乙女ゲーの世界に落ちましたが、目の前には推しのご先祖様!?異世界チートで魔王を倒すはずが、いつの間にか恋に落ちていました。

高崎 恵

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また思い出したようです。

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リリー『ここがその洞窟なのね。入り口が崩壊しているけどあってるの?』

ユウ『ああ、初代様がここで魔物と戦った時に壊れたらしい』

ミレー『けどその時には中にある魔王の魔石には気づかなかったらしく、父親の世代でここの魔石に気づいたんだ。でもそれも研究だけで精一杯でその先には行けなかった』


 これは……ゲームの世界? 
 目の前に入り口がボロボロになり今より年月の経った海の洞窟が見えている。
 その中に入って行くヒロインとユウ、ミレー様達の勇者のパーティー。魔物を倒しながら洞窟の最深部の部屋に入る。するとそこには毒々しい赤黒い色をした大きな魔石が部屋の中央に浮いており、そこから同じく赤黒い魔力が漏れ出ていた。


リリー『これに願いを込めて浄化すれば魔王への魔力供給が止まり本体が弱まるのね』

ユウ『ああ。今まではこれをしなかったから魔王を封印することしか出来なかったんだ。この魔石を通して魔王に魔力を供給し続けているはずなんだ。この魔石を浄化しなければ魔王を倒すことは出来ない』

ミレー『ではリリー、浄化することは出来るかい?』

リリー『願いを込めてムーンの力を借りれば良いのよね。出来るか不安だけどやってみるわ』

ユウ『リリーなら出来るさ』

ミレー『あぁ、1回で出来なかったとしても今までみんなで協力して乗り越えて来ただろう? だから安心して』

リリー『ありがとうユウ! ミレー様! 私やってみる!』


 あぁ、やっぱりこれはゲームの記憶だ。
 この場面に見覚えがある。この後力を使いすぎて倒れてしまうヒロインのリリーをユウがお姫様抱っこで運び出し、3日間付き添いで看病をされるのだ。その時にユウヘの気持ちを自覚するリリー。彼を意識し始めて空回りしたり、彼との関わり方が分からなくなってしまいついミレー様と仲良くしてしまう様子にユウが嫉妬したりとこの後どんどん面白くなって行くというとても重要な場面なのだ。


リリー『ムーンの力よ、私に……』

 リリーが呪文を唱える。魔石を浄化して無効化する重要なシーンだ。ちゃんと聞いておかなければ。
 しかし私が必死に聞こうとしてるのに、何やら周りが騒がしい。そのせいかリリーの声もどんどん遠くなってしまい、続きが聞き取れない。

「ユリッ! しっかりしろ!!」

 これは誰の声? ユウ? でもユウは侯爵家の人間だからこんな乱暴な口の聞き方じゃなかったはず。丁寧だが少し砕けた口調が親しみやすい、そんな話し方なのだ。

「ユリ!! 起きろよユリ! 起きないならまたキスするぞ!」

 キス……ってこれはユウじゃなくてユーリだ!! その声と同時にゆさゆさと身体が揺れる。

「ユーリ、そんなに揺らしてはダメだ。安静にしておかないと」

「くそっ! 早く目覚めろよユリ。今度は救助の為じゃなくて本当にキスするからなっ」

 うん? 何か今不穏な言葉が聞こえた気がする。

「寝込みを襲うなんて許せないな。人工呼吸はその場に君しか居なかったから仕方ないが、目覚めのキスなら王子様からと相場が決まってるだろう? 僕が担当するよ」

「お前だって寝込み襲うつもりじゃねえか! 俺が居るからお前は必要ない。どっかいってろよ」

「ユリ殿が目覚めてないのに喧嘩してる暇ありますかっ! もっと真面目に考えて下さい」

 2人を諌めるマーク様の声に安心する。こちらも目覚めたいのだが、身体が怠くて目を開くことが出来ない。頭は機能しているが、まだ身体は眠っているような気がする。

「とにかくここはまた魔物が出るかもしれないから宿へと引き返そう。船まではユリ殿を僕が」
「いや、俺が運ぶから大丈夫だ。王子の手を煩わす訳にはいかないからな」

 フワッと持ち上げられた感覚の後に上下に揺れる。恐らく運んでくれてるのだろう。お礼を言わなくてはと、重たい瞼を必死に持ち上げる。

「ユーリ……」

 かすかに開いた瞳に映るのは彼の顎先。ユーリが私を抱き上げて運んでくれているみたいだ。私の声が聞こえたのか彼が下を向いて私に視線を合わせてくれる。その顔を見るとホッとしてまた私は目を閉じてしまう。

「……安心しろ、俺がついてる」

 生意気な言葉だ。何をもって安心しろと言うのか。しかしそんな彼の言葉に安堵してしまう自分がいる。彼のそんな一言に安心してしまうようになったのはいつからだろうか。そう思いながらも心地よい揺れで私は再び眠りに落ちていった。


 ◇


「ユリ! ユリ!」

「う……ん……。ユーリ? ミラー様?」

 私のベットの横にユーリとミラー様が居て顔を覗き込まれていた。あれ? 私はあのダンジョンに行った後どうしてたんだっけ。

「心配したよ。気分は悪く無いかい?」

「ええ、大丈夫です。少し喉が渇いていて水をもらっても良いですか?」

「ああ、マークよろしく頼む」

「承知しました」

 ミラー様が声をかけると、すぐにマーク様がどこからともなく水を持ってきてくれた。それを飲み干すと少しずつ意識がハッキリしてくる。

「まだ記憶が混乱してるんだけど……今はどういう状況? イカは倒せたの?」

 確かダンジョンから出てきた巨大イカと戦ってたはずだけどどうして宿に居るのだろうか。

「お前はイカに振り払われて海へ落ちたんだ。海から引き上げたが意識がない状態で危険だったんだぞ。救助してる時にこいつがでっかい船を寄越してくれたおかげで、船医にも見てもらって命には問題ないってことだからこの宿へ戻ってきた」

「本当に君が倒れているところを見て心臓が止まるかと思ったよ。今度からこんな危険な真似はよしてくれ」

「心配をかけてすみません。ユーリも色々ありがとう」

 段々と思い出してきた。私の油断が魔物にも伝わって攻撃されたんだった。本当に一つの隙が命取りになると今回思い知らされた。せっかくこの世界で再び生きることが出来ているのだから気をつけていこうと気を引き締める。

「それであのイカは倒せたの?」

「ああ。お前のサポートのおかげでなんとか倒せた。今後は暫くはあの魔物を調べるんだよな?」

「そうだよ。あんな巨大な魔物が何であそこに出現したかしっかりと調査する。それまではあのダンジョンもしばらくは封鎖しないといけないかな。あとはこちらで調べるから君達は今日ので調査完了として良いよ。しっかり報酬は払うからこのまま旅を続けてくれ」

「……ダメです! あのダンジョンにもう一度行かなくては!!」

「どうしたんだい? 君がそんな強い口調で話すのは珍しい。何かあったのかい?」

 ようやく今の状況が分かると次に浮かんできたのはあの夢の中のゲームの話。今ここであのダンジョンから離れてしまったらあのゲームのように、ユーリは魔王を倒せずに後の代に任せることになってしまうだろう。
 それを回避する為には今この時代であの魔王の魔石を浄化しなきゃ行けないはずだ。私は夢で不思議な光景を見たことにしてみんなにあの魔石の話をした。
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