Cry for the moon

Yamato

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第2章 競合…そして再会

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1990年 春ー

準は国立創生大学の四年生になっていた。
奨学金を受けて、無事に卒業間近のところにいた。
「オイ、二階堂。聞いたけど医療機器メーカーに行くってホントか?」
ゼミの倉持が不思議そうに聞いた。
「それがなんだ?」
「お前の成績なら官僚になれるだろう?」
「そんなつまらんものになる気はない」
「かぁ~、トップ様の言う事は違うねぇ」
「そんな地味な世界に行くなんて、オレには分からんよ」
(オマエに分かってもらう必要もない…)
準は答えずキャンパスを後にした。
倉持は大西角田銀行の内定を貰っている。
国内トップの預金量を誇る。
「そういえば、依田ゼミの内藤って知ってるか?」
「内藤…?知らん」
「いつもオマエに迫ってた成績のヤツだよ」
聞いた事はあったが、顔も知らない人間に興味すら沸かない。
「そいつがどうした?」
「あのゼミに知り合いがいるんだが、オマエと同じ医療機器メーカーに行くって…」
(ほう…)
準は医療機器の市場は、これから確実に伸びると読んでいた。海外と日本の医療技術には明確な差があり、今後は輸入品がシェアを占めると踏んでいた。ある程度の出来上がり市場は伸び代が少ない。
準はまだ未成長の業界を望んだ。
同じところに目をつけたヤツがいるとは思わなかった。
だが、その話はそこまでのものだった。

桜が満開なる頃、準は世界的医療機器メーカーである「ME health care」の日本支社ビルで研修を受けていた。一般製品のコンシューマー部門と病院相手のメディカル部門と医薬品部門に分かれる。準はメディカル部門の外科関連機器の担当として配属された。
手術器具を扱い、手術に入る〈立会い〉をするため、聞いたことのない医療用語や術式を徹底的に教え込まれる。
主にガンの手術で使われる事がほとんどの為、ステージ分類も覚えなくてはならない。
[最もドクターに近い営業]と呼ばれ、外科医のパートナー的扱いを受ける。
吻合、スーチャー、マーゲン、コロン等々…
医療用語は一般用語の組み合わせには出てこないものばかりだ。

これらはホントに頭の良い人ほど覚えが早い。準は苦も無く覚え、社内テストでもトップの成績をたたき出す。
残るは実技である。「ラボ」と呼ばれる動物実験施設において豚を患者に見立てて、さながらオペ室のように
再現した中で立会のスキルを磨いていく。
これを一か月間で覚え、毎週のテストと総テストで90点以上取れなければ退職となってしまう。

準は震えた。恐怖ではなく、後ろに失望が口を開けて待っているような状態で、それをいかに飲み込んで勝ち残るかの状況に置かれていることを。
むしろ、喜びの身震いに等しかった。

順調にテストも潜り抜けて、無事にエリアを持つことになった。
「二階堂君は北海道の…旭川市かぁ、地元が良いかね?」
「いえ、地元は好きではないので関東か甲信越あたりでお願い出来ませんか?」
「ふむ、まぁ新人に東京や神奈川はキツイ。最低でも三年後だなぁ…新潟でどうだ?」
営業本部長の新見は考慮した。成績のトップの準は伸びれば東京や神奈川の重要施設を任せてみたかった。
だが、その前に地方でどのくらい力を発揮出来るか、を見ておく必要がある。

「新潟…ですか?」全く縁のないエリアだ。
「新潟のイメージって何がある?」
「コメ、酒、佐渡…ぐらいですね」
「確かにな、だが日本海では中々大きい市場がある。しかも、あのエリアはWC Surgicalのシェアが高い」
ME health careとWC Surgicalはいわば競合同士である。外科系の器械や手術用の針糸などで世界的にシェアを広げていた。
「WCのシェアはどのくらいですか?」
新見はファイルを広げた。
「70%だ」
言葉を放った瞬間を新見は観察した。
大抵はため息か、沈んだ顔色になる。
準はどちらでもなく「フッ」と笑った。
「おかしいかね?」笑いの真意がどちらか新見は興味を持った。
「宝の山って事ですよね…」
(なるほどな…ヤル気はあるんだな…
だが…)
新見はそれ以上口にしなかった。
「分かりました」

準は新潟県に配属が決まってから、毎年シェアを15%ずつ伸ばしていった。
外資系の目標はいつも高く設定される。
7%を上乗せしないと達成にはならない。
その分、達成されればボーナスでの見返りは上場企業の同期とは、比較にならないぐらい支給された。

準には若くして能力があった。
それは、人の心を動かすものだった。
医者のようなエリート意識の塊ほど簡単だった。
研修医の頃から〈先生〉と呼ばれ、薬屋の営業から持ち上げられる。そんな環境に置かれていれば、ほとんどが「いい気」になるものである。それを利用すれば良い。
器械の選定権力者である、教授や部長クラスの医者の懐を擽れば、競合から乗り換えてくれた。
準はいつも二つの顔を持っていた。
光と闇…光は闇の栄養でしかなかった。
年が経つにつれ、準の闇は大きくなっていた。そして新潟での成績を積み重ね、3年後には、日本国立がんセンターの担当に任命された。日本最高峰と言われた研究機関であり、どこの医局にも属さないエリート中のエリート医師が集う施設だ。
そこを担当する事は、全営業の注目と羨望の期待を背負う定めだった。

「二階堂 準と申します」
がんセンター外科のトップである畑山 雅紀部長の部屋で深々と頭を下げた。
「ほぅ…梨田先生から聞いていたが、もう少し若いかと思ったよ」
「梨田先生をご存知なのですか?」
恰幅の良い畑山はソファーを勧めた。
「彼とは昔、ここの研修医同士で苦労した仲でね…同期で貧しいメシを食ったもんだ!」
医者の世界は狭い。どこで誰と繋がってるか油断は出来ないものだ。
「そうでしたか。では、今でもお会いになられてるのですか?」
「あぁっ!学会でよく会うよ」
「梨田先生には大変お世話になりました。私のような若輩にも暖かくして頂きました」
「ハハッ…そうか!彼は地元で患者の助けをしたいと言ってね、私と歩む道は違ったが、今でも尊敬しているよ」
「素晴らしいですね。都市と地方でも共に志が同じ仲間がいらっしゃるということは…」
「そうかね?まぁ、これからよろしく頼むよ」
「はい、最大限の努力をさせていただきますので、こちらこそ、ご指導の程よろしくお願い致します」
「うん、ところで君はどこの大学出なの?」
「先生と同じ創生大学です」
「おっ!じゃあ後輩になるんだなぁ…WC surgicalの内藤クンと同じなんだな」
「内藤…ですか?」
「そうだよ、君と同じくらいの歳じゃないかな?知らないか?」
「いえ…」
「そうか…まぁ、ライバル同士で私の後輩なんてあまり無いことだ!こりゃ、見ものかも知れないな」

畑山の部屋を出て、内藤の事を調べる必要があると感じた準は倉持に電話した。

「久しぶりだなぁ!どうだい、医療業界は?」
「ちょっと聞きたい事がある。時間取れないか?」
準は倉持を会社近くの居酒屋に呼び出した。
座るなり銀行の愚痴を話しだした。
預金獲得と貸出先開拓に苦労していた。
「ところで、大学卒業の時にオレと同じ業界に就職してるヤツだいるって話しを覚えてるか?」
「あー…そんな話ししたか?」
「依田ゼミの内藤って…」
ビールを一気に飲み干した倉持は、おかわりを注文した。ツマミも豪快に放り込む。
「あーハイハイ!確かにしたなぁ…それがどうした?」
「どうやらオレのライバルらしい…」
「へぇ、世間は狭いもんだなぁ」
「詳しく知らないか?」
「オレは知らんよ!知り合いから小耳に挟んだ程度の話しだしな…」
「その知り合いとは繋がってるのか?」
倉持は2杯目のジョッキを口に運んだ。
「まぁ…たまに飲んでるが…」
「聞いてくれないか?」準の真剣な目つきに倉持はビクッとした。
「えっ⁉︎今か?」
準はゆっくり頷いた。
倉持は仕方なく携帯電話をポケットから出してメモリ検索を始めた。
「あー、もしもし…オレだ。あのさ、オマエのゼミに医療業界に就職したヤツいただろ?
なんて名前だっけ?」
「…内藤…洋介」
準は驚いた。そして次の瞬間、倉持を向かせ訪ねた。
「出身地どこか聞いてくれ!」
倉持は準の表情にたじろいだ。
「…あー、その内藤ってどこの出身地だ?」
「うん、静岡?静岡なんだな?」
電話を手で塞ぎ「だそうだ…」と。
準は生き別れになった洋介ではないか?と感じた。だが、洋介という名前は珍しくないし同名かも知れない。確信を持てないまま、倉持と別れた。
春から夏にかけての気温は過ごしやすい。
夜風が心地よかった。
(明るいな…)
ふと見上げると、満月が輝いている。
時折、残った雲が月の前を横切る。
あの時の言葉が頭をよぎった。
(Cry for the moon…か…)
あの時、自分には何もなかった。信じる心も、ささやかな幸せですら手に出来なかった。それが今ではスーツを着て、外資系の営業として立っている。
(いや、まだだ…こんなもんじゃない…)
決意は固く締めた握りこぶしに込められていた。

国立がんセンターの手術件数は全国でトップである。朝から各部屋はフル稼動する。
特にガン手術が最も多い消化器外科は、胃や大腸、肝臓や乳房の手術がビッチリ入っている。準のようなメーカーや代理店の営業も、どこかの手術に立ち会いに入る。

時には朝から夕方まで入ることもある。
その日、立ち会いを終えた準は、資料を畑山に渡すため、部屋の前で待っていた。中から微かに話し声が聞こえた。
雰囲気からどこかのメーカーと思われた。
しばらくするとドアが開いた。
一礼して出てきた人物の顔を見た。
(洋介⁉︎…)
ネームプレートには
[WC Surgical 東京一課  内藤洋介]とあった。洋介も準のネームプレートを見て固まった。
「もしかして準…か?」
「洋介…」
お互いに理解した。長年、会う事のなかった兄弟がここで再会したのだ。
「失礼!」
準は構わず、畑山のドアをノックした。
「はい、どーぞ」そのまま振り返らず部屋に入った。

準が部屋を出ると洋介は居なかった。
騒ついた心のまま、階段を降りて業者専用のパーキングに向かうと人の気配がした。
「準!」
洋介が待っていた。
「ホントに準なんだな…会えると思わなかったよ。驚いた!」
「…何の用だ!」
怒りを込めた口調に、洋介は固まった。
「何って…兄弟が再会したんだ、声をかけたっておかしくないだろう?」
「オレには兄弟なんていない!」
「えっ?…分からないのか?
「どーでもいい!」
準は背を向けたまま、車に歩き出した。
「準!何故だ?久しぶりの再会だろう?なんで怒ってるんだ⁉︎」
フツフツと怒りと憎しみが沸き上がった。
コイツは分かっていない、どんなに惨めで辛い過去だったか…自分が裕福な家庭でヌクヌクと育ってきたヤツは敵でしかない、そんな思いしかなかった。
「久しぶりの再会だ?ふざけるな!オレがどれだけ生きるのに必死だったか…温室で育ったオマエには想像すらつかない人生だったんだ。一度も連絡もよこさず今さら兄貴ヅラすんなや」
「…連絡は取れなかった。それが決まりだったんだよ。成人してから探したんだ!もう旭川に居ないのが分かって、それでも探していたんだ!母さんは元気なのか?」
準にすれば間の抜けた質問だった。
「アハハハッ…元気かだって?とっくに死んでるよ!中3のときにな!」
洋介は言葉を失った。
「母さんは言ってたよ。オマエが憎いってな、1人だけいい思いしてる洋介が悪いってなぁ!オレも同じ気持ちだよ…」
ショックだった。弟だけでなく母親にさえ憎まれていたとは、予想すらしなかった。
「オマエが競合なのは都合がいい!オマエのシェアを奪って徹底的に落としてやる!」
「なっ⁉︎」
「どんな手を使ってもだ!」
準はそう言い放つと、車に乗り込んだ。
車を洋介の側につけて一言残した。
「全てを奪ってやる…」
洋介は車の走る後姿を、複雑な胸中で見送った。

西海大学は、新しい外科手術を国内で初めて成功させた。
創生大学と医学分野で張り合うライバルだが、レベル的に後塵を拝していた。

腹腔鏡下胆嚢摘出術ー
胆石や胆嚢炎の酷い患者が対象になる良性の疾患で、フランスのマレー医師により開発された術式である。
肝臓にへばりつく胆嚢を摘出するだけのものだけに、開腹手術では傷が大きくなってしまう。そこで傷の小さな手術を考案し、トロカーと呼ばれる筒を数カ所お腹に刺し、腹の中を二酸化炭素で膨らませる。
1センチ前後の傷がバラけてる為、術後の治りも早く痛みも少ない。それだけ社会復帰も早くなるというものだ。
西海大学 第1外科の助教授である黒下勉は、フランスに留学し、この手術を会得して戻ってきた。
国内で初めて成功したニュースは、大々的に報道された。
教授である渡邊範善は、創生大学に先んじて脚光を浴び、黒下と共にメディアに出まくった。

(くっ…)創生大学の教授室で宮下は、ライバルに先を越された屈辱で憤怒の表情を隠せずにいた。
「あんな格下の渡邊なんぞに…」

その時、ドアをノックする音がした。
「なんだ⁉︎」怒り気味の声が響いた。
「失礼します。ME health careの二階堂です」
「君か…なんだね?」
宮下はソファーに座ったままタバコに火をつけた。
「西海大学の件、ご覧になりましたか?」
不機嫌に拍車がかかる。
「そんな事言いに来たのか?今は話す気分じゃない!出て行ってくれ」
準はそれにビクつかず冷静に返した。
「今日は、その事で参りました。実はあの西海大学を超える一手があるので、そのご提案です…」
宮下は準を見返した。
「超える一手…なんだね?それは」
「失礼しても?」
ソファーを目をやる。
「あぁっ…座りたまえ」
「先ほど、西海大学の渡邊先生にお会いしてきました。ずいぶんとご機嫌でした…」
「アイツは前からウチを目の敵にしてな。何とか越えようと必死だったんだよ!」
「えぇ…創生大学なんて怖くない…とも」
準は宮下を焚きつけた。逆上させれば話の流れを引き寄せやすい。
「そんな事を言ってるのか!あの三下は」
「全く失礼な話ですよ…天下の宮下教授に向かって暴言にも限度を超えてるかと…」
「そうだろ!そうなんだよ。身の程をわきまえない態度は昔からだ。で、その一手とはなんだね?」
「ちょっとお耳を…」
準の言葉に宮下は身を乗り出した。小声で聞かされた逆転の一手に宮下は驚いた。
「なるほど…その手があったか!」
「もし、教授が受け入れて下さるなら我が社は完全なバックアップをさせて頂きます」
「もちろんだ!いや、しかしよく教えてくれた。それならあの渡邊なんぞに負けやしないし、ウチの名も上がるな!」
準は含み笑いをしつつ、宮下と握手した。

医者の世界は言わば「帝政」である。
どんなに人格が悪くても、教授という地位に収まれば、好き勝手が出来る。
自分の方針に背くモノは飛ばし、派遣先の系列病院に「脅し」をかければ言う事を聞く。
かなり悪い言い方だが、それだけ権力が1人に集中しているのは現実だ。

「いやぁ、内藤クン。キミのお陰で上手くいったねぇ」
渡邊は腹腔鏡下胆嚢摘出術を1時間半で終え、すこぶる上機嫌だった。立ち会いに入っていた洋介もホッとしていた。
後ろから執刀した黒下が、汗だくで付いてきた。
「黒下先生、お疲れ様でした」
「あぁっ…やっぱり器械屋さんは頼りになるなぁ」
洋介はフランス帰りの黒下をサポートしていた。これにより洋介の売上も更に伸びる。
「ところで教授、一つご提案があるのですが」
「何だね?」
「教授主催でウチのラボ施設に来ませんか?」
「ラボ?」
渡邊は手洗いしながら聞いた。
「はい、第1外科の先生方にもっと腹腔鏡手術を知ってもらうために、ブタの胆嚢摘出術をやりませんか?もちろん、ラボ費用とお弁当代は私達で負担します」
「オォッ!それはいい話だ」
「それと将来の第1外科入局を目標に、学生さんも呼んではどうですか?」
「いいねぇ!それは中々のイベントだよ」
「分かりました。詳細は黒下先生と打ち合わせさせていただきます」
「うん、黒下クン頼むよ」
「はい!これはやり甲斐があります」

医局を後にした洋介は、準の車が入ってくるのを見かけた。
準が車を降りて、洋介の存在に気づいた。
「準…」洋介はまだ準の言葉が受け入れられなかった。もしかして機嫌が悪かっただけなのかも…と思いたかった。
しかし、準は洋介を無視して医局に入っていった。
洋介も準もいくつかの病院を担当している。
日本国立ガンセンター、創生大学、西海大学は完全に被っていた。
(やっぱり…そうなのか…)
心の隅で、グレーな雲がかかったような気持ちだった。

準は渡邊の部屋を訪れていた。
「今日も胆嚢を腹腔鏡下でやられたとか…」
「そうなんだよ。また上手くいってなぁ」
「それは良かったですね」
「キミには悪いが、内藤クンがサポートしてくれてね」
「そうでしたか。患者さんが早く復帰出来るといいですね」準の満遍の笑みに渡邊は、一層気を良くした。
「そうそう!内藤クンからラボでの練習を提案されてねぇ。実に良く尽くしてくれてるよ」
準は知っていた。こういう時に競合を貶してはいけない、と。貶すと逆に自分がマイナスに思われてしまう。
「それは良いアイディアですね。内藤さんも先生のお考えに賛同されてるのですね。私も頑張らせていただきます」

(なるほどね…こりゃいい)

準は慌てなかった。普通なら競合に先んじられて青くなるところだが、充分に勝算を感じていた。

「オイ、二階堂!それ大丈夫なのか?」
課長の岡田は焦った。
「ハイ、問題ありません」
「しかし、そのラボでWCのシェアが伸びるだろう⁉︎」
誰もがそう思う。
(バカか?コイツは…)
準は岡田の挙動に内心呆れていた。
「ゲームはまだ終わってませんよ。最後に逆転すればいいんですよ」
「ぎ、逆転なんて出来るのか?」
「まぁ、見てて下さい」

洋介は2日後に黒下とラボの概要を詰めていた。
「そういえば、この間MEの二階堂クンが来たよ」
「彼はなんと?」
「ウチのも使ってくれって。でも、内藤クンとこでラボの世話になるから難しいって答えたよ」
「…そうですか、で、彼は?」
「分かりました、って。言ってマズかったかい?」
「いえいえ、ありがとうございます」
ME health careにも同様のラボ施設がある。
同じ提案をしてくるか、と思ったが何も言わなかった事にスカされた気持ちになった。
同時に、邪魔されない事が分かりホッともした。

ラボは大成功に終わった。前日に医局で飲み翌日には、想像を超える施設に誰もが驚愕した。
「これはすごいなぁ!」渡邊は施設全体を案内されて感心した。
トレーニング手術室は10テーブルあり、人がそのまま手術出来るぐらいの設備がある。
講義室に休憩スペース、ボックス型の練習機も充実している。
また、動物麻酔にも興味深々だった。大学では動物実験で麻酔もする。だが人と違うため、麻酔中に死なせる事もしばしばある。
獣医にも色々と聞いていた。

渡邊も黒下も医局員達も、みな洋介に感謝した。演出じみてるが、洋介は学生達に外科の素晴らしさを伝える講義も渡邊にしてもらい、教授の顔を立てた。

翌週から洋介は、ガッチリと渡邊達の手術に入る事にした。
「内藤! その後MEの動きはどうだい?」
マネージャーの伊丹は懸念していた。
「今のところ何もありません」洋介も警戒していたが、準は何も仕掛けてこなかった。
それが一抹の不安であったが、何も動きが無ければ対応のしようもない。
「あの二階堂は新潟でかなりのシェアを伸ばした強者だからなぁ」
伊丹は二本目の煙草に火をつけた。
「注意はしています」
「うん、頼むぞ。やっと渡邊教授の持ち上げに成功したからなぁ」
「はい、そうですね」

その頃、準は宮下の部屋にいた。
「準備はどうかね?」
「はい、順調ですよ。先生の方はいかがですか?」
「うん、この間の教授会で了解を取り付けたよ、これで後は彼の意思だけだなぁ」
「大丈夫ですよ。必ず食いつきます」
準の静かで重みのある言葉に、宮下は微笑で返した。

準は夜に大学の後輩で、日本新聞の記者をしている袴田と料亭で待ち合わせをしていた。
「いやぁ、こんな所初めて来ましたよ」
「まぁ、たまにはいいだろう」
準はビールを勧めた。
「医療機器屋って儲かるんですねぇ…」
袴田は医療班の記者になって2年になるが、まだデカい記事に巡り合っていない。
もともと地味な業界だけに、そんなパンチの効いた話題が無かった。
渡邊の腹腔鏡下手術もライバルの、東京経済日報に持っていかれ、上司にしこたま怒られた。
「で、今日は何ですか?」
「スクープ欲しくないか?」
目つきが変わった。一端の記者らしい目になっていた。
「何があるんですか?」
「今はまだ言えないが、お前のところで大々的に扱って欲しいんだ」
興味をそそる言い方に、袴田は完全に前のめりになった。
「程度にもよりますが…」
準は含み笑いで返した。
「西海大学以上のインパクトはある」
「えっ?マジすか?」
「あぁっ…但し、俺のシナリオ通りに書いて欲しいんだ」
「シナリオ…ですか?」
袴田は不思議な顔をした。
「そうだ、その条件を飲んでくれるなら、お前だけに教えてやる!」
「分かりました!デスクもスクープ欲しがってますから大丈夫と思います」

その夜は終電前までには解散した。

西海大学の腹腔鏡下手術も6例を実施したぐらいになると、それほど騒ぎにもならなかった。しかし患者は確実に
増えており「効果」という点では成功したと言える。
ある朝、渡邊は秘書が運んできた新聞の一面を見て驚愕した。

<創生大学 腹腔鏡下手術の開発者 フランスのDrマレー氏を特別教授に招聘>
(な、なんだと?あのマレーを呼んだのか?)
更に記事を読み続けた。
<創生大学 第一外科の宮下教授は、腹腔鏡下手術の開発者であるマレー医師を第一外科の特別教授に迎え入れる事を発表した。今後、外科手術において腹腔鏡下手術が拡大すると予想し、その技術を習得し更にそれを系列のみならず全国に広げる考えだ。契約期間は無期限とし、手術も公開し希望があれば全国からの臨床見学も受け入れる予定もある、という。以下、宮下教授のコメントー

<私たちは、この腹腔鏡下手術は胆嚢のみならず「がん」の手術にも応用できると考えております。そうなれば
疑わしきは切除、というこれまでの概念から必要最小限度の切除、で同じクオリティを追求することになります。
もちろん、そのためには良性疾患である胆嚢から始めて、技術を研鑽し高めることが大前提です。
この手技は遠くない将来には全国に広まるでしょう。まずは私どもの系列施設の希望者を集めて徹底的なトレーニングを行い、合格レベルに達した施設には随時、導入していきます。また、モレー氏の手術は全国の先生方に広く公開し、この腹腔鏡下手術を知っていただきたいと考えております。今回、モレー氏は国の垣根を越えて日本で働いてくださることになりました。彼の意思に感謝すると共に、陰で協力してくれたWC Surgicalの内藤さんにはお礼を申し上げたい。いずれ、ここには腹腔鏡下専用のトレーニングセンターも作りたいと思っています>

「な、なんだと…これじゃウチの実績なんて吹き飛んでしまうじゃないか!…」
渡邊は激高した。よりによって創生の宮下だからだ。
せっかく差をつけたと思っていたのに、これでは渡邊たちが土台になったようなものだ。
「内藤のヤツめ、知らないところで宮下に加担していたのか!」
もう怒り度合いは生半可ではなかった。椅子やテーブルを蹴飛ばし、書類が飛び交った。音を聞いて秘書が入るも声をかけられる状態ではなかった。

「内藤、お前新聞に出てるぞ!」
「えっ?おれが?」
本社のミーティング室で資料作りをしていた洋介は、同僚の村中から新聞を受け取った。
「さすがだなぁ…こんな大戦略をやっていたとはなぁ、もう社内はお前の話でもちきりだぜ」
記事を一通り読んでも意味がわからなかった。
(なんでだ?なぜオレの名前が…)
こんな話当然関わっていないし、聞いたこともない。
「これで創大のシェアは貰っただろ」
そんな声が出てくる。
洋介は宮下の元に急いだ。

「失礼します」
宮下の部屋を訪れた洋介は、デスクで仕事をしていた宮下のご満悦な顔を目の当たりにした。
「おー、どうした?」
「教授、あの記事の事ですが…」
「ん?何かあったか」
「いや、私の名前が出ていました。どういう事でしょうか?」
宮下は気にも留めない表情をしていた。
「マレー先生のアテンドはしていないのですが…なぜ私の名前を?」
「あぁっ!アレか、すまんなぁ…間違えたんだよ」
「間違え…ですか?」
「そうそう、あれはME health careの二階堂クンなんだよ。実は私も間違えに気づかなくてな…知らんうちにキミの名前を言ってたようだな!」
「そう…だったのですか」
「あの記事を見るまで、間違いだとは分からなくてさ、すまんな」
「いえ、分かりました…失礼します」
洋介は焦った。渡邊の胸中を思うと、憤慨しているのではないか?と。
心の隅で、あの記事を読んでいない事を願いながら、今度は渡邊を訪ねた。

渡邊も部屋にいた。
「先生、内藤ですが…」
「入りたまえ!」口調がいつもと違う。
「失礼します」
渡邊は窓の景色を眺めていた。
洋介には、空気が冷えてるのを感じた。
「キミは策士だねぇ…ずいぶんな事をしてくれたもんだ」
「いえ、あれは間違いなんです!私ではなく…」
「言い訳はいい!よりによってあの創大で、あんな派手なアドバルーンを上げるなんて、私もナメられたものだ」
完全に怒りで支配されていた。
なんとか誤解を解きたく洋介は弁明した。
「先ほど宮下教授にお会いして、間違いだったと言われました。私は何も関わっておりません」
「間違い?では新聞がウソをついてると言うのかね?」
「いえ、新聞ではなく宮下教授が言い間違えた、これが真相です」
渡邊は椅子を回転させ、洋介を凝視した。
「残念だよ…私と宮下の関係を知らないキミじゃないだろう。もし、仮に言い間違えたとしたら、二階堂クンや彼の会社からクレームが出ているはずだ。違うかね?」
「いえ、それは…」
「それに先ほど二階堂クンが来てね。でも、彼は何も言ってなかった」
「えっ?」
「私もね、キミではなく二階堂クンの間違いじゃないか?と聞いたんだ。そしたら、違うと言ってたよ…」
「まさか…そんな、宮下教授の口からはハッキリと彼の…」
「もういい!」
バンとデスクを叩き、立ち上がった。
「当分、キミのとこの器械は使わない事にするよ。これは医局の総意だ」
洋介は言葉を失った。
「それから、ここにも出入りは禁止する」
洋介は断念した。これ以上何を話しても渡邊は聞いてくれない。一旦引いた方が良いと判断した。
「これからウチは、二階堂クンの器械に変えるからね」
営業としては死刑宣告されたと同じだった。

二階堂は岡田とミーティングをしていた。
「あの記事だが、オマエの功績なのに何も言わなくていいのか?」
「いいんです。むしろアレの方が都合がいいんですよ」
「どうしてだ?」
「課長、私は創大だけではなく西海大のシェアも狙ってるんです。その為にはあの布石が必要なんです」
岡田はピンと来ていなかった。
「エリートという生き物は大きな特徴があります。一つは自信過剰ということ、もう一つは人を信用しないってことです」
「確かにな…」
「西海大では、内藤は渡邊教授の懐に入りました。その内藤が、ライバルの創大でそれ以上のイベントを仕掛けたとなれば、渡邊教授はどう思うでしょうかね?」
「なるほど、凄いこと考えるな…結局、君は名より実を取ったということか…」
「その方が何かと都合が良いのです。確かに宮下教授も不思議がっていましたがね…」

話は少し前に戻る。
「逆転の一手とは?」
「フランスのマレー氏を先生の医局に入れませんか?」
「マレー氏を…いや、そんな事出来るのか?」誰だって驚く。相手は遠いフランスの医師なのだ。
「はい、実は私たちのフランス支社からの情報でして、どうもマレー氏は以前から教授と折り合いが悪くて
揉めていたということなんですよ。そこであの腹腔鏡下手術で一気に注目を浴びましたが、それが逆鱗に触れたようでして、今はフランス中の病院から敬遠されているんです」
「はぁ…そうだったのか」
「まぁ、ヨーロッパですから他の国で探しているようですが、待遇の良いところが見つからないらしくて」
「でも、それで日本に来るのかね?」
「はい。ランス支社長に聞いてもらったら、以前から日本には興味があるらしく、行きたいという意思はあるようです」
「仮に来るとして、その後はどうする?」
「まず、こちらの教室と列の施設から弟子の育成を行って、他との差別化を図ります。その後、トレーニングセンターを作り、全国からの希望者を募れば、日本の腹腔鏡下手術でトップになれますよ」
「そうか!!」
「これをガン手術に応用出来たら、いずれは
腹腔鏡下の研究会や学会に発展するでしょう。その時の初代理事長は先生ですよ」
これはかなり宮下の心に響いた。
「ほぉ、そうなるかぁ…」
「あらゆる面で先生が、イニシアチブを握りますよ」
「マレー氏が来たら、キミの功績も加えておくよ」
「そこなんですが…」
準は前のめりに口を開いた。
「記者発表の際に私ではなく、WC surgicalの内藤さんの名前を挙げてください」
これには宮下も驚いた。
「えっ?なんでだ?彼は関係無いだろう」
「はい、詳しくは聞かないでください。ただ発表の時だけ彼の功績にして下さい」
「しかし、それは彼も何か言ってくるだろう?揉めるんじゃないのかね?」
「その時は間違いだったと言っていただければ幸いです」
「それで通るかね?」
「はい、必ず通ります。先生は教授ですからね。私を挙げたつもりだったが、間違えたようだ、とでもすれば問題ありません」
「キミはいいのかね?」
「先生が認めてくだされば、それだけでいいのです。あくまで宮下先生に貢献する事が目的ですから」
準は静かに微笑み頷いた。
「キミがそう言うなら、そのシナリオで行こう。安心したまえ、成功した後はキミの器械を全面的に使うよ」
「ご配慮感謝いたします」

洋介は本社のミーティング室で、岡田と部長の上野と今後の事を話していた。
「どういう事なんだ?なぜ、宮下先生の口からキミの名前が出たのかね?」
「…分かりません、先生はただ間違えた、と言うことです」
上野は腕組みしたまま、大きなため息をついた。
「しかし、渡邊先生が誤解したのはマズイ」
岡田も続いた。
「彼から聞いて私も駆け付けて、事実を説明しようにも聞いてもくれなくて…」
洋介はハッとした。これが用意されたシナリオだったとしたら…と。
「あの…もしかしてですが、いや、多分そうだと思うのですが…」
「なんだね?」
「これは二階堂の策略ではないでしょうか?」
「策略?」岡田も上野も汲み取りかねた。
「私が渡邊教授と懇意していた、腹腔鏡下手術で先を越された宮下教授と二階堂がマレー氏を引き込む事で、更に先の一手を考えた。ライバル関係にある渡邊教授に、私が貢献したと発表すれば渡邊教授は当然激怒する。そうなれば二階堂は、創大と西海大のシェアを一気にモノに出来る…」
「…なるほど。辻褄があうな。それが本当なら二階堂というヤツはかなりの切れ者ということになる」
岡田は感心してしまった。
普通、こんな一手は考えられない。
間違えばシェアを大きく失ってしまう。
「エリートの間隙を突いた作戦だな」
「ハイ、プライドの高い教授をワナにかけるには最高の一手です。人を信用しないのがエリートですから…」
岡田も力のない口調で返した。
「失ったシェアはどのくらいなる?」
「創大で4000万、西海大で3000万になります」
「7000万か…」
「もはや、内藤の達成はムリです」
「このシナリオを、あの営業が考えたのかね?二階堂とか言う…」
「まさか!あの若手が思いつくとは…」
岡田は否定したが、洋介はそう思っていた。
あの準の目は本気だった。
岡田も上野も勘違いしている。責任の重い役職者には出来ない一手だ。
ある意味捨て身のストラテジーに、洋介は気が重くなっていた。
「まぁ、取られたモノは仕方ない!がんセンターだけは落とすなよ!」
「ハイ!」
しかし洋介の試練は、これだけでは無かった。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

赤塚諒
2018.06.25 赤塚諒

読み入ってしまいました。

自分は普段ラノベなど読んでいて、こういったジャンルに手を出せませんでした。
しかし、新作の欄にあって試しに読んでみると、ついつい読み入ってしまいました。

次の話も期待してます。

2018.06.25 Yamato

ありがとうございます。頑張ってみます。何よりの励みになります。

解除

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