AR Chronicle

黒鳥カラス

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第1章―放課後のログイン―

はじめての戦闘

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 咆哮とともに姿を現したのは、巨大な獣——ではなかった。

「……え? スライム?」
 美咲が呆然とつぶやく。

 草原をうねるように近づいてきたのは、半透明のゼリー状の生物だった。
 直径は人の腰ほど。ぷるぷると震えながら跳ね、近づくたびに地面がじゅるりと濡れていく。

「なんだよ、ただの雑魚かよ! ビビらせやがって!」
 陽斗が大剣を握りしめる。彼のステータスに合わせて現れた武器だろう。
 ブンと構える姿は様になっているが、内心は明らかに浮ついていた。

「油断しないで。これも“試験”かもしれない」
 蓮が低く警告を発する。その眼には「解析」という新しいスキルの文字が浮かんでいる。

——【対象:スライム】
——【HP:20 攻撃力:5 特殊能力:物理耐性(軽)】

(やっぱり……普通の攻撃は効きづらい。でもHPは低い)
 蓮は素早く情報を整理し、仲間へ告げた。

「陽斗、斬撃は通りにくい! 叩き潰す感じでやれ!」

「了解! 俺に任せろ!」
 陽斗は雄叫びを上げ、スライムへ突進した。
 大剣を大きく振り下ろし、ゼリー状の身体を地面に叩きつける。

「うおおおっ!」

 衝撃とともにスライムがびしゃりと広がり、HPバーが大きく削れた。

「……すご、本当に効いてる」
 美咲は安堵しつつも、すぐに警戒を強める。
 スライムは形を取り戻し、陽斗の足に飛びかかってきたのだ。

「ぐっ……! 重っ!」
 ぬるりと絡みつく感触に、陽斗は思わずバランスを崩す。
 その瞬間、美咲の胸が跳ねた。

「《ヒール》!」

 光がほとばしり、陽斗の身体を包む。
 ダメージは大きくなかったが、彼の動きが一瞬で軽くなり、再び剣を振れる力を取り戻した。

「助かった! 美咲、ナイス!」
「う、うん……!」

 蓮は冷静に仲間の動きを観察しつつ、もう一度《解析》を走らせる。
 ——スライムの弱点は「衝撃」と「炎」。

「陽斗、もう一撃でいける! 全力で叩き込め!」

「おう! 見せてやるぜ!」
 陽斗は大きく助走をとり、大剣を振り下ろした。
 ずしん、と草原が震え、スライムの身体が粉々に砕け散る。

——【敵を撃破しました】
——【経験値+10/銅貨+3】

 光の粒子となってスライムは消え、草原には静寂が戻った。

「……勝った、の?」
 美咲が恐る恐る問いかける。

「ああ。俺たちで……ちゃんと倒したんだ」
 蓮の声は穏やかだが、その目は確かに達成感に光っていた。

「へへっ、楽勝だったな!」
 陽斗は笑顔を浮かべたが、その額には汗がにじんでいる。
 未知の存在と本気で戦った恐怖は、隠しきれなかった。

 ——それでも。
 三人の胸の奥に小さな火が灯った。

 これはゲーム。だが、現実でもある。
 次に待つ敵は、きっともっと強大だ。

 だからこそ——。

「俺たちなら、いける」
 蓮の呟きに、陽斗と美咲は小さく頷いた。
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