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225.本物と偽物

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 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
 大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
 橋爪警部補・・・愛宕の相棒。普段は、丸髷署生活安全課刑事。
 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
 馬場(金森)和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
 高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。
 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。
 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
 高木(結城)たまき警部・・・警視庁捜査一課からのEITO出向。
 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
 江南(えなみ)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
 青山たかし・・・元丸髷署生活安全課警部補。EITOに就職。江南(えなみ)美由紀と結婚した。EITOガーディアンズ(EITOボーイズ)所属。
 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。
 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
 西部警部補・・・高速エリア署刑事。
 早乙女巡査部長・・・元EITO出向隊員。今は島之内署交番勤務。
 早乙女所縁(ゆかり)・・・早乙女の長女。高校3年生。
 早乙女弓弦(ゆずる)・・・早乙女の長男。中学3年生。
 早乙女柚葉(ゆずは)・・・早乙女の次女。小学5年生。ナチュラル・デプスの配下に轢き殺された。
 天童晃(ひかる)・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。EITO武術顧問。準隊員。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 午後1時。葬儀会館。
 あつこ達は、警戒していたが、賊は現れなかった。いや、それは思い過ごしだった。
 読経が終わり、焼香が終ってから、現れた。
「武装集団とは言え、読経や焼香の間くらいは、という忖度は出来るようだな。」
 エマージェンシーガールズ姿の日向が言った。「ああ。礼儀正しいだろ?ダークレインボーにも色々いるのさ。駐車場は狭いな。そこに公園があるだろ?そこに移動しよう。」
「親切だな。人の親切は無駄には出来ないな。移動しよう。」日向は、インカムで合図を送った。
 日向は、敵が50人だったことと、あつこ達警察制服組数人が着替える時間が必要なことを考え、先発として、既にエマージェンシーガールズ姿になっている者が対峙することにした。50人の敵は、何故か銃や機関銃ではなく、棒や槍、鎌などを持っていた。
 45分。あっけなく、敵は頽れた。その数分前、リーダーは日向と組み合っていたが、そっと囁いた。
「撮影されている。お前らを嵌める為らしい。俺はお前らが『枝』と言っている身分じゃない、『葉っぱ』だな。お前は隊長じゃない。でも、隊長の資質はある。だから、教えてやる。戦闘開始から1時間で俺は爆発する。俺の名前は『山下』だ。」
 エマージェンシーガールズのインカムは、常にオスプレイのパイロットを通じて本部に音声が流れている。『緊急1』の場合は、パイロットの判断でエマージェンシーガールズを救う。『緊急2』の場合は、パイロットやエマージェンシーガールズの判断なしに、司令官である斉藤理事官や夏目警視正の判断で問題解決に当たる。
 パイロットのロバートは、『緊急1』と判断し、オスプレイを公園の上空に移動させ、戦闘終了と共に、日向の側にロープを降ろした。日向は素早く、山下をロープに括り付け、オスプレイに合図を送った。
 オスプレイは、山下をぶら下げたまま、公園内の池まで移動した。公園には人がいない。すでに、あつこが警視庁を通じて立ち入り禁止にし、周辺道路を封鎖していたからである。
 オスプレイは池の上に来ると、ロープを切り離し、移動旋回した。
 5分後。池は水煙を上げた。
 30分後。あつこ達は、一時避難をしていた、早乙女と親族に戦闘終了を告げ、一同は帰り支度をした。
 何度も頭を下げる早乙女、そして、西部。
「早乙女さん、家のことは、西部さん達にお任せして、EITOに帰って。理事官だけじゃない。おねえさまの願いでもあるの。既に退職扱いにしてあるわ。あなたの意向を無視することになるけど、おねえさまは信じているの。警察官としての職務を全う出来る能力がEITOとの闘いに、きっと役に立つって。」
「愛ちゃん、お言葉に甘えよう。僕も、直接闘えないけど『片づけ隊』で役に立ってるんだよ。」
 早乙女所縁は尋ねた。「おねえさまって、誰ですか?」
「後で、お母さんに教えて貰って。」
 翌日。午前9時。シネコン記者会見場。
 スクリーンには、副総監、理事官の姿が映っている。
 客席には、ブースが設けられ、各記者が待機している。不遜な態度、危険な行動をすれば、巡回している女性警察官または男性警察官に指導される。全ては、記者会見を開く側に主導権がある。これは、リモート記者会見は高遠が提案したやり方で、総理の記者会見でも、久保田管理官の記者会見でも同じだ。暴漢を許さない為だ。
 副総監の説明が始まった。
「現職の女性警察官の家族が襲われる、という前代未聞の事件が起こりました。どうやら、新しい敵、『怪人二十一面相と名乗る人物』が見せしめとして生け贄に選んだようです。幼いの命を・・・痛ましいことです。お通夜の晩、告別式の昨日、家族をまた暴漢達が襲いました。EITOのエマージェンシーガールズの活躍で騒ぎは平定。幼い命を奪った犯人は捕まりました。」
「副総監に質問があります。東日新聞の飛沫露子です。」「減点5。不規則質問は、許しません。あなたの為の記者会見ではないからです。次から次へと身勝手な記者が現れては混乱させるので、仕方無く作ったルールです。次回以降、減点1以上の言動があった場合、その者は出入り禁止、出禁です。他の記者の方の迷惑を考えれば、どなたも自重される筈ですよ。」
 飛沫は口角泡を飛ばして、抗議したが、副総監には届かなかった。マイクをオフにされたからである。
「では、『本格的』な質問に移りたいと思います。」MC役は、元テレビアナウンサーで、皮肉を込めて進行した。
「登録番号1番の本日新聞さん。」「本日新聞の当麻です。早乙女さんは、警察を辞めないのですか?」「おや?通達が行っていないのかな?忙しすぎて、目を通す暇が無かったのでしょうか?早乙女元巡査部長は、娘さんが事故に遭った当日、辞職願いを出されて、受理されました。従って、元巡査部長は、私人です。今後の進退は、ご当人次第です。」
「登録番号2番の西毎新聞さん。」「お通夜と告別式が襲われたということですが、今後は襲われないのですか?」「ああ、警備ですか。ご当人が不安になるような状況なら、警察の生活安全課に相談されるでしょうね。私人ですから。」
「登録番号3番の欲目新聞さん。」「逃走する犯人に発砲する事件がありましたよね。確か週刊誌ネタになったと思いますが。」「週刊誌の記者さん達は、新聞社の記者さん達より、取材能力がありますからね。彼らは『よそのネタのコピペ』はしませんから。銭湯からの帰りの女性が誘拐され、たまたま目撃された早乙女『元』巡査部長が静止、誘拐犯が無視して発車した為に、威嚇射撃。何か問題でも?これは、他に目撃者がいましたけどね。」
「では、登録番号4番の一計新聞さん。」「あの、新しい敵が早乙女『元』巡査部長を狙ったのは、何故でしょうか?」「あの敵は『子供を轢き殺してあげた』と言いました。結果的に、あなた方が知っていた、元SPだった、元巡査部長だったというだけです。一計新聞さんは何か情報をお持ちのようだから、別室でお話を伺いましょう。係員の方、御案内下さい。」
 女性警察官の1人が、一計新聞の記者を連れ出した。
 他の社の者は分からないが、実は『連行』される仕組みになっている。
 これは、シネコン映画館側が、会場としてはレンタルするが、取り調べ用には勘弁して欲しい、と拒否されるからである。警察署に連行されるか、。ミニパトで話をするか?と問われれば、答は言うまでもない。一計新聞は、不祥事を起こした警察官はいないか?と尋ねてきた人物がいて、接触して、情報の見返りの代金を貰った、と話した。
 尋問した警察官は、実は橋爪警部補で、『会話はドラレコが拾っている。今直ちに罪には問わないが、公安の監視対象にはなる』と言って、開放した。この時連れてきた女性警察官は、みちるである。
 みちるは、会場に戻る前に、EITO本部の伝子に連絡を入れた。
 午前10時。EITO東京本部。司令室。
「やはり、リークした奴がいたか。あの飛沫とかいう記者、何も分かっていないんだな。」と、夏目警視正は言った。
 通信のマイクはオフにはなっても、ブース内のマイクは生きていて、録音される。従って、彼女の罵詈雑言は全て記録として残される。
「早乙女君は、どうしてる?」「訓練場で、自分で作ったメニューを早朝から淡々とこなしているそうです。」
 伝子が応えた、その時、天童が入って来た。「新人さんかと思って覗いてみたら、早乙女さんだった。丁度、田坂君が弓の扱いを授かっていたところだった。大文字さん。弓矢隊が必要な時、活躍して貰えるかも知れませんよ。」
「それは、助かりますね。結城さんの話では、若い連中とも仲良くやっていけるタイプなので、是非復帰して貰いたい人材だと。嬉しいです。」
「大文字さんの人柄ですね、夏目さん。」「おっしゃる通りです。頑張って貰いましょう。」「照れますね。ああ、西部警部補から、来週から娘さん息子さんは、登校出来るようです。鈴木先生のネットワークのお陰ですね。」
 鈴木先生とは、伝子が過去の事件で関わった、『嘱託校長』で、教育委員会は小中高共にコネがある。イジメの対象になる可能性があるので、『西部』という名字で申請書を出されたらしい。
 午後1時。伝子のマンション。
「そう、良かったわね。副総監の会見、見たわよ。カッコ良かったなあ。理事官の『私人の再就職先に興味があるなんて、変わってますね』もね。」
「そうだな。」
「さっき、久保田管理官から連絡があったよ、オクトパスこと山下の弟はいないらしい。ただ、兄貴として慕っていた人物だろう、と本名を教えてくれた。ぎぎょうだい、だね。」
「うん。戦闘中の撮影の話が出て来なかったが、もうリークがバレてしまっているから、自称山下を見殺しにしたのか?とか質問出来なくなったんだろう。リークした、あの社の記者が連れ出されたことで、無駄な質問になってしまった。何でもかんでも『疑惑は深まった』じゃ『これが真実だ』に置き換わらないよ。もう、読者や視聴者を騙せる時代じゃない。その為に電波オークションしたんだから。」
 伝子は、考え違いをしていた。戦闘中のデータは、記者会見には間に合わなかったのだろう。匿名アカウントでSNS投稿した者がいて、それを問題視した、マスコミがいた。
 久保田管理官は、別件で逮捕し、追求した。何故、その時の戦闘を撮影出来たのか?を切り出しに。頑固な被疑者だったが、新里警視が見事に完落ちさせた。
 やはり、金が絡んでいた。記者に接触したのは女だった。警視がどんな手を使ったかは想像に難くない。
 久保田管理官は、記者会見せず、テレビ1を使った。再現ドラマを見せ、ダイナマイトを括り付けられていた場合、しかも、時限装置を使っていた場合、どれだけ困難な作業になるかを、東京大学の教授と、現場の声(井関鑑識課長)を交えて。EITOが使った手段は非常手段であり、簡単な作業ではないことを、アメリカ空軍の元大佐にインタビューした録画もあった。
 直接対決でない以上、『目には目を』で行こうと、高遠が進言したのである。
 その夜、ひっそりと、早乙女復帰パーティーが開かれた。
 場所が「男子禁制」の為、馬場達は、スマホのテレビ電話の中継を観ていた。
 この様子は、EITOでも理事官達が観ていた。
 煎餅を囓りながら。
 ―完―
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