AR Chronicle

黒鳥カラス

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第1章―放課後のログイン―

祠の瘴気

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 森の奥へ進むにつれ、空気は重く淀んでいった。
 木々の間を抜ける風はいつしか止み、鳥の鳴き声も聞こえない。まるで生き物そのものが、この場所を避けているかのようだった。

 やがて三人の前に、石造りの祠が姿を現す。
 古びた苔が張りつき、石段には割れ目が走っている。だが、それ以上に異様だったのは、祠の周囲に立ち込める黒い瘴気だった。

「……何これ」
 美咲が足を止め、杖を抱きしめる。
 肌を刺すような冷気が漂い、胸の奥に重苦しい不安が広がる。

 陽斗は剣を抜き放ち、警戒を強めた。
「気をつけろ。ただの雰囲気じゃない。体の奥を……直接掴まれてるみたいだ」

 その言葉に、蓮が険しい表情で祠を睨む。
「間違いねぇ。ここが“試練の核”だ。今までの雑魚どもは、ここに近づけさせないための足止めに過ぎなかった」

 近づけば近づくほど、瘴気は濃くなっていく。
 意識を奪おうとするような囁きが、耳元で木霊する。

——帰れ。
——お前たちは選ばれし者ではない。
——ここで、死ね。

 美咲の顔が青ざめていく。足が震え、石段にかけた足が止まる。
「……やっぱり、無理だよ。これ以上は——」

「美咲」
 陽斗は強く呼びかけ、彼女の肩を掴んだ。
「怖いのは俺だって同じだ。でも、ここまで来たんだ。引き返したら……きっと後悔する」

 彼の瞳に射抜かれた美咲は、しばらく沈黙したのち、小さく息を吐いた。
「……わかった。もう逃げない」

 蓮は槍を構え直し、口元に不敵な笑みを浮かべる。
「上等だ。俺たち三人なら、どんな瘴気だろうとぶち破れる」

 三人は並んで石段を登る。
 瘴気は濃くなり、頭痛と吐き気が押し寄せる。だが、互いに視線を交わし、言葉を交わしながら進むことで、足を止めることはなかった。

 祠の扉の前に立ったとき、空気が変わった。
 まるで大地そのものが息をしているかのように、低い振動が足元から響いてくる。

「……開けるぞ」
 陽斗は剣を構え、扉に手をかける。

 その瞬間、背後から再び囁きが響いた。
——仲間を信じるな。裏切られるぞ。

 美咲が肩を震わせ、蓮が眉をひそめる。
 だが陽斗は、声を振り払うように仲間の手を強く握った。

「信じてる。俺は、お前たちを」

 その一言で、二人の表情が一変する。
 蓮は力強く頷き、美咲は唇を噛みしめながら微笑んだ。

 三人の手が祠の扉にかかる。
 重く鈍い音を立てながら、扉がゆっくりと開いていく。

 ——中から吹き出した瘴気は、先ほどの比ではなかった。
 視界が歪み、空間そのものがねじ曲がる。
 そして暗闇の奥に、巨大な影が蠢くのが見えた。

「来る……!」
 陽斗が叫ぶ。

 祠の中から、異形の守護者が姿を現す。
 その咆哮は森全体を揺らし、三人の胸に重く突き刺さった。
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