準は悟った。輝美が亡くなる事を。
「準クン、お母さんが…」
ベットの側で見守ってる姿を山上は、黙って見ていた。
「もう、最後かも知れない…声をかけてあげた方がいい」医者の言葉に準は反応した。
「…準…準…ご……め…」
ピーと血圧が一気に落ちる音が響いた。
準は何も口にしなかった。無機質のように輝美が去っていくのを見ているだけだった。

入院費と簡素な葬式代は山上が負担した。
焼き場から変わり果てた輝美の身体は、骨と黒い塊の臓器だけだった。
何と寂しい葬式なのだろう。見送りは息子と担任だけである。
骨壷と遺影を持ちながら、歩く準は山上に問いかけた。
「…先生、泣けないんだ。母さんが死んだのに泣けない…」
「…そうか、泣きたい時に泣けばいいさ」
「オレ、死ぬほど勉強して稼いで上に行く‼︎」
「…うん、そうだな」
準の決意は固かった。それからの準の生活は変わった。
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