異次元の殺し屋・万華鏡

クライングフリーマン

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6.【こんな筈じゃ無かった】

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 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ここは、『倭の国』。
 俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。

 俺には聞こえる。殺してくれ、と。
 どこの次元でも聞こえている。

 公園のベンチに座っている若者。外国人かな?倭の国人かな?
「今日は、あまり暑くないようだね。」
 私が声をかけると、「関係無い。こんな世の中、季節も何も関係ない。あなたは、何故暢気なんですか?高齢者だから?」と若者は応えた。

 俺の姿は、見る人間によって変わる。どうやら高齢者に見えるらしいので、話を合わせた。
「先日まで、ペンギンと暮していてね。ご存じかと思うが、宇宙飛行士同様、普通の生活に戻るまで時間がかかる。」
「ああ、南極越冬隊の方でしたか。大変なお仕事しておられたんですね。だから、ご存じないんだ。」
「まあ。南極ボケ、かな。」
「倭の国は、もうすぐ滅びます。僕はハーフなんです。コルカ国と、倭の国人の。ここで産まれました。でも、もう終わりです。親類は、故郷に帰ってこい、と言ってくれています。僕の故郷は、母が生まれた、この国。僕が生まれた、この国。なのに・・・。」
 やはり、強い念波は、この若者から出ていたようだ。
「話してくれませんか。私は『老人ボケ』はまだしていないが、南極ボケでね。」
「はい。」
 若者は、深呼吸すると、話し始めた。
 事の発端は、相宰(さいしょう)が、同盟国である、アメリゴ国の女性大統領に対して、「日本は自立出来る」と言って喧嘩を売ったことだった。

 やはり、パラレルワールドは似た様な事象があるのだな、と俺は思った。

 そして、隣国の黴国の大使を通じて調印。倭の国は、今月末で無くなることになった。
 黴国は集省で成り立っていて、倭の国は倭の国省になる。
 今まで、貿易では、黴国に頼っていたことは確かだが、装具大臣の伊庭は、国を売り渡すことで『儲かる』と考えていた。
 それは、最終段階だった。それまでは、『外国人』あっての倭の国だから、と言っていたが、内情は、『特別外国人』の黴国人と『普通外国人』の外国人は格差があった。

 政府によって、『普通外国人』は、不要になった。便宜を図るのは、『特別外国人』だけでよくなったのだ。
 今まで『強制送還』が問題になっていたが、違う形で『強制送還』は不要になった。
 人々は、黴国人の『本質』を知っていたからだ。
 期限切れで返した大型動物は、そもそもが黴国の領地内に生息しておらず、植民地化した別途国にわんさかいる動物で『絶滅危惧動物』では無かった。
 事実を知る者は『泥鰌』を『鰻』と言って商売していると揶揄していた。
 そして、アイクル国は、強制労働をさせられていた。
 倭の国がアイクル国化するのは、目に見えていた。
 倭の国人は。辛抱強い。悪政で『徴収金』の肥大化に耐えてきたのだ。
 真っ先に国に逃げたのは、『コルカ国籍』と紛らわしい表現をされていた頃土人だ。
 頃土民族は、国がない民族の一つだった。
 コルカだけでなく、ウルガリアやウランなど、多くの国に住み着いた民族だった。

 若者は、コルカ国のジャーナリストで、頃土人の傍若無人ぶりを、父の故郷に訴えて来たが、もう必要が無くなった。

 若者と別れ、数時間後、本格的な侵攻が始まった。

 装具大臣の伊庭は、テレビの刻会中継を通じて、倭の国が終了した、と報告をした。
『調印書類』を持って。
 倭の国の皇帝夫妻は、ロープに繋がれて、引きずり出された。

 伊庭は、小さな声で呟いた。
「こんな筈じゃ無かった。」

 遅いよ!!

 俺は、怒りに震えながら、『調印書類』を消し、伊庭を消し、黴国を消した。

 あの若者に後を託して、俺は次の次元へ跳んだ。
 ―完―




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