【月影録】 ー新選組江戸支部ー

愛希

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第三章

名に縛られて泣いた夜

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 夜の帳がすっかり降りた屋敷には、深く静けさが満ちていた。
 その中で、ごく微かに、一つの吐息が空気を揺らす。

 夢の底から浮かび上がるように――
 その意識が、ゆっくりと現世へと還ってきた。

 香月美織が、そっと目を開く。

 ぼんやりと霞んだ視界には、障子越しの仄かな灯りが滲んでいた。
 柔らかな光が揺れ、天井の木目をゆらゆらと照らしている。
 現実感は希薄で、身体の芯には鈍く重い痛みが残っていた。

「……っ……」

 掠れた息が唇から漏れる。
 まぶたを瞬かせるたびに、世界が少しずつ輪郭を取り戻していく。

 その奥に浮かび上がったのは――懐かしくも、どこか遠くに感じていた面差し。

 父・忠臣。
 母・佐江。
 長兄・鷹臣。
 そして、次兄・悠臣。

 それを見た瞬間、美織の中で、何かが音を立てて崩れた。

「……や、だ……いや……来ないで……っ!」

 喉をかすめるような細い声が、布団の中から洩れる。
 細い腕が胸元を庇うように動き、身体ごと兄たちの視線から逃れるように顔を背けた。

 佐江が慌てて身を乗り出す。

「美織……! 美織、わかる? 大丈夫よ、もう……怖くないわ」

 その優しい声でさえ、美織には鋭い刃のように突き刺さった。

「……だめ……っ……ごめんなさい、ごめんなさい……っ!」

 言葉は悲鳴に近い。
 枕に頬を押しつけたまま、美織は壊れた人形のように呟き続ける。

「私……騒ぎを起こして……顔に……この顔じゃ、縁談も……兄上の道場も……香月の名に……泥を……っ……!」

 嗚咽が噴き出す。
 声は掠れ、涙に滲んだ言葉が呼吸の浅さに絡み、肩が細かく震えた。

「ごめんなさい……許して……ごめんなさい……」

 繰り返される懺悔が、凍てつく夜の静けさに、痛々しく染みわたる。

 佐江が手を伸ばしかけたそのとき――
 鷹臣が静かに首を横に振った。

 母の衝動を制するその仕草には、兄としての慎重な配慮と、娘を守りたい気持ちの葛藤がにじんでいた。

 悠臣は何も言わず、唇を結んだまま膝の上で拳を握り締めている。
 その指先が、小さく震えていた。

 そして――
 部屋の隅、灯の陰に身を置いていた土方が、わずかに身じろぐ。

 彼は、ただそこにいた。
 声を発することも、慰めの手を伸ばすこともなく。
 崩れ落ちる美織の姿を、静かに見つめていた。

 “香月美織”という名を背負って生きるということが、どれほど重く、どれほど痛ましいことか。
 ――幼き日、美織にとって心の拠り所であった彼は、それを誰よりも理解していた。

 誰の責任でもない。
 だが、美織は自分を責めずにはいられなかった。

 香月の名に恥をかかせたのではないか。
 兄の道場に、泥を塗ったのではないか。
 家の名に、傷を残したのではないか――

 それらすべての思いが、美織の胸を締めつけていた。

 名家の令嬢としての誇り。
 その名が、同時に“檻”であり“重荷”であること。

 その檻のなかで、美織は今もなお、ひとり、自らを罰していた。

 土方は、一歩も動かなかった。
 ただその眼差しに、誰にも見せることのない、深い哀しみが滲んでいた。

 美織の涙が止むまで。
 いや、止まることがないとしても――
 その痛みのすべてを、傍らで見届ける覚悟が、彼の静かな瞳に宿っていた。

 美織のすすり泣きが、夜の静寂に淡く滲んでいく。
 嗚咽は細く、喉の奥で震え、もはや言葉にはならない。
 ただ「ごめんなさい」と「許して」を、壊れかけた風車のように繰り返すばかりだった。

 誰もが、そっと手を差し伸べることができずにいた。
 そんな中、ひとつの低く静かな声が、室内の空気をそっと切り裂いた。

「……少しの間だけ、お席を外していただけますか」

 それは、土方歳三の声だった。

 家族の誰もが、わずかに肩を動かす。
 佐江が戸惑いの色を浮かべ、鷹臣が土方に目を向ける。

「今のお嬢さんにとって、家の顔は……少し、重すぎます。名も、責も、彼女の痛みに追い打ちをかけてしまう」

 言葉は穏やかだったが、その声音には抗いがたい説得の力があった。

「……俺に、少しだけ時間をもらえませんか」

 佐江は悩ましげに美織の顔を見たが、やがて小さく頷いた。
 鷹臣も静かに目を伏せ、悠臣が最後にもう一度、美織を振り返ると、襖の方へと向かった。

 やがて、襖が音を立てずに閉まる。
 障子越しの灯が揺れ、家族の影がひとつ、またひとつと消えていった。

 部屋には、土方と美織――ふたりだけが残された。

 布団に伏したままの美織は、顔を枕にうずめ、浅い呼吸を繰り返している。
 その細い肩が、かすかに震えていた。

 土方は何も言わず、そっと膝を折って、美織のそばに腰を下ろす。
 ただそこにいるということだけを伝えるように、静かに座したまま彼女を見守った。

 しばらくして、濡れた睫毛の隙間から、美織がそっと顔を上げる。
 まだ涙に濁った瞳が、ぼんやりと土方の姿をとらえた。

「……どうして……あなたが……」

 かすれた声が、乾いた唇のあいだから零れ落ちる。
 熱に揺れる視界のなかで、美織はゆっくりと土方を見上げた。

 土方は、ほんのわずかに息を吐く。

「稽古納めで、こっちに用があってな。それを終えて戻る途中だった」

 淡々とした口調。だが、その声の奥には静かな重みがあった。

「道すがら、偶然お前を見かけた。……一人で、誰かを庇って立ってる背中がな。見覚えのある背中だった」

 美織の瞳が、かすかに見開かれる。

 あのとき。
 凍りつくような空気のなか、必死に踏みとどまった記憶が、ぼんやりと蘇る。

「目を覚ましたら、きっと自分を責めるだろうと思った」

 土方は視線を逸らさずに続ける。

「……だから、そばにいただけだ」

 短い言葉。
 飾りも、言い訳もない。

「俺は、お前を責めに来たんじゃねぇよ」

 その一言に、美織の肩が小さく震えた。

「お前は……何も悪くねぇ」

 布団の端を掴んでいた指が、わずかに強くなる。

「……でも、私は……」

 ようやく絞り出した声は、か細く頼りない。

 土方は、静かに首を振った。

「違ぇよ」

 たった一言。
 だが、その否定は揺るがない。

「“香月美織”って名前を背負って生きてきた重さを、俺は知ってる。
 お前が、どうやってそれを守ってきたかもな」

 美織の唇が震える。
 胸の奥に押し込めてきたものが、音もなく揺れ動く。

「名に誇りを持つのは立派なことだ。……だがな」

 土方の声音が、わずかに低くなる。

「名のために自分を壊すような真似だけは、しちゃいけねぇ」

 視線を逸らそうとする彼女を、彼のまなざしが静かに引き留める。

「顔に傷がついたって、騒ぎを起こしたって――誰がお前を否定するって言うんだ」

「……縁談が……兄上の名が……」

 消え入りそうな声。
 守るべきものの重さが、そのまま言葉になって滲む。

 土方は、ふっと鼻で息を吐いた。

「そんなもんのために、“お前”をいらねぇって言うような奴がいるなら――そんな縁談、こっちから願い下げだ」

 迷いはなかった。

 その断言に、美織の瞳が揺れる。

「お前が背負ってるもんは、全部お前ひとりの責任じゃねぇ」

 声は低く、しかし確かだった。

「……もう、独りで背負わなくていい」

 そこには、静かな怒りと、深い情が滲んでいる。

「俺が全部代わりに持ってやる、なんて大それたことは言えねぇ」

 一拍置き、視線がわずかに柔らぐ。

「けど――お前が壊れていく姿だけは、もう見たくねぇんだ」

 その言葉は、どこか祈りに似ていた。

 剣を取り、幾度も修羅場を越えてきた男が、不器用に差し出す、ひとつの想い。

 美織の瞳に、ふたたび涙が浮かぶ。

 だがそれは、先ほどのような懺悔や絶望の涙ではない。

 胸の奥に溜まっていた冷たいものが、ゆっくりと溶けていくような――
 そんな、あたたかな涙だった。

 布団の上からそっと手が伸び、震える指先が、土方の袴の裾に触れる。

「……あなたが……いてくれて、よかった」

 かすれた声が、まるで空気に溶け込むように、静かに届いた。

 土方は、何も言わなかった。
 ただその言葉を胸の奥に受け止め、静かに視線を伏せた。

 名も、立場も超えて。
 ひとりの娘と、それを見守る男との間に、静かな灯がともる夜だった。

 美織は――もう泣いていなかった。

 荒れていた呼吸は、いつしか穏やかに整い、震えていた肩も静かに落ち着きを取り戻していた。
 布団の上に置かれた細い指先からは、ゆるやかに力が抜け、涙の余韻だけがその身に残っている。
 室内には、しんしんとした静寂が戻り、吐息すらも音にならぬほどの静けさが広がっていた。

 土方は、変わらずその傍らに座し続けていた。
 余計な言葉を挟むことはない。
 彼はただ黙って――彼女が涙を流し尽くすまで、じっと寄り添っていた。
 感情のすべてが言葉になるわけではないことを、彼はよく知っていたのだ。

 やがて、美織がゆっくりと顔を上げた。
 濡れた睫毛の奥から覗く瞳が、静かにまっすぐに土方を見つめる。
 怯えや迷いの色はまだ薄く残っていたが、その奥に宿った光は、確かに――わずかにでも、前を向こうとしていた。

 そして――

「……抱っこ」

 ふいに、小さく、それでも確かな声音が空気に落ちた。

 土方は一瞬、わずかに目を見開いた。
 不意を突かれたように息を呑む。

 だがその一言の奥に、彼はすぐに“かつての少女”の姿を重ねた。

 泣き疲れた夜、何も言えず、ただ小さな手を差し出してきたあの頃。
 「抱っこ」――それは甘えではなく、助けを乞う術すら知らなかった幼い少女の、唯一の“たすけて”だった。
 無邪気でも我儘でもない。
 それは、美織にとって最も誠実な、心からの信頼のかたちだった。

 土方は、ふっと目を細め、ぽつりと呟いた。

「……ふざけんな、馬鹿が」

 その言葉には、呆れも、照れも、そして深い情も混ざっていた。
 けれど唇の端に浮かぶ笑みは、どこまでも優しい。

 まるで、その小さな「信頼」が再び戻ってきたことが――
 彼にとって何よりも、かけがえのないことだったように。

 彼はしばらく黙ったまま、美織の瞳をじっと見つめていた。
 その存在を確かめるように、ただ静かに、そこに在り続けていた。

 そして――
 ため息とも、安堵ともつかぬ息をひとつ吐いたあと、
 土方は音もなく身体を前に傾けた。

 言葉は要らなかった。
 何も告げず、何も問わず、ただ――

 彼の腕が、迷いなく、美織のもとへと伸ばされる。

 布団の中の身体を、そっと、しっかりと抱き上げる。
 それは最初から、そうしてやろうと決めていたかのように自然な動作だった。

 美織は、もう抵抗しなかった。
 謝りの言葉もなく、ただ静かに彼の胸元へ顔を寄せる。
 命の底から求めるように、その温もりをたしかめる。

 まだ熱と痛みを抱える身体の奥から――
 その存在のすべてが、静かに土方の胸へと伝わっていく。

 腕の中にいるのは、もう幼い少女ではない。
 けれど今、美織が求めたのはただ一つ。
 名も、立場も、何もいらない――
 「そばにいてくれる誰か」の温もりだった。

 土方はゆっくりと息を整えると、彼女の髪越しに、ぽつりと呟いた。

「……情けねぇな。こんなもん、軽く担げると思ってたのによ」

 それが美織のことを指していたのか、
 それとも自分の心の揺れを指していたのか。
 その真意を、誰も知ることはない。

 けれど、今はそれでいい。

 夜はさらに深まり、障子の外には冷えきった静けさが張り詰めていた。
 だが、ひとつの部屋だけは、そっと――
 確かな温もりに守られていた。


 土方は、美織をそっと抱き寄せたまま、背後の柱へ身を預けるようにして静かに凭れかかった。
 重心を移すたび、柱の冷たさが背筋を通してじわりと伝わってくる。
 けれど彼は、それすら気にかけることなく、ただ静かに座り直した。

 今の彼にとって、背に触れる冷気よりも――
 腕の中に宿る、かすかな温もりの方が、何よりも確かなものだった。

 美織の額は、彼の胸元にそっと寄せられている。
 痩せた肩がまだわずかに震えていたが、その身は、ひとしずくの水が器に溶けるように、ゆっくりと土方の懐へ預けられていた。
 まるで、どこにも行かせまいとするように。
 あるいは、もう逃げなくていいと、やっと知った者のように。

 ――とくん、とくん。

 土方の鼓動が、静かに、けれど確かに、美織の頬の奥へと響いていた。
 それはまるで、長い旅の果てにようやく辿り着いた、懐かしい安息の音のようで。
 美織は瞳を閉じ、その奥に宿る鼓動へ、深く耳を澄ませていった。

 胸の内に張り詰めていたものが、少しずつ、ほんのわずかずつ、解けてゆく。
 まるで、氷の裂け目からそっと零れ落ちる春のしずくのように。

(……まだ、大丈夫……)

 声にはならなかった。
 けれどその想いが、灯のように胸の奥にふっと芽吹いた。
 痛みはまだ消えていない。
 頬には、涙の名残が淡く残っている。

 それでも――
 彼がここにいてくれるということ。
 ただそれだけで、美織の心は確かに支えられていた。

 土方は、ふと美織の髪に視線を落とした。
 わずかに汗の混じる香りの奥に、かすかな幼さがまだ残っている。
 胸の奥に、忘れかけていた何かが静かに疼く。

「……重たくなったな、お前も」

 ぽつりと落とされたそれは、まるで、幼い日々にぽっかり戻ったかのような柔らかな声音だった。

 もちろん、美織からの返事はない。
 彼女にはもう、言葉を返す力すら残っていない。
 それでも土方は、何も求めることなく、ただその小さな温もりをそっと抱き留めていた。

 やがて、美織の呼吸が少しずつ変わっていく。
 浅く荒れていた息遣いが、ゆるやかな波のように穏やかになってゆく。
 土方の胸に顔を寄せたまま、小さな身体は静かに上下し――やがて、深い眠りへと沈んでいこうとしていた。

 その刹那。
 美織の唇が、わずかに動いた。

「……ありがとう……」

 それは、夢か現か。
 誰にも聞き取れぬほどの、かすかで儚い囁きだった。

 土方は、何も答えなかった。
 ただ、抱える腕にほんのわずか力を込めて――そっと彼女を守るように、その身を包み込んだ。

 障子の外では、風も月もない、静かな冬の夜が続いていた。
 けれどこの部屋の中だけには、確かなぬくもりが灯っていた。

 それは、“香月美織”や“土方歳三”という名の重みを越えたもの。
 立場や責任という鎖から離れ、ただひとつの命が、もうひとつの命に寄り添う――
 その瞬間だけの、小さな光だった。

 誰に語られることもない、癒しと祈りの夜。
 それは、誰よりも静かに、確かに、ふたりの胸に残る夜の記憶となっていった。

 ◆

 母屋の一室。
 障子の向こうから微かに聞こえてくる、炭のはぜる音が――静かな時の流れを、より深く染み込ませていた。

 香月忠臣は、長火鉢にくべられた炭をじっと見つめていた。
 炎は小さく、灰の中で赤く脈打つ灯が、時折ふっと揺れては、また静かに灯り続けている。
 まるで、消えかけてもなお確かに息づく命のように。

 佐江は、言葉もなく、ただ夫の隣にそっと座していた。
 鷹臣は背筋を伸ばしたまま、目を伏せて静かに気配を沈め、
 悠臣は少し離れた位置で、慎ましく膝を折っている。

 誰も美織の名を口にしなかった。
 けれど、その胸の奥では、先ほどまで響いていたすすり泣きの余韻が――いまだ深く残響していた。

 傷ついた娘に寄り添おうとしながら、結局はその痛みをどうすることもできなかった。
 無力感は、家族それぞれの沈黙の底に、重く沈んでいた。

 やがて、忠臣が静かに口を開く。

「……今夜は、これで本邸へ戻ろう」

 低く抑えられたその声音は、ひとつの“区切り”を静かに告げるようだった。
 立ち上がる素振りはなく、ただ言葉だけが、静けさの中に深く落ちていく。

 佐江が顔を上げるも、問いは口にせず、視線に揺れる想いだけが過る。
 鷹臣もまた無言のまま、父の言葉に静かに頷いた。

 忠臣の目が、傍らに控える次男――悠臣へと向けられる。
 伏せていた瞳が、ゆっくりと持ち上がり、
 膝上に置かれた拳が、かすかに震えていた。

「……美織のことだがな。すぐに本邸へ戻すのは――見送ろう」

 柔らかながらも、揺るぎない判断を示す口調だった。

「……しばし、この屋敷で休ませてやってくれ。
 ここならば、あの子の心も――少しは落ち着くだろう」

 それは、“香月の娘”という立場を離れた、一人の少女――「香月美織」という存在に向けられた、父の静かな配慮だった。

 悠臣は、目を伏せるようにひと呼吸置いてから、ゆっくりと頷いた。

「……承知いたしました、父上」

 その声音には、兄としての責任と、息子としての覚悟の両方が込められていた。

 忠臣はその返答に目を細め、次に佐江へ視線を移す。
 佐江もまた、夫の意を汲み取り、深く頷いた。

 誰一人として、異を唱える者はいなかった。
 皆が、静かに理解していた。

「……今宵は、あの子のための夜だ」

 そのひとことが、家族すべての想いを代弁していた。

 触れられぬ痛みがあるのなら――
 無理に拭おうとせず、癒えるのを待つこと。
 それもまた、家族にできる“見守り”というかたち。

 香月家の夜は、語られることなく、けれど深く祈るように――
 しんしんと、静かに更けていった。
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