大姪と私

クライングフリーマン

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12.圧縮袋

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 ==== この物語はあくまでもフィクションです =========
 私の名前は野本由起夫。姪の名前は如月来夢(らむ)。
 私は、脊柱管狭窄症が進み、車椅子生活になった。私と大姪との同居生活が始まったのだ。
 母が亡くなった後、私は徹底して『終活片づけ』をしていたので、大姪(妹の孫)は2階に居住した。
 私が母と同居していた時の名残の『ナースコール』を復活して、私は必要時に大姪を呼ぶことになった。

 午後から、大姪は「出勤」した。
 午前中、干しておいた冬布団。
『梅雨の中休み』なので、干しておいたのだ。
「え?自分で干したの?無理しちゃダメでしょうが。」
「ああ、ゴメン。だから待ってた。そういうのはね、干す時より取り込む時の方が力も要るし、無理な姿勢を取りがちなんだ。それ、取り込んで。で、掃除機で圧縮して、押し入れに仕舞い込んで欲しいんだ。」
「了解。」と言いながら、大姪は、私に軽くデコピンした。
 お仕置きか。やれやれ。
 冬布団を取り込むと、大姪は掃除機を持って来た。
 取り込んだ冬布団に掃除機で軽く吸い取る。
 以前、「布団叩きオバサン」事件というのがあったが、布団は叩かない方がいい、と聞いていたので、大姪に教える。
「なんで、みんな布団叩くの?」
「布団叩きって道具が出来たからだよ。」「え?」
「昔は、棒で畳を叩いていた。初夏にね。で、天日干しした。マンションやアパートで畳干して天日干しするのを見たことある?」
「ない。てか出来ないっしょ。熱中症が悪化したか、って言われちゃう。」
「熱中症か。まあ、いいや。昔は一軒家では、畳を長持ちさせる為に、そういうことしていた。地域によっては、畳の側でいぶしてた。詰まり、虫退治だな。今は、優秀なダニ退治用の薬がある。とにかく、布団は干したが、物干しに干しただけ。叩いたとしても、そんなに叩かない。綿が四散しちゃうから。で、いつの間にか、布団叩きが出来た。アパート・マンションの風物詩になった。この頃は、あれやると、ダニの死骸が広まるから掃除機で吸い取った方がいい、って言われるようになった。」
「へえ。ダニ退治も兼ねてって謳い文句で売ってるのもあるけど、元々圧縮前にダニが居ても死ぬ。真空状態になるから、あああ、苦しい苦しいよーって。」
「今度からダニおやじって呼ぼうか?」「勘弁して下さい。」
 私の指示通り、押し入れの襖を外すと、大姪に、前からある圧縮済みの寝具を圧縮し直すように言った。
 そして、元に戻すと、新しく圧縮した冬布団を収納させ、押し入れの襖を閉めさせた。
「本当は、圧縮を開放した後の方が大事なんだ。収納前と、取り出して使用する前と両方掃除機かけた方がいいんだけどね。」
「なんで?」「圧縮した時『殺した』ダニがいるかも知れないから。」
「オッチャン、色々知っててステキ。ご褒美。」
 大姪は、私に頬ずりした。「反応した?」「した。」「スケベ。」
 また、『嵌められた』。
 笑いながら、二階に駆け上がる大姪。
 私があの速度で上がれたのは何歳までだったかな?
 ―完―

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