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「「「…………」」」
項垂れるバカ親子3人を横目に、私のお父様はなんて素晴らしい人なのだと微笑む。
「婚約破棄の書類は以前トーマス君に書いてもらってすでに受理されているから問題はない。なのであとは慰謝料だが、これもまたトーマスくんから許可は貰っているため後は支払いだけだ」
そう言い渡された一枚の紙を男爵は見ると、顔色を青から白に変化させた。
その様子に異変を感じたのか、どうしたのかと夫人も隣りから書類を覗き込み……
「む、むりよ……こ、こんな…こんな金額」
絶望という言葉がよく似合う顔色だ。
「ーーっ!?まっ、待って下さい!こんな金額聴いてません!侯爵は払える金額しか請求しないとーー」
「払える金額、だろ?君たちが全てを手放せば」
「「「っ!?」」」
あらあら今更気付いたのね。
それにしてもいつもの笑顔のお父様も素敵だけど、この黒いオーラを纏ったお父様の嗤った顔も私は大好きですわ。
まさに妖艶。
歳をとるごとに増していく大人の色気は毎日私の心を揺さぶりまくりよ!
うっとりと見惚れる私に、しかし彼らの顔色は悪くなっていく一方だ。
「婚約者への一方的な婚約破棄、不貞、そもそも婚約者としての責務も果たしていなかったらしいじゃないか。あれほどの褒められていた学園での順位も今は下から数えた方が早い。これのどこが私の娘に相応しいと?」
ええ、ええ、私にはお父様しかおりませんわ。
親子なのが心底口惜しい。
「そ、それは……で、ですがっ!フィーも僕のことを愛してくれてーー」
「「は?」」
このバカはどこまでバカなのか。
呆れたように見る私たち親子に、トーマスは必死に訴えてくる。
「これまで僕のために手助けをしーー」
「子爵、君の息子は何か変な妄想に取り憑かれているらしい。もしくは何か私も知らぬ病かな。至急医師に診せることをお薦めするよ」
「え、あ、あの、で、ですがっ!」
下手な言い訳をするより自分の否を認めて謝ればいいのに。
親子揃ってなぜ傷を増やしていくのか。
「君は娘に好いていると今まで一度でも言われたことがあるのか?」
「っ!?」
勿論ありませんわ。
私が愛を告げるのはお父様ただ一人ですもの。
大体私に迷惑しかかけない婚約者のどこを好けというのだろう。
自分でも政略結婚とか言っておきながら。
「そ、それは…ですがっーー」
「言葉はなくとも愛されていたと?だが娘は君との婚約破棄の話しに一度も否とは唱えなかった。君が愛されていたと言うなら少しでも渋るはずだろう?」
「それは、きっと私のことを想って……」
すっごい妄想力だな。
目を丸くして驚く私に、そうなのかい?とお父様が尋ねてきたが迷いなく首を振る。
あの時は本当に呆れて、もういいわと思ったもの。
「トーマス様が仰った通りこれは政略結婚でしたわ。そこに愛などというものはありません」
「そんな………」
本気で彼の正気を疑ってしまう。
「そもそももう婚約破棄は成立しているのです。それを今更愛してたはずなどと言ったところで何になるのです。そんなこと言ったところで慰謝料は減額するつもりはありませんわ。トーマス様自身払うと約束してくれたのですから」
「ゔぅ……」
床に手を泣き崩れる男の姿になんて情けないのかと呆れる。
泣くなら帰ってからにしなさいよ。
絨毯が汚れちゃうじゃない。メアリーたちの仕事が増えちゃうわ。
「ああ、それと分かっていると思うが慰謝料とは別にこれまでの支援金の返済も求める」
「そんなっ!」
「当たり前だろう?婚約も破棄され、我が家との繋がりは何もなくなったんだ。大体君たちは支援金の意味を理解しているのか?私はトーマス君が娘の婚約者になると思ったからこそ、領地経営が苦しいという君たちを支援していたんだ」
ここまで来ると返事をする気力もない彼らは只々俯きお父様の言葉を聞いている。
「もう一度言うが、領地経営の為だ。似合いもしない綺麗な服を買い漁り遊び歩くことでも、浮気をしてその相手に貢ぐことでも、好きなものを腹一杯食べブクブク太ることでもない。そんなことに今まで使っていたというのだからこれは最早立派な規約違反だ。返済を求められても仕方がないだろう?」
お父様……どこまで調べたのかしら。
恐怖にか肩を震わせる親子は、お父様の言葉に身に覚えるがあるのだろう。
ってか、トーマス!お前は私という婚約者がいながら浮気してたじゃなく、支援金をその相手に貢いでたってどんだけクズなのよっ!
どんな神経してたらそんなことできんのよ!
お前、クズでただの金蔓じゃねぇか!その女からもすぐ捨てられるに決まってるからな!
項垂れるバカ親子3人を横目に、私のお父様はなんて素晴らしい人なのだと微笑む。
「婚約破棄の書類は以前トーマス君に書いてもらってすでに受理されているから問題はない。なのであとは慰謝料だが、これもまたトーマスくんから許可は貰っているため後は支払いだけだ」
そう言い渡された一枚の紙を男爵は見ると、顔色を青から白に変化させた。
その様子に異変を感じたのか、どうしたのかと夫人も隣りから書類を覗き込み……
「む、むりよ……こ、こんな…こんな金額」
絶望という言葉がよく似合う顔色だ。
「ーーっ!?まっ、待って下さい!こんな金額聴いてません!侯爵は払える金額しか請求しないとーー」
「払える金額、だろ?君たちが全てを手放せば」
「「「っ!?」」」
あらあら今更気付いたのね。
それにしてもいつもの笑顔のお父様も素敵だけど、この黒いオーラを纏ったお父様の嗤った顔も私は大好きですわ。
まさに妖艶。
歳をとるごとに増していく大人の色気は毎日私の心を揺さぶりまくりよ!
うっとりと見惚れる私に、しかし彼らの顔色は悪くなっていく一方だ。
「婚約者への一方的な婚約破棄、不貞、そもそも婚約者としての責務も果たしていなかったらしいじゃないか。あれほどの褒められていた学園での順位も今は下から数えた方が早い。これのどこが私の娘に相応しいと?」
ええ、ええ、私にはお父様しかおりませんわ。
親子なのが心底口惜しい。
「そ、それは……で、ですがっ!フィーも僕のことを愛してくれてーー」
「「は?」」
このバカはどこまでバカなのか。
呆れたように見る私たち親子に、トーマスは必死に訴えてくる。
「これまで僕のために手助けをしーー」
「子爵、君の息子は何か変な妄想に取り憑かれているらしい。もしくは何か私も知らぬ病かな。至急医師に診せることをお薦めするよ」
「え、あ、あの、で、ですがっ!」
下手な言い訳をするより自分の否を認めて謝ればいいのに。
親子揃ってなぜ傷を増やしていくのか。
「君は娘に好いていると今まで一度でも言われたことがあるのか?」
「っ!?」
勿論ありませんわ。
私が愛を告げるのはお父様ただ一人ですもの。
大体私に迷惑しかかけない婚約者のどこを好けというのだろう。
自分でも政略結婚とか言っておきながら。
「そ、それは…ですがっーー」
「言葉はなくとも愛されていたと?だが娘は君との婚約破棄の話しに一度も否とは唱えなかった。君が愛されていたと言うなら少しでも渋るはずだろう?」
「それは、きっと私のことを想って……」
すっごい妄想力だな。
目を丸くして驚く私に、そうなのかい?とお父様が尋ねてきたが迷いなく首を振る。
あの時は本当に呆れて、もういいわと思ったもの。
「トーマス様が仰った通りこれは政略結婚でしたわ。そこに愛などというものはありません」
「そんな………」
本気で彼の正気を疑ってしまう。
「そもそももう婚約破棄は成立しているのです。それを今更愛してたはずなどと言ったところで何になるのです。そんなこと言ったところで慰謝料は減額するつもりはありませんわ。トーマス様自身払うと約束してくれたのですから」
「ゔぅ……」
床に手を泣き崩れる男の姿になんて情けないのかと呆れる。
泣くなら帰ってからにしなさいよ。
絨毯が汚れちゃうじゃない。メアリーたちの仕事が増えちゃうわ。
「ああ、それと分かっていると思うが慰謝料とは別にこれまでの支援金の返済も求める」
「そんなっ!」
「当たり前だろう?婚約も破棄され、我が家との繋がりは何もなくなったんだ。大体君たちは支援金の意味を理解しているのか?私はトーマス君が娘の婚約者になると思ったからこそ、領地経営が苦しいという君たちを支援していたんだ」
ここまで来ると返事をする気力もない彼らは只々俯きお父様の言葉を聞いている。
「もう一度言うが、領地経営の為だ。似合いもしない綺麗な服を買い漁り遊び歩くことでも、浮気をしてその相手に貢ぐことでも、好きなものを腹一杯食べブクブク太ることでもない。そんなことに今まで使っていたというのだからこれは最早立派な規約違反だ。返済を求められても仕方がないだろう?」
お父様……どこまで調べたのかしら。
恐怖にか肩を震わせる親子は、お父様の言葉に身に覚えるがあるのだろう。
ってか、トーマス!お前は私という婚約者がいながら浮気してたじゃなく、支援金をその相手に貢いでたってどんだけクズなのよっ!
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