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2人が話しているようです。
しおりを挟む「おい、こんなところに呼び出して何の用だよ」
「用がないと君と話してはいけないのかい?」
夕食後、宿にあるバーのカウンターで2人並んで話しているのはミラーとユーリだ。バーと言っても彼らの前には水しか置かれてない。そしてバーの従業員も今は別の場所へと追い払われ、彼らの背後にはマークのみが控えている。
「俺がお前と一緒に居たら、今まで1人でやってきた意味がなくなるだろ!」
「別にこの部屋で何か起きる訳ないから大丈夫だよ。ここには君と僕とマークしか居ない」
「そのマークがお前のこと裏切るかも知れないぞ?」
「僕は彼を信頼してるし、それでもし彼に裏切られるなら僕はその運命を受け入れるさ」
そうミラーが告げると苦い顔をするユーリと顔を赤くするマーク。普段はほとんど口を開くことなく控える彼だが、今回ばかりは心外だと言った様子で口を開く。
「俺がミラー様のことを裏切る訳ないじゃないか! 俺がどれだけミラー様に生きて欲しいと思っているかっ……適当なこと言うのもいい加減にしろ!」
「俺はもっと危機感を持てとこいつに言ってるだけだ。まぁこいつよりも俺の方が誰かさんに殺されるかも知れないけどな」
そう言ってチラリとマークを見るユーリ。まるでマークが彼を殺そうとしているかと言いたげな様子に、マークがプルプルと震えるが、ミラー様に静止されなんとか耐えている。
「僕と君は運命共同体だからね」
「あぁ、だからお前が生き残るには俺が遠く離れた見知らぬ所で死ねば良いんだろう。そうすればお前は死ななくて済む」
「その場合は魔王にこの国を奪われてしまうかも知れないけどね。だから俺は死ぬ運命を受け入れたんだ」
「だからお前のその何でも運命だって受け入れるのをそろそろ辞めたらどうだよ。そんな簡単に受け入れるなよ」
「最近はそうでもないさ。彼女のおかげでね」
「彼女って……あいつかよ」
そう言ったユーリが少し気まずそうな顔をする。恐らくあのミラーのことだ、2人の間に何が起こったか、今の気まずい関係も全てお見通し何だろう。
口では王子相手にも動じないユーリだが、やはり人生経験では負けてしまう。この王子を前にして上手くやり過ごせる術をまだ知らないのだ。
「……見たんだって?」
一瞬部屋の温度が数度下がった気がしたユーリだが、気のせいだと自分に言い聞かせてやや顔色を悪くするだけに留める。彼にしては動揺をすぐ表に出さなかっただけ上手くやった方だが、それで逃してくれるミラーではない。
「彼女の素肌を見たんだって?」
ニコっと世界中の女性が惚れそうな笑顔でそう問いかけてくるが、そう言ってユーリを見つめる瞳はドス黒い物が渦巻いている。
「なっ……見てねぇよ! あいつの裸なんて見てねぇ!」
「本当に? それなら何故君は彼女と距離を置いて、話もしようとしないんだ?」
「別にそんなのお前には関係ないだろっ!」
ドスッ!
「ウッ お前……なんだよっ。急に殴って来るなよ!」
お腹を抱えた彼は少し眉を顰めながらミラーのことを睨む。
「ごめん、君が正直に言わないことにイライラして思わず手が滑ってしまった。もう一度聞くけど、彼女との間に何があったのかな?」
そうやって聞くミラーに違和感を覚えるユーリ。
(こいつこんな感情任せに行動する奴だったっけ? もっと感情抜きに理性で動く奴だったはずだが)
そう疑問に思うが、恥ずかしさもあって素直に話すことが出来ない。彼はまだ17歳なのだ。普段大人達とやり合っているがそこら辺はまだ子供である。
「うっさいな。俺とユリとの間に何があろうと関係ないだろ」
「関係なくはないさ。彼女には一度プロポーズしてるんだ。今だって僕はそれについて諦めてない」
「プロポーズだって……?」
そうミラー様に言われポカンとした顔のユーリ。予想外の言葉に頭が真っ白になっているようだ。
「だから君と彼女の仲が進展されては困るけど、彼女が悩んでるのも見捨てることが出来ない。早く仲直りしてくれ」
「仲直りって言っても……」
いつもなら勢い良く言い返すはずだがその勢いも続かない。ミラーの発言に相当ショックを受けているようだ。
それにユーリだって別に喧嘩をしたい訳じゃない。本当だったらラッキースケベで終わるはずだったのに、ユリのあまりにも自分を意識して居ない態度や言動に苛立ちを感じているうちに、距離が出来てしまったのだ。
もちろん初めて見る女性の体に動揺して顔を合わせずらいというのもあるが、ユリと今後どう関わっていけば良いのか、どうしたら異性として意識してくれるのか分からなくて動けなくなって居た。
「ユリはプロポーズの話を聞いて何て答えたんだ」
「それは僕たちの秘密だね」
そう言って意味ありげに微笑むミラー。ますますユーリは焦る。
(俺は一切意識されてないのに、こいつにならあいつも異性としてちゃんとした対応をするのかよ)
「君がいつまでも意地を張っているのは構わないが、そうこうしている間に僕が彼女のことを攫っても文句は言わせないよ」
「……っ! お前は婚約者作らないんじゃなかったのかよ!」
ミラーが婚約者を作らないのは有名だ。男性を好んでいるだとか、実は性格がかなり悪いだとか様々な噂があるが、ユーリは彼が死ぬ運命だから婚約者を作っていないことを知っている数少ない中の1人だ。
「あぁ、その予定だったんだけど彼女に出会えて変わった。彼女が僕の運命を変えてくれると言ったからそれを信じてみようかなって思ってね。ほら、彼女なら本当に叶えてくれそうだろ?」
そう言って笑うミラーの姿に衝撃を受けるユーリ。ミラーがここまで明るく未来のことを話しているのを見たことが無かった。
国の為だと言い全てを受け入れて諦めたように笑う顔しか見てこなかった。そしてその顔をさせているのが自分のせいだと思うと苦しくなる。だからユーリはミラーのことが苦手だったのだ。
「とにかく君たちが仲直りをするまでは一緒に行動するから。彼女を取られたくなかったら早く仲直りした方が良いと思うよ」
「くそっ。別に一緒に行動する必要ないだろ」
「これは王子命令。君たちは暫く僕と一緒に居る。明日は視察に一緒に行ってもらうよ」
「視察なんかいかねぇよ! そんなの時間の無駄だ!」
そうユーリが息巻くが、ミラーは首を振る。
「いや、君はもう少しちゃんと、自分が守ろうとしているものを見たほうが良い。必ずついて来てもらうよ」
「……。分かったよ」
有無を言わさないミラーの様子に最後は折れて受け入れるユーリ。
「それにいつまでもそうやってウジウジしてると余計異性として見られないぞ。彼女にはもっと余裕を持って接しないと」
「っ! 余計なお世話だ!!」
そう怒鳴ると乱暴に扉を開けて去っていった。
「良いのですか? 彼とユリ殿の仲を取り持って」
「僕の1番は彼女に笑顔で居てもらうことだからね。でもそう簡単に渡しはしないさ」
「私はミラー様のことを応援していますので」
「あぁ、ありがとう。……あっ! ユリ殿の裸を見た感想を聞くの忘れた。胸はやはり大きかったのだろうか」
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「そうか? なら今後も聞かないことにしよう」
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